異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

説明を受けたが、不手際は迷惑だと思う!

「先ず、今回の事について、どういった意図があったのか……それについてだ」


 全員がごくりと唾を飲む。それに対し、先生は真剣な表情でこう言った。


 「実はこの学園では制服の着用が義務化されている。だが、その制服の発注を私が忘れていた。それが上にバレない様にお前らを飛ばした」


 『……』


 ……。


 ……?


 ……!?


 一瞬、クラス中の思考がフリーズした。だが、いち早く回復したであろう和樹が質問した。


 「そ、それは……そうか」


 質問ではなかった。俺も回復して考えてみるが、どう質問すれば良いのか分からない。


 「え、えと、じゃあその紙袋の中身は……」


 アリスが質問した。流石だアリス!


 「ああ。それぞれの制服だ。名前を呼ぶから取りに来い」


 そう言って、点呼する。


 俺も呼ばれ、受け取る。

 紺色がベースだが、所々に銀色の線が走っている。


 そういえば、教室というかクラス棟に帰って来るまで、他のクラスが外で整列していたが、確かに全員同じ服を着ていた。


 「後で部屋に戻って着替えてこい。予備もそれぞれ数枚はある。サイズが違えば申告しろ以上が今回の事に対する説明だ」


 と、言って、空になった紙袋を教壇から降ろす。そして、次に……と前置きして話を続ける。


 「この学園の恒例行事についてだな。恒例行事と言っても常にあるのだから常時行事だな! 楽しいぞ……」


 「クラス戦争は文字通り『戦争』だ。学年内の五クラスで覇権を争うのだ。ルールは単純、争って相手の降伏なり白旗なりを勝ち取る事。それを繰り返すと、だんだん優劣が付く。そうやって他のクラスより上に行くとより優遇される……実力主義ってやつだ。まぁ説明はこんな所だが質問はあるか?」


 戦争……なんかめんどくさそうだな……。


 そういえば、教室というかクラス棟に帰って来るまで、他のクラスが外で整列していたが、確かに軍隊のようだった。

 ん? 軍隊……が、攻めてくる……?


 俺は悪寒を覚えながら先生に質問する。


 「それはいつから……?」


 その質問にほぼ意味はなかったのかもしれない。何故なら窓側の席に座っている俺には……。


 「言っただろう、常時だ」


 数十人の生徒がこちらに狙いを定め、第一射を放つその姿が見えていたのだから……。


 ドゴォォォン

 キィィィン


 放たれた魔法は棟から一メートル程の所で、結界に阻まれ、ハウリングの様な甲高い音が鳴り響く。


 「さぁお前らぁ! 私の不手際の侘びとして結界を張ったが持って数分だ、今のうちに着替えてこい!」


 そう言った後、ニヒルに笑ってから教室を出て行く。


 「ど、ど、どうすれば良いのだ!?」


 静かにパニック状態になっていたであろうキューテが慌てだす。


 「さて……行くか」


 「ど、どこに行くのだ!?」


 和樹が立ち上がり、教室を出ていこうとした所をキューテが訊ねる。


 「どこって……俺の部屋だが? それ以外無いだろ、戦争に参加するには制服の着用が必要みたいだし……というか常時着用しとかないとな……ふふっ。丁度良いだろう、馬車で凝り固まった体を解そう」


 と、これまたニヒルににやけながら廊下に出て階段を降りて行く。ハイデ姉妹もそれに続いて出て行く。


 「さて、僕も着替えてから医務室に包帯とかの確認に行こっと」


 「お、じゃあ手伝わせてもらうとするよ。護衛も少しは勤まるだろうしね」


 と、ロイルとドラヴィスも続く。


 「はぁ……しんどいですの……」


 「だ、大丈夫なのか? 良かったら肩を貸すのだ」


 レミルもキューテに肩を借りて愚痴りながら出て行く。


 「んじゃ俺も……」


 「あ、ま、待ってレト君!」


 と、アリスも続いてくる。


 「どうした?」


 「私はどうすればいいかわからなくって……」


 と、階段を降りながら俯く。

 確かにアリスの精霊魔法は個人戦ならともかく、大勢が相手だと、くまもアリスを守れないだろうし、動きにくいだろう……。

 精霊魔法……精霊魔法……アリスは、精霊に魔力を渡すタイプだから……何かあったかな?


 「うーん……ロイルの手伝いとか……?」


 「うん……そうだよね……」


 何故か少しがっかりした様子で溜め息をつく。


 「どうしたんだ? 戦いたいのなら止めはしないぞ? 出来れば屋内からが望ましいが……」


 「う、ううん違うんだけど……出来たら――きゃ!?」


 ドガァァン

 ビキキ……ビキキ……


 階段を降りた時点で結界の防御音に不安が出てきた。あと持って一、二分だろう。


 「……急ごう、アリス。結界はいつまでも持つ訳じゃない。じゃ、また後で」


 「わ、分かったよ! 頑張ってねレト君っ!」


 と、言ってアリスは自分の部屋に駆けて行く。

 俺は自分の部屋に入り、急いで着替える。

 サイズは合っていたが、少し違和感がある。


 違和感を確めるために制服に魔力を通して見ると、二重構造になっていることが分かった。中の生地には魔方陣が編まれており、魔力の循環を助ける役割がありそうだ。

 しかし、『魔力操作』を持っている俺にはあまり効果は無いだろう。何故ならその循環の補助を上回る勢いで操作できるのだから。


 着替えた俺は部屋の窓を開け、外を見る。しかし、結界に当たる魔法で視界は悪い。今出て行ってもそのまま標的にされかねない。


 「『レジスト』『エア・プロテクト』『パワー』」


 が、強化すれば特に問題は無いだろう。


 俺は窓辺に座り、無詠唱で『アース・ウォール』の準備をする。


 「『強欲の書』……半径二百メートル内にいる、人の位置」


 俺は強欲の書を開き、状況を見る。敵の人数は百と少し。交代で魔法を放ち、結界を削っている。後方には十人程の塊があり、消耗して交代した生徒はそこへ向かっているので、そこが補給地と考えるが妥当だろう。


 先ずはそこを潰す……いや、補給地ならポーションがあるだろう。それを先に奪おう潰そう。


 そう考えていると、三人……いや、一人と二人が俺部屋の前まで移動するのが見えた。俺は本を閉じて廊下に出る。

 そこにはノックしようとしていた和樹とハイデ姉妹がいた。


 「お、レトも準備万端か? 一応、役割を説明しておくと、迎撃組は俺らだ。俺は前衛で二人は後衛からの支援。医療班はロイル、ドラヴィス、アリス。キューテはポーション類の運搬、レミルは屋内からの迎撃だそうだ。レトはどうする?」


 と、聞いてくる。俺としては和樹と前線で戦うのも良いが、先ずは補給から断つのが得策だろう。


 「俺は右手から回り込んで戦力の確認と恐らく在るだろう補給地点を潰す。その後は後ろからの挟み撃ちをしたい」


 「分かった。だが程ほどにな? 逃げ場は作っておいた方がいい。補給さえ潰せば守りに専念できる筈だ」


 今回は防衛に徹するって事か。


 「了解した。和樹達が迎撃を始めたら移動を開始する。そっちも程ほどにな」


 「了解……行くぞ」


 「おっけー」


 「ひ、ひゃい!」


 と、外へ出て行く。

 それにしてもあれだな。和樹、めっちゃ楽しそうだったな。クラス対抗とか戦争とか燃えるんだろうな……。


 中学に入ってからは無かったが、小学校の時に体育の授業で玉当てゲームをしたとき、相手の玉切れまで待って一気に攻めるという戦略勝ちをして文字通り勝ち誇ってたからな……。

 そのお陰で相手の不興を買って以来やらなくなったからな……今回の戦争も和樹にとってはゲーム感覚で楽しめるイベントなんだろうな……ま、俺も楽しみではないと言えば嘘になるが……。


 思い出に耽っていると、パリィィと言う音が聞こえた。結界が遂に壊れたのだろう。


 さぁ……戦争開始だ。


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