異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

閑話 道に迷ったときは、地図をみれば分かる。

 「どこだ……ギルド……」


 始めはちらほら人とすれ違っていたが、小さなプライドと羞恥心が道を訊ねる事を拒んでいた。しかし一向にたどり着けない。俺は流石に諦め、次に人を見かけたら素直に道を聞こう。そう思っていたが、それから人っ子一人見当たらず、狭い路地から更に狭い路地へ。そんな感じに歩を進める訳だが、目の前に一つ、悪趣味な店を発見する。


 「武器屋……ドクロ? いや、が、ガイカか……趣味悪!」


 下手なお化け屋敷のような黒塗りの壁に、扉の上にある看板の画数の多い店の名前、その他薄暗い路地にあることから総合して呟いた本音だ。しかし、人っ子一人いない物静かな路地だ。少し呟くだけでもだいぶ響いた様で……。


 「悪かったな! 趣味最悪で! んじゃ、あんちゃんはこんな店、敬遠してとっとと立ち去るんだな!」


 中からドスの効いた怒鳴り声が聞こえる。とりあえず、ここで去る訳にはいかないので、謝罪しながら店に入る。


 店には所狭しと並ぶ武具が少々の圧迫感を生んでいるのだが、何より正面に腕を組んで仁王立ちしているスキンヘッドの身長二メートルはあろうかとも思える大男の威圧感が凄まじい……のだが。


 「エプロン似合わなっ!」


 「ボロクソ言ってくれるなこんちきしょう!」


 場を掻き乱す、とてもファンシーなくまのエプロンへの感想が店主への追い討ちとなった。


 「はぁ……朝もうちの店の前で怖ぇ兄さん方が女の子に乱暴してたしよぉ……今日はどんな日だよ一体……で、どうだい、あんちゃん。何か見てくか?」


 項垂れながら問い掛けてくる店主。それに対し、俺は「ああ」とだけ答え、槍類が置かれている棚に目を移す。


 「しっかし、珍しいもんだなぁ……今月であんちゃんみたいのが三人も来るたぁ……ん? いやなぁ、自慢じゃ無ぇが俺の店は名の通った店なんだよ。ま、そうは言っても鍛治の腕一つでのしあがっただけで、たまにコアな客が来るくれぇだ。そんなとこに最近三人もだからなぁ。一人目は眠かったんで顔はよく覚えて無いが、俺が茶を飲みに目を離したら帰ってたし、二人目はなんか上から目線な奴だったな。蒼い髪の奴でな統計的にとか比較して……とか、誉められてるのかよく分からんかったな……買った買わなかったはさておき、こんな店をどうして見つけられんのか……てなわけで、どうしてだい?」


 「……道に迷ったから」


 あまり自慢することではないので、俺がボソッと呟くと、店主は途端に耳にガンガン響く声で笑う。


 「がっはっはっはっは……迷った? そんな仏頂面のあんちゃんが迷った? ぶっふ!」


 「熊エプロンに言われたかねぇよ! ……はぁぁあ」


 延々と笑い続きそうなので、大袈裟に溜め息をついてみる。すると、少しは笑いが収まったようで、問い掛けて来る。まだ顔は笑っているが。


 「やめろい、こんな狭いとこで溜め息ついたら俺にも方向音痴が移るだろーが……で、どこに行きたいんだ?」


 「ギルド」


 「ぶっふはははははは」


 また笑い出してしまう。笑いすぎて顔の筋肉が痛そうだが、近くの台に寄りかかり、ベシベシ叩きながら笑い続ける。
 そんな店主を見る俺もひきつりすぎて顔の筋肉が痛いのだが、ピクピク痙攣するのだが、抑えられない。




























 「ここがギルドか……」


 店主から貰った地図を頼りに目的地へとたどり着く。方向音痴、方向音痴と周りからは言われるが、地図があれば迷う筈が無い。


 学校のイベントである野外活動のレクリエーションで地図に書かれたポイントを巡り、制限時間内で一番多くのポイントを稼いだ班が優勝! 的な事を行ったのは記憶に新しいが、班というか大半の女子が地図を読めないという衝撃的な事実に驚き、俺が驚いたことに驚き返される謎の連鎖が起こっていたりする。


 ちなみに、俺の班は最下位だった。班のリーダーと地図係を分けてはいけない。特に女子がリーダーを務めると俺が考えた最も効率がいいコースを少し走れば全ポイント制覇出来た筈なのに、俺の言うことが正しいか分からない、等といい放って、ほとんど動かない。あれほど、班のメンバー全員がいないとポイントを与えないと言った先生と最下位でも平然としている女子にイラついた事は無い。


 そんな話は置いて。俺はギルドに入る。中は昼間だというのに酒場らしき場所から聞こえてくる喧騒に包まれていた。俺は受付を見つけ、時々通路に飛び出してくる酔っ払いを避けつつ、受付嬢らしき人に封筒を渡す。
 受付嬢はその場で俺に確認を取って、開封し、紹介状を改める。


 「ああ、紹介状ですね。一応ギルマスに見せる事も出来ますが……どうしますか?」


 「……じゃ、お願いします」


 「では、少しお待ちください……」


 と、言って受付嬢はカウンターから出て、木で出来た階段を上って行った。

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