異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

サバイバル学習、帰還編!

 結局、五日目……一昨日と、六日目……昨日は何事もなく、七日目つまり今日が訪れた。


「く、くわぁぁぁあ」


 朝食を済ませ、自由行動なのだが、特にやる気も起こらず、やるべき事も無く、小屋の裏で大きめ? ……なカマキリと両手を広げ、お互いに威嚇? しているアリスを微笑ましく見ている現在。


 ロイルから剣術を教えてもらうという事で、昨日は一日中ずっと型を叩き込まれたのだが、しかしどうやら案の定、俺には向いていない様で、特に成果らしきものも得られず、今日の朝起きてみれば筋肉痛で節々が痛いし……。まぁまたの機会に、と、今日はロイルからの誘いを断り、木に寄りかかってボーッとしているのだが……うん、やっぱりあのカマキリ、魔物だ。
 俺はカマキリから魔力を感じとれた事からそう判断する。


 だっておかしいじゃないか。不思議じゃないか。
 いくらここが見渡す限り森でも一メートルもあるカマキリなんていないだろ、ちょっと無理があるだろ。


 威嚇? してるだけだから別に良いけど……ぬいぐるみくまも葉っぱでハンモック作ってその上に乗ってリラックスしてるし……。
 護衛くまよ、それでいいのか!


 俺はしゃがみこんで地面に手を当てる。
 カサッパリッとした枯れ葉の感触ではあるが、日陰だったからか少し濡れていて水滴もろともじめっとした土が手に付く。


 「? ……ふぁっ!?」


 その音でこちらに振り返ったアリスは俺の存在に気付く。結構前から居たが、話しかけなかったので気づいていなかったらしい。


 「レ、レレレト君! い、何時からそこに!?」


 背後の緑のカマキリとは対照的にアリスの頬は赤っぽく染まる。……対照的に、ということでアリスとは逆に背後のカマキリは青ざめているのだが、俺に気付いていなかっただけなのか? それとも地面を通して自分に迫って来る俺の魔力を感知したのか?


 どちらにせよ、カマキリは現在進行形で油断したアリスにその巨大な鎌を振りかざそうとしている。


 これは本末転倒というのだろう。俺は地面に触れている手からアリスに迫る鎌の軌道上に『アース・ニードル』を発動させる。ウォールで壁を造りだしても良かったが別に事足りるだろう。
 鎌は振り上げられ、そのまま振り下ろされる。が、既に地から突き出てきた一本の針――見た目はほぼポールのようなもので長さは二メートル程――に阻まれ、それ以上進むことはない。むしろ、鎌が食い込んでいる所為で動けずにいるのだろう。
 もう片方の鎌も同様に……今度は土の針をめがけて振りかぶった様にも見えたが、当然捕獲。


 俺は再びアリスに目を戻す。すると何故か涙目になってこちらを見ていた。


 ……ああ、そうか。そうだもんな……暇って散々言っていたし、ようやく見つけた暇潰しを俺が邪魔した形になった訳か……。
 俺は別に意図してやっていた訳ではないが、アリスに謝る。


 「すまんなアリス。威嚇して良いぞ」


 「え……? 威嚇……していいの?」


 「ああ、いいぞ」


 俺はそう言いつつカマキリの鎌を拘束する土の針を解除して自由にする。このままだったら確かに危険かもしれないが、最初の威嚇しあっていた状況では特に攻撃的では無かったし、何より人の暇潰しを奪うつもりはない。


 すると、アリスは何故か両手を広げ、先程と同様に口を開こうとする。


 「違う、アリス。そうじゃない」


 「……?」


 俺は無言でアリスの後ろを指差す。理解したようで、アリスも後ろを向くが、俺と同時に「え……」と呟いた。


 当のカマキリが回れ右して全力疾走で遠ざかっていくのが見えたからである。


 俺は、アリスにハンモックを貸し、くまの隣辺りに設置した後、静かに立ち去ることにした。








 昼前、俺はふと思い出す。
 ちょうど一週間……だよな? 今日が。


 つまりは一週間を乗りきった訳だ。


 丁度アリスが目を擦りながらやって来る。俺は大樹の方で黙々と素振りしているロイルへ声をかけて集合する。


 「よし、とりあえず今日で一週間が経った。だからもう帰っても怒られない筈だ。だから昼過ぎには出発しようかと思う」


 「もう一週間か……早いね。でも、帰るって歩いて? 僕は大体の方角は覚えてるけどそもそもここがどこかも分からないし……」


 と、ロイルが俯く。アリスも「歩くのはやだなぁ」と、言う。
 だが、いくら俺でも魔力やMPがニュークスを倒した事によって大幅に上昇しているとはいえ、三人分の『フライ』は使えないし、『バースト』を使った高速移動でも二人には使えない。


 「そこで、だ。これを使ってみたいと思う」


 「これは……」


 「縄?」


 俺が取り出したのは一本の縄。二人は忘れているようだが、ここに来た方法を思いだした俺は、昨日にこの縄を拾い、調べて見たところ、微かに魔法の反応……魔力の残留を確認した。解析した結果、行きは座標がランダムに設定されているようだったが、帰りの座標はちゃんと設定してあったのだ。


 そのお陰で徹夜せずに済んだ訳だ。魔術具の改竄と改良は苦手なのだ。


 「来るときと同じようにこれで帰る」


 「なるほど!」


 ロイルが思い出した様で声をあげる。アリスも少しホッとした様子だ。




 その後は昼食を食べて小屋を爆破して、すぐに時間が経ち、もう昼過ぎだ。


 現在は背中合わせで二人と縄で腰の辺りを縛り、大樹の上にいる。何故かと言うと、どうしてか『落下』が発動のトリガーになっていたからだ。


 教室の窓から放り出されたのも納得だが、そもそも何でそんなものを作ったかそれが疑問だが、まあ今じゃなくても良いか……。


 それにしても少しくらくらするな。後は飛び降りるだけだから心配は無いが……っと、そうだった!


 「落ちるとき、というか飛んでいるときは寝てた方がいいと思う」


 「い、いやこんな状況で寝れるほど僕の肝は太くないよ!?」


 「うん! うん!」


 背中からコクコクと頭を振る振動が伝わって来る。


 「俺だって十中八九寝れる訳じゃないし、この前調合した薬に睡眠薬がある。直接ビンを出すから口、開けとけよ」


 と言ってからアイテムボックスから小瓶を三本、それぞれの口元にだす。


 この睡眠薬は回復薬の様に葉っぱをすりつぶして作るのではなく、花の蜜から作ってあるので、苦くない。むしろ少し甘い位だ。難点としては少し粘性がある事ぐらいか。それも蜂蜜の様と捉えれば良いところかもしれない。


 後は効いてくるのを待つのみ……っ!?


 クラリとする。だが、これは眠気ではない……そう、目がチカチカして手足の感覚が無くなって……そう、貧血のようなこの感覚は――。


 平衡感覚が機能しなくなり、樹の上から落ちる。もう既に耳はキーンという耳鳴りでほぼ聴こえていないのだが、微かにまだ睡眠薬の効果が出ていないアリスとロイルの叫び声が聞こえた気がした……。

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