異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

サバイバル学習、拠点編!

 「この辺りで良いか……」


 俺は大樹の周りの開けた土地の中でも一番広めな場所を選んで頷く。


 「良いって……なにかするの?」


 「あ、ああ。拠点を作ろうと思ってな」


 少しの間、拠点を設置する場所と俺の脳内レパートリーを探っていたが、その間アリスはずっと静かにしていたので、俺以外にも人が居る事を忘れていた。でも、うん。静かっていいよな。落ち着く。あのうるさい奴キューテがいないだけでこんなに違うのか……。


 「拠点? どうやって作るの?」


 と、アリスはこてっと首を傾げて言う。


 「うーん。藁か木かレンガの家、どれがいい?」


 「藁? 藁なんてこの辺りには生えてないよ?」


 「ごめん。冗談です……ま、ここは無難に木だな」


 俺の渾身のジョークは異世界という壁を乗り越えられなかったらしい。
 無詠唱のエア・カッターで近くの木を五、六本切り倒す。細長い針葉樹でなくて助かったというべきだろう。


 そして、食材をまな板の上で切る様に板にして、並べる。


 「アリスさん?」


 俺が眠っている間の事を聞こうと振り返ると、まじまじと俺が切った板を見つめていたが、ハッとして俺に向き直る。


 「な、なに?」


 「俺が寝てた時に動物とか見かけた?」


 「ううん、見てない」


 と、頭をプルプル振る。


 「そうか……ま、念のために上げとくか」


 俺はアース・ウォールで地面から五十センチほどの土台を作り、一辺だけ二段程の階段を作る。広さは一応、教室より少し狭い程はある。
 そこに木の板を並べ、周りも囲って床と壁を作る。接着剤として使うのは俺の魔力だ。魔力を巡らすことでコーティングの役割にもなるし、強度も上がる。万能魔力万歳!


 「んー、壁ちょっと切るか。高い気がする」


 俺は斜めに壁を切って、その上に板を置いて屋根にする。これで雨が降っても大丈夫だろう。


 「完成! 簡単プレハブ小屋」


 「凄い! レト君、魔法使いさんみたい!」


 「うん。一応だけど魔法使いですよ?」


 俺が少し悲しむようにガックリと頭を下げると、慌ててフォローしてくる。


 「ち、違うんだよ! 絵本とかで読むような格好いい魔法使いさんの事で、レト君が使う魔法って凄いなって思って言った事で――」


 「ふふ……あはははは……ごめんごめん。意地悪だった」


 本当だよぉと、一瞬怒った顔になるが、すぐに笑顔になり、一緒に笑う。すると、すぐ後ろで驚嘆の声が聞こえる。


 「な、なんか小屋が立ってる!? こ、これ、レト君が作ったの?」


 「ロイルか、お帰り……まぁ……一応な」


 大樹の裏の方から出て来た様で、くまのぬいぐるみを頭に乗せたまま駆け寄ってくる。


 「凄い! 流石だね……あ、周りを見てきたけど、近くに村とか街は無かったよ」


  ロイルによると少なくてもこの大樹が見える範囲には村や街はなく、木々が広がるだけらしい。アリスは見なかったらしいが、動物や小型の魔物は見かけたらしい。


 俺は改めて先生に渡された紙を二人に見せる。


 「俺たちのチームに課せられた内容はサバイバルだ。だが、もう拠点も作ったし、食料もあった。問題はないと思う」


 「え? 拠点は分かるけど、食料ってどうするの? 動物のお肉はあるけど、僕は回復位しか魔法が使えなくて狩れないし……アリスちゃんは何かある?」


 と、ロイルがアリスに聞くが、アリスも精霊魔法しか使えないからと、首を横に振る。回復も精霊魔法も使えない俺には


 「大丈夫だ。俺は多分狩れるし、見たところ食べれそうな植物も数種類ある。最悪野菜ばっかりになるけど、七日間位どうってことない」


 二度目の人生、家の周りに張ってある結界の中には草原と森しかなかったのだ。植物知識は母さんの影響もあって豊富だ。


 「……」
 「……」


 何故か二人がこちらをじっと見つめてくる。


 「な、なんでしょう?」


 「……なんか試験でカンニングしてるみたい……凄すぎて」


 と、アリスが言い、ロイルは代弁されているが如く頭を縦に振って同意している。


 確かにカンニングペーパーならぬカンニングブック強欲の書は持ってるけど、見てないからね!? ちゃんとした自前の知識だから。


 「一応だけど俺はエ――」


 エルフのクウォーターだぞ? と言いかけて止める。この国、セルカトブルドでは誰が異種族を嫌っているかも判らないのだ。不用意に口にすることではない。


 「いや……別にテストじゃなくサバイバルだからさ、カンニングでも生き残ればいいんじゃないのか?」


 「うーん……僕、サバイバルって聞いたときに最悪の時は虫も食べる位の覚悟はしたんだけどな」


 思い詰めて損したよと溜め息をつきながらしみじみとロイルが言う。


 「さ、もう日が傾いてきたし中で話そう……と言っても、家具の一つも無いけどな」


 と、即席のドアを開けて中に入る。


 「『ライト・ボール』」


 俺の手元から魔法の明かりが飛んで、屋根に貼り付くように止まる。


 「ケホッケホッ……ちょっと埃っぽいかも」


 アリスが小さく咳き込む。


 「埃とか木屑とかだな。寝床にするにもとりあえず掃除するか」


 






 それから十分ほど、主にアリスのぬいぐるみに掃除をしてもらい……ぬいぐるみが掃除と言うのも可笑しな話だが……。


 夜は俺の寝袋をアリスに貸して、俺とロイルはそのまま寝た。






 俺が大きな――木が次々に折れるような音で目覚めたのは明け方だった。

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