異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

閑話 騎士なのに、魔法学校に行かされることになった。

 時は少し遡り、五日前。レトが城内にやって来てもがいていた応接室の窓から見える転移クラスの訓練……ロダオールの周りには先日発表されたランキングの上位五名の姿があった――。




 「ああ。その通り。理由は各自で考えて欲しい」


 ロダオールさんは和樹の質問、即ち「俺達は王城には居られないのか?」という問いに、そうだと返す。


 「安心して欲しい。決して君達を手放し、野垂れ死にさせるつもりはない。君達には学校に入って貰うつもりだ」


 「他の……俺達ランキング勢以外の皆は?」


 壮児が問う。


 「他の訓練生についてはそのままここでの訓練を続けて貰う予定だ」


 他に質問はないか? と続ける。


 「どんな学校何ですか?」


 と、龍正が手を挙げる。


 「二種類ある。簡単に言うと剣か魔法の学校だ。行って貰う方は決めてある」


 と、ポケットから折り畳まれた紙切れを取りだし、広げて読み始める。


 「彰一君には得意の特攻を更に活かすため、剣術学園の暗殺者アサシンクラスへ。壮児君には参謀としての見込みがあるため、剣術学園の指揮者マエストロクラスへ。凜さんは回復魔法を更に自分の物にするために魔法学園へ。和樹君は魔力を使った戦い方を覚えるため魔法学園へ。龍正君は更に訓練を積んで欲しいため戦士ウォリアークラスへ。これは各班の指導者の総意だけど、異論があるなら聞くよ?」


 俺が質問しようか考えていると、隣の凜から声が上がる。


 「あの……魔法学園にはそのクラスって無いんですか?」


 「ああ! そうだったね。説明が先だったね。魔法学園は完全な実力主義。クラスは学年ごとにDクラスからSクラスまで、三学年あるから計十五クラス。剣術学園は学年混合でクラス――役割ごとに纏められて……何クラス有ったかは覚えてないけど沢山有るのは確かだ。もっと詳しい事は向こうの入学式で聞くだろうから……あとは入学試験だね。剣術学園は無いけど魔法学園の試験は勝ち抜き戦の試合形式でね。凜さんは回復専門だから試合には出ないけど、試合で負傷した人を回復して判断して貰う。その結果次第でクラスが決まるんだよ」


 成る程。めんどくさそうだな。


 「で、何時からですか?」


 「今から」


 ――え――。


 全員の口から漏れ出たのは驚愕だった。


 今からって……ええっ!? 


 心の準備が……なんて言い訳も通じるはずなく、俺達は城内の魔方陣から別々の学園に向かった――。










 そして、魔法学園の試験にろくに魔法も使えない俺は挑んだ。


 幸いにも訓練で使っていた鎧とハルバードは譲って貰ったので十分ではないが戦うことができる。


 『76番……どうぞ』


  俺の番号が呼ばれる。俺は控え室を出て仮説闘技場へ向かう。


 仮説闘技場というのは広い……広大といっても過言ではない運動場に五十メートル四方の結界が張られているだけの飾り気のないお粗末な物だ。しかし、この結界は強力なものらしく、十分なんだそうだ。


 三百人ほどのトーナメントなので、七人と戦えば良いのだろうか? 


 ロダオールさんから少しは魔法に対抗出来るくらいには鍛えて貰ったのだが、魔法とは恐ろしい物と聞いている。
 俺は闘技場の結界の中で、俺より少し背が低い少年と対峙する。ロダオールさんが初めて参加した大規模な国家戦争ではあの位の少年が大魔法……一回の発動で一つの小隊が全滅する威力の魔法を連発していたらしい。


 『始め!』


 どこからか大きなアナウンスが聞こえる。


 全ての戦闘において戦い方は二つ。此方から先制するか、防御を固めて自滅を待つか。
 圧倒的な防御力を誇る魔力稼働式の防具が在れば守りに入るのも良かったのかもしれないが今は出来ない。つまり、俺がとるべき行動は突撃だ。


 『うぉおおおおお!!』


 威圧言語を用いた『雄叫び』。相手は何らかの魔法を使おうと詠唱していたようだが、怖じけて中断する。しかし、突撃してくる俺を見て我にかえったようで再び詠唱を始める。そして俺のハルバードの間合いに入る前に終わったようで、詠唱してくる。


 『ファイアー・ボール』


 火属性の基本であるファイアー・ボールだ。三十センチ程の火球がこちらに打ち出される。
 相手はこれでどうだと言わんばかりに様子を見てくる。雄叫びから我にかえって即座に次を出したのは良い判断だったのだろう。訓練中も他の班と試合をしたことがあったが、現在と同じような展開になった。


 しかし、一つだけ違うとするならば……魔法の威力が弱かった。


 俺は真正面から受け、そのまま突っ切る。熱いし、痛いが、死ぬ程ではない。


 慌てて次の魔法を詠唱するが、遅かった。俺が振るったハルバードの柄に当たり、気絶する。


 『止め!』


 アナウンスが入り、結界の上に居たのか上から救護班らしき人達が落ちてくる。着地寸前にフワッとなって着地し、そのまま相手の手当てを始める。


 「君もこちらへ。ではどうぞ」


 計四名。二人は試験官、二人は受験者だろうか? 俺はおどおどした少女に火傷を治して貰ったが、正直怖かった。自分の体で実験……もとい、試験をされていると考えると身震いする。


 二戦目。相手は水魔法、『ウォーター・カッター』を使ってきたが上手く鎧の表面を滑らせ、同じく柄で殴って勝利。無傷の俺を治癒担当だったはずの少年が睨んできたが、試験官に見つかり、殴られていた。


 三戦目。驚いたのは相手が先行して来た事だ。相手の手には土魔法で造られたと見られるナイフ。が、ハルバードの間合いの方が長い為、そのまま無傷で勝利。治癒担当だった少女からは(以下略)


 四戦目。ここからは運だけではなく、実力がどんどん強い相手が増えて行くとのロダオールさんからの伝言だったが、その通りだった。相手は土魔法で造られた槍を持ち、突撃してくる。俺は突き出された初撃を回避し、脇腹を打とうとした。が、見えない壁のような物に当たり、弾かれる。目を凝らして見ると透明な鎧のような壁があり、それに弾かれていた。


 俺はハルバードを持ち直し、突きを何度か繰り返す。透明な鎧には弾かれるが、やがて少しずつ矛先が鎧に沈み、弾きの勢いも無くなって、数分も経つと遂には鎧と槍は消え、俺の突きが腹を掠めた時点で降参した。治療班には鎧の隙間に撃ち込まれた時の傷を治して貰ったので、睨まれてはいない。


 五戦目。相手は四戦目と同じような透明な鎧で身を包む。しかし、近接戦はお粗末な物で、俺は消耗を待った。
 すると、相手が突然、『アース・ニードル』と、魔法を発動させた。俺としたことがうっかり忘れていた。魔法の発動には三パターンあった筈だ。一つは通常の詠唱。二つ目は詠唱を省略してその分を時間かMPで補う詠唱省略。三つ目は詠唱そのものを省略の倍のMP消費で無くす無詠唱。今回は時間で補う詠唱省略だった。
 俺はすかさず後ろに跳んだが、それが狙いだったようで、俺の左腕の下から土の棘が突き出てくる。慌てて腕を引くが、棘は鎧を貫通し、腕に刺さった。


 「ぐぁぁぁあぁああ!!」


 俺は叫ぶ。それを見て相手はニヤリと嗤い、造ったのか手に持った剣で俺を刺そうとする。こいつ。性格悪いな……。けど……俺よりはマシか……。




 俺は体をひねり、剣を臓器に当てないように掠めさせ、相手の耳元でこう言った。


 『


 と。
 威圧言語を使い、出来るだけ低く、ねちっこく、相手をビビらせる。


 相手の体が強張った所で、相手を突き放し、右手だけでハルバードを振るう。上手く刃が当たらず、柄が当たったが、相手の左腕は骨折間違い無しだ。その勢いで右手も折って戦意を無くす。


 すぐさま止めの合図がかかり、治療班が降りてくる。俺は受験者に治して貰ったが、相手の方はギブアップしたようで試験官が治療している。


 ランキング発表から昨日まで、俺はロダオールさんに一つしか教えられていない。即ち、肉を切らせて骨を断つ事だ。
 その訓練、最初は上手くかわせず、骨折も何度かあったが、その分、『痛覚軽減(中)』というスキルが手に入った。先程の悲鳴も嘘だ。実際には針で刺された程の痛みしか感じなかった。威圧のセリフも狂人を演じただけで兜の中では真顔だ。いや、それはそれでもおかしいのか……?


 “より効率的に”それがロダオールさんからの課題だ。




 六戦目。準決勝だが、俺としてはもうベスト十に入れたので満足だが、同じクラスになるかもという相手なので、降参はしない。
 相手は姉妹だった。結果は惨敗だった。


 始まってすぐに姉妹の体を隠す程巨大な――数メートルあるような火球が二つ出現する。それはこれまでの魔法とは桁違いに早い速度で迫って来た。慌てて避けるが、火球は追ってきた。俺は消耗覚悟でそれを受けた。しかし、魔法はそこで終わりでは無かった。刹那、数メートルの火球に包まれた俺は不思議に思う。確かに熱いのだが、産毛がチリチリと焦げる程には。しかし、皮膚が爛れる程ではない。ギュッと瞑っていた目蓋を開けると、そこには姉妹が回し蹴りを俺に叩き込もうとしている姿があった。同時に放たれた蹴りに俺は吹き飛び、意識を失った。


 『ファイアー・ベール・シスターズ』


 炎を纏った踊り子。それは俺が初めて受けただった。


 そして、目が覚めて最初に受けた言葉はSクラスへの入学決定の知らせだった。












 




 









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