異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

ランクアップ試験、実戦試合! 前編 

 「二つ名……ですか?」


 「ああ。ま、お前じゃなく、王様……延いては噂を広める観客が決めることだ。考えても仕方がない」


 「俺……万全じゃ無い……」


 チラッチラッ。


 「……わぁったよ。ちょっと待ってろ」


 ガレッタさんはまた机の自分の引き出しを漁る。


 「あったあった……ほらよ!」


 机の中から取り出されたのは小さな小瓶。それをこちらに放り投げて来る。


 「うわっ! ……急に投げないで下さいよ、ビックリしたじゃないですか……」


 「ガハハハハ。そんだけ元気なら大丈夫だろ! 飲め、MP回復ポーションだ」


 元気だから戦えるって事でも無いけどな。


 俺はお礼を言ってから小瓶のコルクを抜き、一気に中の液体を喉に流し込む。とてつもない苦味がひんやりと喉に張り付く。何度か飲んだことがあるが、どうにも俺は慣れない。が、無味無臭なのに気分が悪くなるHP回復ポーションよりましだ。


 「おえっぷ」


 吐息ともゲップとも違う息をしながら、涙目になる。俺はポーションの小瓶を出されている湯飲みに持ち変えて残りのお茶を一気に飲み干す。


 「おいおい、だらしねぇなぁ。こんなのHPの回復ポーションの不味さと比べりゃ屁でもねぇだろ」


 「ううっ……いやいや、まだ単純な苦さの方がましですよ……ふぅ。スッキリしました。ありがとうございます。じゃあ、また後で来ますね」


 実際のところ苦味は治まった代わりに少し頭痛がしているのだが、特に問題はない。俺は席を立って扉へ向かう。


 「おう。……あ、ちょっと待て。試合を行う場所なんだが、ギルドの地下闘技場を使う」


 「地下? ギルドに地下なんてあるんですか?」


  下に降りる階段なんて見たことが無いが……。


 「ああ。っと言っても直接繋がっている訳じゃない。ギルドの下の空間に魔方陣で転移するんだよ。暇なら今から行くか?」


 どうしよう……ま、どっちにせよ特にやらないといけないことは無いし……。


 「じゃ、お願いします」




 そして、一階に降り、――ガレッタさんが下に降りてくる姿を見つけた者から固まっていった――会議室の向かいの部屋に入る。入る瞬間、体がグッと重くなったが、通り抜けると……。


 「おお!」


 見渡す限りの観客席、そしてその中心にはサッカーのフィールド位の広さはあろう砂場が広がっていた。まさに闘技場……コロシアムとでも言うのか。


 「どうだ、すごいだろ? ここは一々起動する魔方陣とは違ってドアに仕込んでいるから行き来も楽だ。俺の自慢の部屋だ」


 と、腕を広げ、高々に自慢してくる。


 これは部屋とは言えないんじゃ……。


 「凄いですね。驚きました」


 「それにしては反応が薄い気がするが?」


 「いや、こう……驚きすぎて言葉がでない感じです」


 こんなに広い空間を地下につくれるのか……。とか、魔方陣ってドアにも設置出来るんだ……。とか、そんな考えが頭を巡り、上手く思考が出来ない状態だ。


 「ここで体を暖めておくのはいいんだが、念のために言っておく、罠の類いは……」


 「分かってます、やりませんよそんな事」


 そもそも罠を仕掛ける魔力さえもったいない


 「うーん……ま、やらないならいいんだが、やってもいいんだぞ?」


 残念そうにしているが、いいのか!? 卑怯じゃないのか?


 「そんなことしてもいいんですか?」


 俺は聞く。


 「おいおい。そんなことつったって、罠は立派な戦い方だぜ? 特に冒険者ってのはランクが上がると戦い方がはっきりしてくるもんだ。そうだってのに罠は卑怯だ! なんて固定概念が足を引っ張ってる。なんて俺が思ったりしてるって事よ」


 これまたガレッタさんは鼻を指で擦って自慢気に言う。が、少し恥ずかしそうにしている。


 「そしたら、いつの間にか大事になっちまってよ……」


 なるほど。企画が独り歩きして言ったってことか。


 「ま、いい方向に、だから別にいいんだけどな」


 そして、全体の構造を適当に教えてくれた後、じゃあ、と、手を上げて戻っていった。 


 「さて、何をしていようか……」


 圧倒的に暇であった。
 しかし、何もしないでただ、ボーッとしているのも嫌なので、罠について調べようと思った。






 そして、罠を設置するため、下に降りようとしていると、前方の観覧席からガレッタさんの声が響く。
 本を見られないように反対へ移動したのは正しい判断だったと言える。なぜなら……。


 「おーーーーーい! 時間だぞーー!! レトーー!」


 単に大声にビックリしただけであるのだが、後ろから聞けば前に転げ落ちていたこと間違いなしだっただろう。


 「時間? もうそんなに経ったのか?」


 まだ一時間か二時間ほどしか経っていないと思っていたが――体感時間であって調べた訳ではない――。
 結局、罠は設置出来なかった。








 俺はガレッタさんの所へ行き、まだ時間には余裕があった筈だと、抗議の意味も含めて質問した。


 「あっちが待ちきれないって言ってな……そういえば紹介してなかったな。あいつが……」


 と、なんとも言えない理由に納得しつつ、指で指された方に向き直る。
 そこには現在進行形でゆっくりとドアの転移から抜けようとしている人物がいた。


 「あ、まだ抜けてなかったのか……」


 「あれは何を?」


 調子が狂ったとでも言わんばかりに頭をポリポリ掻いているガレッタさんに聞く。


 「あの魔方陣には警備システムが組み込まれていてだなぁ……危険物があるかチェックしているんだよ。申告して俺がチェックした物ならすぐ通れるけど、あいつは俺に触られるのが嫌いらしくてな。おまけに、特殊な武器とか防具とかは普通の物より時間が掛かる。あいつは自らゆっくり進んでるわけだな。ガハハハハ」


 そして全身転移が完了し、こちらに向き直ったのは見覚えがある人物だった。というか顔じゃなく、服に見覚えがあるのだが……。


 「こいつがAだ」


 「あははー、おひさだねー。え? Cランクで? パーティー組んでリーダーしてなかったかって? よくぞ聞いてくれました!」


 いや、聞いてない。断じて聞いてない。


 「それは三、四年前の時点での事だったのでーす! トラウマでシーナちゃんはああ言ってるけど、もうパーティーは解散してるんだよねー」


 イラッっとするしゃべり方だが、問題はそこではない。ネタバラシの所だけ棒読みだが、問題はそこではない。


 「服はそれしかないのかよ!? ……あれ!? 何でガレッタさん興味失ってるんですか!?」


 俺は見逃さなかった。ガレッタさんは欠伸をした。が、問題はそこではない。


 そう! 服だ。服が問題なのだ。前と同じキラッキラのシャラシャラ言ってるその服。


 「うん。これしか無いんだー。あ、ついでに言うと暫く洗ってないよー?」


 あ……。なんかもう俺も興味が失せた。早く試合しよう。


 「「早く試合をしよう……」」


 俺とガレッタさんが同時に発した言葉だった。


 






 

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