異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

俺ってもしかしてだけど、巻き込まれ体質なのだろうか!

 「これが今回の報酬です」


 「ありがとうございます」


 ゴブリンを討伐して街に戻った俺は、常識を養う為に出店を見て回っていた(冷やかしはしていない)が、いい加減ギルドに行こうと思い、現在報告を終えて報酬を受け取ったのだが、次に受付のシーラさんが発した言葉に固まった。


 「あ、そうそう。ギルドマスターが呼んでましたよ? レトさんの事。……何かあったんですか? 事件とか」


 「いや、特には心当たりはないです」


 「そうですか……あの人は気に入らなかったに対して怒鳴ったり殴ったりしてトラウマになる人がいて……あ、でもその殆どが悪いことをしていた人なんです。例え法に掛からなくても駄目と思ったらとことん反省させるって感じで、良い方にも悪い方にも情熱的と言いますか……」


 シーラさんは顔に手を添えて不安そうな仕草をする。大丈夫、大丈夫。俺は何も悪いことなんてしていない……よな?


 「頑張って来ます」


 「はい。頑張って来て下さい」






 何を頑張れば良いのかは分からないが、気を引き締めて階段を上り、ギルドマスターの執務室をノックする。


 「ん? ああ、入れ」


 返って来た声は野太く響いた。唾をゴクリと飲んでノブを捻る。


 「レト・アルトレアです……自分に何かご用でしょうか?」


 「アルトレア、お前さんには二つ……いや、三つ伝えないといけない事がある。先ずは座ろうか。立っていてはしんどいだろ? それと、魔法は構築出来ないぜ? ここは俺の部屋だ。ルール制限は俺が決める」


 一目見ただけで、異様な空気を感じられた。つい反射的に魔力操作を使用してしまった。


 「いや……すみません」


 「まぁ、俺には分かるぜその気持ち。俺が予想していたより遥かに多い魔力量を持っている事に俺も驚いている。先祖帰りか? エルフは成長が早いって言うが本当だったんだなぁ。確かお前さんは十三位だったか? 十六位に見えるぞ? 顔立ちに比べ背がちっこい気もするがな! ガハハハハ。それと、そんなに畏まる事も無いぞ? 俺の名前はガレッタ・オルベイ。この街……グレアックのギルドマスターを勤めている。さて……」


 豪快に笑ったり、フレンドリーだった態度が急変した。


 「何から話せばいいのやら……そうだなぁ、お前さんが一番気になってる事……アルトレア辺境伯夫妻の安否だな」


 そう、俺は考えようとしてこなかった。父さんや母さんに何があったのか。タシューさんの表情からは悲しみが見て取れた。最悪――。


 「レト。お前の両親は……死んだ」


 死んだ……その言葉が何度も繰り返される。なんとなく察していた……けれど、実際に現実を突き付けられると、止めどなく涙が溢れて来る。胸が苦しくなり、吐き気を覚える。


 「あぁ……うっ……嫌だ……」


 「受け止めろ。現実から逃げるな」


 分かってる。分かっているのにどうしても認めたくない……嫌だ。








 少しの間、泣き続けた。やがて涙が枯れ、顔を上げる。


 「茶、飲むか?」


 「はい……ありがとうございます」


 声が掠れていた。
 俺は差し出されたお茶を飲み干し、一言謝った。


 「すいませんでした。ご迷惑を掛けて……」


 「なにも謝ることはねぇよ。悲しくて涙が出るなんて普通のことだろうが」


 オルベイさんは優しく微笑んで来た。


 「オルベイさん、あの……両親は殺されたんですか?」


 返ってくる答えは予想通り、肯定だった。


 「ああ。後、俺の事はガレッタでいい。そうだな……あの二人はちょいと特殊でな国を――種族を跨いだ夫婦だ。国同士の架け橋になるのは必然だった。一部の貴族や、王族しか知らない位に重要な存在で、守りは勿論、生命状態のモニタリングもされていたらしい。指輪が魔法具だったとか……。その魔法具の情報からだと、一瞬で殆どのHPが削れ、即死に近かったそうだ」


 「そうですか……。教えてくれてありがとうございました。ちょっと気持ちに整理が着いた気がします。……他の俺に伝える事って何ですか?」


 「ああ。聞くところによるとロードウルフを倒したのはお前さんだって聞いたが、合ってるか?」


 「はい。俺ですけど」


 嫌な予感がする……。


 「ついでに北にある草原のオークが活発になって来たから頼むわ」


 いや、そんなとびきりの笑顔で言われても……親指を立てられても……今はランクをあげる事を優先しようかなーって思ってますし……。


 「勿論報酬は弾むぞ? あと――」


 「分かりました殺りましょう」


 「……。あ、あとランクアップするか?」


 「よろしくお願いします。ガレッタさんに任せます」


 俺のランクじゃ無理なオーク討伐をギルドマスター直々に頼まれた。ランクアップまで出されたら殺るしかないよな? え? ランクアップは報酬じゃ無いって? 細かいことは気にするな!


 「そうか、よかった。お前さんは強さとランクが釣り合って無いからな! よし! Aランクまで上げるか!」


 え? えーらんく?


 「ちょちょちょっと待って下さい! 精々Cランク位じゃ……」


 「A! 決まり! 二週間後に丁度Aランクが来るからそん時に試験だな! ガハハハ!」


 あれか。これは特別扱いか? 嬉しいのには代わり無いが、結果的にバッシングを受けるのは俺なのかなぁ?


 「はぁ。精々死なないようにします……三つ目は?」


 「あー、それはまた今度でいい。今日はもう帰って休め」


 「じゃあ、戻ります。色々とありがとうございました」


 席を立って、頭を下げる。


 「偉いなぁ……一応お前さんも貴族なのに他の……お前位の歳の坊っちゃんだと威張って、偉そうに見下して来るから疲れるのにな。ハハハハ……面白いじゃねぇか」


 ドアを閉めかけた時にボソッと聞こえたが、最後に悪戯っぽい目の笑みを見て、聞かなかった事にした。






 「レトさん! 大丈夫でしたか? 殴られませんでしたか? 怪我はありませんか?」


 「え、ええ多分……」


 階段を降りて一階に戻ってきた瞬間に声を掛けられて一瞬ドキッとした。
 カウンターの方からシーラさんが駆け寄って来た。


 「ほっとしました」


 「あの人ってそんなに怖く無かったですよ?」


 「!?」


 シーラさんだけではなく、依頼を選んでる奴や受付に並んでる奴までこっちに振り返る。何故かデジャブ感がある。


 「いや、あの……思ってたより優しいと言うか、声は大きかったけど怒鳴られはしなかったと言うか……」


 掲示板の方から一人来た。栗色の髪の優しそうな青年だ。


 「へぇーすげーなお前。期待の新人か?」


 「あんたは?」


 「え……ああ。こちらはCランクパーティー『紅の夜道』のパーティーリーダーを勤めていらっしゃるノートスさんです」


 シーラさんがハッとして慌てながら紹介した。シーラさんの方に目配せした俺が悪かったのか? 


 「そ、それでは私は仕事に戻りますので。何かあれば受付に」


 一礼してカウンターに戻って行く。


 「あははー帰っちゃった。残念残念。皮肉も言われちゃったなー。え? 何が皮肉かって? よくぞ聞いてくれました! 実は俺のパーティーが……」


 いや、聞いてない。ギルドを出ようとした俺をお前が引き留めたんだ。


 「シーラちゃんの初めてで、俺たちの初めてもシーラちゃんだったのです!」


 「“仕事が”だろ?」


 「あはっバレたかー」


 隠す気が全く無い嘘に溜め息を吐き、振り返る。


 「それだけか?」


 「実は……俺ってば有名人だから内緒にしててね……お忍びなんだー」


 口を隠すように小声で話しかけてくる。


 「それにしては隠す気が全く無いな……もっと地味な服着れば良いのに」


 「えーだってこれしか無いんだもーん」


 キラキラした服しかないのは駄目だと思う。


 「いや、他にもあるだろ!」


 「あははー。じゃ、俺依頼でも見てくるよ。またねー」


 「あ、ああ」


 今日はなんか疲れた。
 帰って読書するか。


 ちょっと暑苦しい嘘つきとはまたすぐに会う気がする……。






 このときの予感はすぐに現実となった。

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