異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

買い物したけど、タイミングって大事だよね!

 「ふぁぁぁあ……眠い。今日はもう寝よう」


 宿の食堂――この宿は銀の豚亭という名前で、豚料理が有名らしい――で、晩飯を済ませた後部屋に戻り、強欲の書で何か調べようか迷っていたが、欠伸が出たので今日は寝る事にする。


 「明日は何しようか……買い物したいな……。武器と防具と……服とか靴とか......」


 明日、何を買うか頭の中にメモしながら備え付けのベッドに横になり、目を閉じる。
 まだ、日が沈み終わった少し明るい光が窓から入って来ているが、目を右腕で覆い隠し、眠りについた。














 「ん……いてててて」
 翌朝、なぜか右腕が痛い。寝る時に何かしてたかな……まあ別に良いけど。


 頭が冴えて来るまでボーッとしていたが、腹が減ってきたので部屋を出て食堂に向かった。


 適当にあっさりした物をと、頼んで席に着く。


 「ふぁーあ……まだ眠いな。えっと、今日は買い物だったな。武器と防具と冒険者に必要なものは先に行っておこう。後は着替え……靴もいるんだっけ? 後で部屋に戻って強欲の書で店の場所を確認するか」


 と、今日の予定を確認していたら朝食が運ばれてきた。


 「はいお待ちどうさま、パンとサラダとスープだよ。昨日はよく寝れたかい?」


 「はい、ぐっすりと寝れました」


 何で昨日はここに泊まらなかったのか不思議になる位に寝心地は良かった。


 「そうかい? それなら良かった。それじゃ、ゆっくり食べるんだよ」


 「はい、頂きます」


 と、俺は食べ始める。


 パンは芳ばしく、スープに浸すとさらに旨い。サラダも母さんの料理には劣っている気がするけど、十分旨かった。




 食べ終わり、部屋に戻って地図で目星を付けてから宿を出る。




 「先に、遠い店から見て行くか……確か、武器の店だったな」


 街の景色を覚えながら進む。親友に方向音痴の奴が一人いるが、あいつは目的地しか見てないから、行きはいいけど帰り道に迷うんだよなぁ、風景を見ろって教えた筈なのに……あれ? 車で酔ってた時に言ったんだっけ? ……タイミングって大事だな!


 しばらく、道を進んでは曲がってを繰り返し、人目のない場所で道を確認してさらに進む。




 「武器屋骸迦がいか……ここか」


 結構……二、三時間が掛かったかと思っていたけど、実際には三十分程しか掛かっていないのを後で知って驚いた。


 「んぁ? 客か。好きに見てってくれ俺ぁ奥にいるから買うなら声掛けてくれ。言って置くが持ち逃げしようなんて思わねぇこったな――」


 黒っぽい店構えの中に入ると、奥からスキンヘッドの男が顔を出してぶっきらぼうに言った。


 「ああ、分かった」


 と言った俺の声を聞き流すように奥に戻っていく。好都合だ。


 「『強欲の書』この店で俺が使えて、強い武器」


 てっきり店の奥に一番強い武器を隠しているのかと思っていたが、そうでもないらしい。


 店には個別で値段が付けられている名剣から単一の値段で売られている物、もちろん剣だけではなく、モーニングスターみたいな打撃武器もある。


 強欲の書の検索結果――俺の足元。


 見下ろすとそこには……何もなかった。
















 「ザ・無駄足だな」


 俺のステータスが弱すぎて剣を振るうことすらできないって事なのかな……。明日からは筋トレ始めようかな。


 防具については専門の店が見当たらなかったので、ギルドに向かう。多分売ってるとは思うが、もし売っていなくても受け付けに聞けばいいだろう。最悪、隣接している酒場で飲んでいる冒険者に聞けばいい。


 ギルドに向かう途中、雑貨屋に寄って下着と服を買っていく。少し多く買いすぎたかもしれないが、アイテムボックスに収納すれば場所には困らない。




 「あ、レトさん。こんにちは。どうされました?」


 「装備を整えたいと思っていて……防具って置いてます?」


 登録してくれた人……シーラさんに訊ねる。


 「防具ですか? ちょっと待ってくださいね……あ、ごめんなさい。丁度、先ほど在庫が切れたみたいで……」


 本当、タイミングって大事。痛感した。


 「そうですか……」


 「申し訳ございません。気晴らしに依頼など受けて行かれてはいかがですか? レトさん程強ければ防具無しでも十分戦えるかと……」


 「依頼ですか?」


 そういえば掲示板見てなかった。


 「ええ、警備隊のグラフィルさんからなんですけど指名依頼が入っていて、受けますか?」


 ああ、申請しておくって言ってたな。


 「はい。受けます」


 「分かりました。内容は確認されますか?」


 「じゃ、一応」


 内容は聞かされていた物と同じもので安心した。


 「左手の掲示板にある依頼書から警備隊の依頼と書かれている物を取れば良いとの事なので」


 と、掲示板を指す。
 俺は頷いて掲示板を見に行った。

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