異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

冒険者になったけど、荒くれじゃなくてもいいよね! 後編

 「デカいにも程があるだろう! しかもハイドウルフってウルフだろ!? 何で中型越して大型になってんだよ!」


 慌てながらも相手を観察する。そもそもあの大きさで森の中を走って、木が一本も倒れていないのは何故だろうか? 俺には精々、狼(犬位の)がよだれ滴ながら俺を食べるために追いかけて来てるから岩に乗って上から攻撃すれば楽勝かと……。


 「ゴルゥゥゥゥ」


 「『パワー』」


 ハイドウルフが飛び上がり爪を振りかざしながら迫って来る。とりあえず腕を強化して横に飛びつつ、横腹に打ち込む。が、


 「ダメージが入ってないのか。厄介だな」


 横に吹き飛びはするが、ふらつきもしていない。恐らく、あの青い毛皮が衝撃を吸収しているのだろうと思い、魔法の準備をする。
 この空けた場所では格好の的なので、木の影に隠れながら回り込む。ハイドウルフは動かずにその場に佇んでいたのだが、木で一瞬姿を見失うと共に俺の少し大きめだが普通とも言える大きさの狼が姿を現し、こちらに向かって走って来る。


 「っ!?」


 視界を戻したが、一瞬前までは大岩の隣にいた、それこそ大岩と同じくらいのサイズだったはずのハイドウルフが消えていた。


 「可能性は二つ、それ以外だったら御愁傷様って感じだな。一つは小さくなってる可能性。だけど位置的に不可能な筈。大きくなると防御、小さくなると俊敏が上がっているのならともかく……おっと! 危ないけど、そこまでじゃない。つまりは……」


 大岩の隣に目掛け、走る。


 「外したら大惨事、当たったら大健闘。……ハイドウルフって言うぐらいだから、隠れてるんだろうが!!」


 先程から溜めていた腕の魔力を一点集中で解き放つ。かつて家の近くで大惨事を起こしたレベルの魔力を込めている。外したら森が吹き飛ぶだろう。だが、


 「勝った……」


 その場に姿を現したのは既にこと切れている巨大なハイドウルフが横たわっている姿だった。流石に地面にクレーターを作る威力は吸収しきれないよな。……それにしても、


 「やっぱり最初から一体じゃなくて二体いたんだな」


 見事に二つ目の可能性が的中したのである。実は内心ビビっていたが、普通のハイドウルフが逃げていくのを確認すると、落ち着いて来た。


 つまりは小さい方が獲物をここまで連れてきて、大きい方が仕留める。どちらかが姿を現しているときはどちらかが姿を消しているから、急にサイズが大きくなったり小さくなったりと勘違いをしてしまう訳だ。


 死体をアイテムボックスに入れ、結界に置いてきた寝袋を取りに向かう。
 戻ったときには日が登りきっていた。












 街に戻るときの門番が、昨日の奴だったらと危惧していたが、別の人……それも優しそうな人に代わっていてよかった。


 「どうも」


 俺は銀貨を手に門番に話しかける。


 「あ! 君って昨日の……」


 顔を覚えられていた。恥ずかしい。


 「銀貨しかないんですけど両替できますか?」


 「ああ、通行料ね。それなんだけど、隊長が君に話があるって言っててね。通してもいいからって、俺達の休憩小屋って分かる? そこに来てほしいってさ」


 ラッキーだけど、話ってなんだろうか?


 俺は門を通って昨日の小屋に向かう。




 小屋に着くと、小窓から見えていたのか、


 「やあ、レト君だったよね。とりあえず入りなよ」


 と、ドアが開く。
 促されるままに中に入って椅子に座る。


 「そういえば自己紹介をしていなかったね。僕はグラフィル。この街の警備隊の隊長をしている。今日君を呼んだのは、君に依頼を頼みたかったからだ」


 「依頼ですか?」


 昨日、ギルドで冒険者登録をしたあとに軽く説明してもらったのだが、完全に覚えていない。


 「依頼と言ってもちょっと変かもしれないけど……君に、討伐系の依頼を優先して欲しいんだ。勿論、優先であって強制ではないのだけれど……。ここ最近、魔物が活発化してきているんだけども、ここは田舎……辺境だ。冒険者自体が少なくて手が回っていないんだよ。見たところ君は見た目によらず強いみたいだからね。君に依頼しようと思ったんだよ」


 「報酬は?」


 「そうだね……なら、通行料の免除でどうかな?」


 「やります!」


 こんなにうまい話があっていいのだろうか。銅貨三枚でも、屋台で小腹を満たすことは出来る筈だ。つまりは一食分の食費が浮くって事だ。でかすぎる。特に今は全財産が手元にある銀貨二枚。武器や食料など、いろいろ買う必要があるので、すぐに消えるだろう。だから報酬が多い討伐依頼は元から目当てだったし、デメリットが見当たらない。


 「ありがとう。ギルドには後で僕が申請しておくから」


 「いえ、こちらこそ助かります。俺、結構ピンチなんで少しでも沢山の依頼を受けたかったので、ありがたいです」


 「じゃあ、頑張ってね」


 俺は軽い足取りでギルドに向かった。


 後に、この依頼が俺を守ることになるのも今は知らなかった。






















 ギルドに入ると、何やら掲示板の前に人だかりが出来ていた。


 「なんだあれ?」


 「流れ者のカロンが南東の森の主の討伐依頼を申請しようとしててな」


 小声で言ったつもりだったが、近くのテーブルで酒を飲んでるスキンヘッドの男に聞こえていたらしい。


 「カロン?」


 「なんだおめぇ? カロン知らねえか?」


 「すまん、最近ここに来て冒険者登録したもんで情報に疎くてな」


 冒険者同士では敬語を使わないのが暗黙の了解らしい。敬語を使うとなめられるからだとか。……大いに分かるので、慣れない口振りで話す。変な所が無ければいいけど。


 「そうか、カロンってのは手短に言うとだな、キザでうざくて惚れっぽい奴だ」


 「なるほど。だからさっきから受付の職員をチラチラ見てるのか」


 俺の登録をしてくれた女の人だ。


 「おお! いい勘してるじゃねえか坊主、当たりだ。受付のシーラちゃんに良いとこ見せようと、一つ上のBランクの依頼を受けようとして、それを止めようとしてる奴と、野次を飛ばしてる奴が騒いでるって訳よ」


 「行ってくる」


 「お、野次か? 阻止か?」


 「どちらかと言えば、阻止かな」


 受け付けに言い寄る方ではなく、クエストの受注の方だけどな。


 「そうかそうか。ま、頑張れよ」


 と、酒をあおってニヤニヤする。絶対勘違いしてるなこのおっさん。


 俺は野次を飛ばしてる奴らの横を抜け、掲示板の前に飛び出る。


 「なんだい、君は?」


 「その依頼、俺が貰う」


 「は? 何を言って……、だいたい君みたいな子供に森の主は倒せないよ。ボクみたいに強くなければ、ね」


 イラッと来たが、堪える。


掲示板にある、Bランクの森の主討伐の依頼書を剥がす


 「そうか。じゃあまた――


 「おい! 何を勝手に人の依頼を……」


 「言っておくが、掲示板から剥がしてなかったからこれはお前の依頼じゃないぞ?」


 「……」


 受付まで足を進めようとすると止められたが、俺の正論に言葉も出ない様子。


 「じゃ――


 「待った!」


 「はぁ、今度はなんだ?」


 大声を出して俺をまたもや引き留めたカロン。意地を張りすぎて周りに引かれるのはよくないと思う。手遅れだが。


 「お前が取ったのは分かった。それは許そう」


 何をだよ!


 「妥協して、先に主を狩った方が勝利ということでどうだろう」


 何でだよ!


 「面白そうじゃねえか」


 何で口出ししてんだよ! おっさん!


 あーあ、野次飛ばしてる奴が賛同し始めちゃったよ。




 そして、いつの間にか勝負を断れない雰囲気になっていた。


 「では! これより、流れ者のカロンと新人のレトの勝負を始める!」


 おい、何でおっさんが仕切ってるんだよ。


 「よーい……始め!」


 「ふはははははははははははっはっはー」


 カロンは謎の叫び声と共に飛び出していく。


 なんだよ、俺は装備を整える所からなのに……。


 受け付けに行って、金を貰おう。一応だが、借金とか強盗とかでは決してない。


 受け付けに、手に持っていた依頼書を出す。


 「すみません。報酬を貰えますか? 南東の森の主……、討伐してきました」

「異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く