異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!
家庭教師がやって来たけど、性格に難ありだった!
「え?」
ヒュルリ、と風が冷や汗滴る頬を撫でる。
ヤバい。見つかったらどうやって言い訳しよう……いまのところ母さんが来たりしてないって事は多分気づいてないんじゃないかとは思うが、見つかったら大騒ぎだ。もうむしろ爆音でも起こったらよかったのに、静かに地面が抉れるって……どうすればいいのかわからん。お笑いとかで受けるか滑るか、どっちかにしてほしいと言う人の気持ちを理解できそうな気がする。
危ない危ない。現実逃避に浸っている場合じゃないな。
さて、どうしようか……。
等と考え込んでいると急に、ドサッと後ろで音がして慌てて振り向く。
「っ!? ご、ごめんなさい。ついやっちゃっただけで悪気はなく……て? えっと、どちら様でしょうか?」
そこにいたのは、好青年という文字を人に写したような爽やかな青年だった。
「やぁ、僕はタシュー。君がレト・アルトレア君でいいかな?」
「は、はい。そうです」
「僕は君のお父さんの知り合いでね、君の家庭教師を頼まれて来たんだ。……いやーそれにしても、これは凄いね! 圧巻だよ。どんな魔法を使ったのだい? 実は魔力について研究しててね、家庭教師として君に勉強を教える代わりに、君という貴重なサンプ……ごほん、実験台……じゃなくて……協力者! そう、協力者として手伝って欲しいのだけどいいかな?」
なんか怖い。昔、学校にこんな奴いたな……ひとつの事に夢中になる奴。確かあの時は円周率覚えようとしてたっけ。名前、なんだったかな?
まあいいや。この現在進行形で近づいてきているマッドそうな研究者を使おう。
「分かりました。でも、俺からも二つだけ条件があります。一つ目はここを直して下さい。二つ目は両親にここの事を秘密にして下さい。それだけです」
「ええ! それでいいですとも寧ろそんな事でいいんですか? いえいえ不満ではないのでその条件でお願いします。……ではまずはここの整地からですね。では、『アース・ウォール』っと。このくらいでいいですかね。まぁ、後は足で均せば元通り。はい、出来ました」
抉れた所から土が盛り上がり、元通りになる。そこだけ草は生えて無いけど……。
「あ、ありがとうございます。えっと、お母さんかお父さんの所に案内しましょうか?」
「あー、うん。お願い出来るかな、ここに来るのは初めてで……」
と、タシューという人は頭を掻く。
家に向かいながら少しの間話したが、普通だった。ただ少しでも魔法の話をしようものなら急に暑苦しくなった。
母さんがいつもいる裏庭を覗いたが姿が見当たら無かったので、父さんの書斎に案内した。
「ありがとう、ここまで来たら大丈夫。またあとでね」
と言って部屋に入っていった。……さて、どうしようか。さっきの草原に戻ってもいいけど、またやらかすかもしれないからやめとくか。
よし、部屋で読書でもしよう。読むのは強欲の書であって普通の本じゃないが、そこは気にしないでおこう。本は本だから。
「『強欲の書』……さて、なにを調べるか……うーん、『俺のスキルと固有魔法の詳細』とかでいいかな?」
====================
スキル――
HP自動回復(小)
休息無しでも自然に少しHPが回復する。
痛覚軽減(大)
痛覚をとても軽くする。
固有魔法――
魔力操作
体内にある魔力を操ることができる。
応用として、使用魔力(MP)の軽減や、身体能力の一時的向上等がある。
強欲の書・討伐の書
それぞれの名称を詠唱すると手元に現れる。効果、用途は主にそれぞれ索引・記録である。
====================
「なるほど。さっき失敗したのはこの『使用魔力軽減』が原因だとしたら納得だな。同じ量でも何倍の威力になるのか……特大って結構凄くないか? 確か、スキルとかって経験から反映する……よな? 『スキルの入手について』えっと、うん合ってた。ということは、あの文字通り、死ぬほど痛かった経験より、三年間の暇潰しが勝った……?」
ふぅ、と一息ついて横になる。
「寝るか」
不貞寝である。
起きたら朝だった。夕食が……。
という夢を見た。
「レトー、起きてるー? そろそろ夕食の時間だからいらっしゃい」
そんな声で目覚めた俺は夕食でタシューさんがこれから、勉強を教えてくれると改めて聞き、この日から魔法について学び始めた。
「よし! ちょっと暗いけど夕食後の運動にさっきの場所に行かないかい? 君の魔法について知りたくてね。許可は取ってるからね。あそこだったら何しても良いってさ。やっぱり君のお父さんはいい人だね」
「良いですけど、許可なんて必要ですか?」
「いやいや、注目すべきは許可の有無じゃなくて、何でもしていいって所だよ……これで研究も捗るってものさ」
「なるほど。あれくらいだったら結構放てるので別に良いですけど、ちゃんと僕にも教えて下さいよ?」
「ああ、その事だったらちゃんと計画が……ちょっとストップ! 今、あの威力の魔法を複数回放てるって言ったか?」
「ええ。でもあれって魔法かどうか怪しいんでs……」
「よし! 行こう! 今すぐ!」
と、走りだし、片道五分の距離を一分程で到着して、
「早く、早く見せてくれ」
と、言う……正直うざい。
「はいじゃあいきますよー……ふっ!」
昼より込める魔力を減らした為か、辺りが暗くなっているのが原因か、あまり派手にはならなかった。それでも数メートルは削れているのが分かる。
「うーん、いまいち! 次は全力で頼めるかい? 魔力回復薬は持ってるから全部出しきる感じでね」
「本当、頼みますよ? 全力で魔力込めたことなんてないんですからね。まぁ、いい機会なんで僕もやってみたいとは思ってた事が出来て嬉しいんですけど……。――ふぅ、結構魔力を使ったと思うんですけどこれじゃあ魔力より先に腕が限界になりそうですね。多分、MPの半分位が限界になりそうですね」
既に魔力を込めている右腕は骨が軋んでいる音を出している。俺は一度送り込む事を中断して、確認を取り、
「うーん、君の体が優先だからね。無理はいけない、じゃあ十秒後に撃ってくれー」
凄いスピードで走って遠ざかって行く姿を見送る。もう点のようになっている。
「そろそろか……というかあんなに離れていて見えるのか?」
ま、いいか……。俺は、先ほどの魔力を溜めているときにタシューさんが作ったであろう目の前に広がる土の壁に向けて拳を構える。
「はっ!」
と、短く息を吐きながら拳を前につき出す。
限界まで魔力を込め、強化した一撃は衝撃波を伴い壁を突き破り、地面を抉る。その勢いは収まる様子はなく、更に大きく広がり、深く、広くなっていく。
が、不意にドゴォォオオと音が遅れて、来る。あまりの音に俺は耳を押さえて、座り込む。次にギィィンと甲高い音が聞こえ、先ほどの音と合わさり、耳の中を飛び回る。
少しの間座り込み、耳を押さえていたが、やがて音は小さくなっていく。
ガンガンと頭が痛む。音の影響か、魔力を一気に使いすぎたか……どちらにしても、俺はしばらくの間動けなかった。
どれ程時間が経過したかは分からないが、頭を上げると、放射状に広がって抉られた地面が目の前に広がる。草原の端まで大きく抉られたその大地はクレーターと言っていいほどだった。
しかし、その先にピッタリと地面が元に戻っている。いや、削られていない地面が広がっていた。まるで、破壊不可能の壁のように……。
「結界……か……」
しばらく、その光景に唖然としていたが、やがて母さんがやって来て、タシューさんと共に怒られたのは秘密にしておきたい。
ヒュルリ、と風が冷や汗滴る頬を撫でる。
ヤバい。見つかったらどうやって言い訳しよう……いまのところ母さんが来たりしてないって事は多分気づいてないんじゃないかとは思うが、見つかったら大騒ぎだ。もうむしろ爆音でも起こったらよかったのに、静かに地面が抉れるって……どうすればいいのかわからん。お笑いとかで受けるか滑るか、どっちかにしてほしいと言う人の気持ちを理解できそうな気がする。
危ない危ない。現実逃避に浸っている場合じゃないな。
さて、どうしようか……。
等と考え込んでいると急に、ドサッと後ろで音がして慌てて振り向く。
「っ!? ご、ごめんなさい。ついやっちゃっただけで悪気はなく……て? えっと、どちら様でしょうか?」
そこにいたのは、好青年という文字を人に写したような爽やかな青年だった。
「やぁ、僕はタシュー。君がレト・アルトレア君でいいかな?」
「は、はい。そうです」
「僕は君のお父さんの知り合いでね、君の家庭教師を頼まれて来たんだ。……いやーそれにしても、これは凄いね! 圧巻だよ。どんな魔法を使ったのだい? 実は魔力について研究しててね、家庭教師として君に勉強を教える代わりに、君という貴重なサンプ……ごほん、実験台……じゃなくて……協力者! そう、協力者として手伝って欲しいのだけどいいかな?」
なんか怖い。昔、学校にこんな奴いたな……ひとつの事に夢中になる奴。確かあの時は円周率覚えようとしてたっけ。名前、なんだったかな?
まあいいや。この現在進行形で近づいてきているマッドそうな研究者を使おう。
「分かりました。でも、俺からも二つだけ条件があります。一つ目はここを直して下さい。二つ目は両親にここの事を秘密にして下さい。それだけです」
「ええ! それでいいですとも寧ろそんな事でいいんですか? いえいえ不満ではないのでその条件でお願いします。……ではまずはここの整地からですね。では、『アース・ウォール』っと。このくらいでいいですかね。まぁ、後は足で均せば元通り。はい、出来ました」
抉れた所から土が盛り上がり、元通りになる。そこだけ草は生えて無いけど……。
「あ、ありがとうございます。えっと、お母さんかお父さんの所に案内しましょうか?」
「あー、うん。お願い出来るかな、ここに来るのは初めてで……」
と、タシューという人は頭を掻く。
家に向かいながら少しの間話したが、普通だった。ただ少しでも魔法の話をしようものなら急に暑苦しくなった。
母さんがいつもいる裏庭を覗いたが姿が見当たら無かったので、父さんの書斎に案内した。
「ありがとう、ここまで来たら大丈夫。またあとでね」
と言って部屋に入っていった。……さて、どうしようか。さっきの草原に戻ってもいいけど、またやらかすかもしれないからやめとくか。
よし、部屋で読書でもしよう。読むのは強欲の書であって普通の本じゃないが、そこは気にしないでおこう。本は本だから。
「『強欲の書』……さて、なにを調べるか……うーん、『俺のスキルと固有魔法の詳細』とかでいいかな?」
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スキル――
HP自動回復(小)
休息無しでも自然に少しHPが回復する。
痛覚軽減(大)
痛覚をとても軽くする。
固有魔法――
魔力操作
体内にある魔力を操ることができる。
応用として、使用魔力(MP)の軽減や、身体能力の一時的向上等がある。
強欲の書・討伐の書
それぞれの名称を詠唱すると手元に現れる。効果、用途は主にそれぞれ索引・記録である。
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「なるほど。さっき失敗したのはこの『使用魔力軽減』が原因だとしたら納得だな。同じ量でも何倍の威力になるのか……特大って結構凄くないか? 確か、スキルとかって経験から反映する……よな? 『スキルの入手について』えっと、うん合ってた。ということは、あの文字通り、死ぬほど痛かった経験より、三年間の暇潰しが勝った……?」
ふぅ、と一息ついて横になる。
「寝るか」
不貞寝である。
起きたら朝だった。夕食が……。
という夢を見た。
「レトー、起きてるー? そろそろ夕食の時間だからいらっしゃい」
そんな声で目覚めた俺は夕食でタシューさんがこれから、勉強を教えてくれると改めて聞き、この日から魔法について学び始めた。
「よし! ちょっと暗いけど夕食後の運動にさっきの場所に行かないかい? 君の魔法について知りたくてね。許可は取ってるからね。あそこだったら何しても良いってさ。やっぱり君のお父さんはいい人だね」
「良いですけど、許可なんて必要ですか?」
「いやいや、注目すべきは許可の有無じゃなくて、何でもしていいって所だよ……これで研究も捗るってものさ」
「なるほど。あれくらいだったら結構放てるので別に良いですけど、ちゃんと僕にも教えて下さいよ?」
「ああ、その事だったらちゃんと計画が……ちょっとストップ! 今、あの威力の魔法を複数回放てるって言ったか?」
「ええ。でもあれって魔法かどうか怪しいんでs……」
「よし! 行こう! 今すぐ!」
と、走りだし、片道五分の距離を一分程で到着して、
「早く、早く見せてくれ」
と、言う……正直うざい。
「はいじゃあいきますよー……ふっ!」
昼より込める魔力を減らした為か、辺りが暗くなっているのが原因か、あまり派手にはならなかった。それでも数メートルは削れているのが分かる。
「うーん、いまいち! 次は全力で頼めるかい? 魔力回復薬は持ってるから全部出しきる感じでね」
「本当、頼みますよ? 全力で魔力込めたことなんてないんですからね。まぁ、いい機会なんで僕もやってみたいとは思ってた事が出来て嬉しいんですけど……。――ふぅ、結構魔力を使ったと思うんですけどこれじゃあ魔力より先に腕が限界になりそうですね。多分、MPの半分位が限界になりそうですね」
既に魔力を込めている右腕は骨が軋んでいる音を出している。俺は一度送り込む事を中断して、確認を取り、
「うーん、君の体が優先だからね。無理はいけない、じゃあ十秒後に撃ってくれー」
凄いスピードで走って遠ざかって行く姿を見送る。もう点のようになっている。
「そろそろか……というかあんなに離れていて見えるのか?」
ま、いいか……。俺は、先ほどの魔力を溜めているときにタシューさんが作ったであろう目の前に広がる土の壁に向けて拳を構える。
「はっ!」
と、短く息を吐きながら拳を前につき出す。
限界まで魔力を込め、強化した一撃は衝撃波を伴い壁を突き破り、地面を抉る。その勢いは収まる様子はなく、更に大きく広がり、深く、広くなっていく。
が、不意にドゴォォオオと音が遅れて、来る。あまりの音に俺は耳を押さえて、座り込む。次にギィィンと甲高い音が聞こえ、先ほどの音と合わさり、耳の中を飛び回る。
少しの間座り込み、耳を押さえていたが、やがて音は小さくなっていく。
ガンガンと頭が痛む。音の影響か、魔力を一気に使いすぎたか……どちらにしても、俺はしばらくの間動けなかった。
どれ程時間が経過したかは分からないが、頭を上げると、放射状に広がって抉られた地面が目の前に広がる。草原の端まで大きく抉られたその大地はクレーターと言っていいほどだった。
しかし、その先にピッタリと地面が元に戻っている。いや、削られていない地面が広がっていた。まるで、破壊不可能の壁のように……。
「結界……か……」
しばらく、その光景に唖然としていたが、やがて母さんがやって来て、タシューさんと共に怒られたのは秘密にしておきたい。
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