コネクト  創造する世界

AAA

創造する世界 こっち側の世界

 昔のゲームは酷かった、どれくらい酷いかと言えばR-15のゲームが発売後R-20に変更されるほど酷かった。


 手探りでの開発のため、強制終了は頻繁に起きていた。


『危険と判断し、強制終了しました』


 数年前のゲームによく起きた現象だ。どれくらいに耐えられるかわからないため、開発者独自の裁定で心拍数等を判断しゲームの強制終了を判断していた。


 勿論自分がやってるゲームもそうだ。はじめての戦闘で狼に教われ、即ゲーム終了。戻ったときにはデスペナルティになった時は乾いた笑いが出たものだ。


 痛みに耐えきれず強制終了したこともあった。死に体で強制終了もあった。


 徒党を組んでもなにもしないで逃げ出す人が多かった。だから自分で鍛えるしかなかった。でも何回戦っても勝つことはなかった。


 だから、安全な仕事をした。配達や清掃の雑用を行い。少ない金と経験値を貰い。その金で訓練所に行き少しずつ自分を変えていった。


 訓練所は教えてくれるNPCなどいなく。ただ武器を試し、防御の練習ができるだけだった。そこでただひたすらと武器を使った。


 そうして、無駄があると思ったら、モーション自体を修正していく。長かった基本モーションは分解され、自分独自のモーションを作る。そうして、分解したバーツを組み合わせて理想のモーションを作り、最終的にモーションを指定しなくても体が勝手に動くようにする。


 そこまでやり、レベルを上げてようやく【戦闘】が行えるようになる。当然勝てるわけでもない。


 戦闘を行い、相手の動きを覚え、そのモーションを最適化する。


 それでも無理ならどうやって勝てるかを考え、必要なら運営に訴える。


 そうするとだいたい欲しい機能を作ってくれるのでそれを用いて再戦する。


 そうして、出来上がる【データの重さ】が強さだった。重さがあるプレイヤーはそれだけ対策ができているPCだった。


 当然今のような状態でも出来ることはある。


 あと数秒で作動する魔法を走馬灯のようなスロー状態にし、数秒を数分に伸ばす。


 頭の中で魔法の構築を始める。勿論自分が構築した魔法だ。


 体から色が流れ出す。自分は色魔法と名付けたそれはどんどん上に向かって流れだしある地点で止まる。


 後は脳で魔法を唱えれば……


 爆発した地点の遥か上空にいる。


 煙は上がるが今の状態に意味はなく、相手の動きはわかる。


 周囲に緑の球ができる。念じればそれが透明な黄緑状になり、周囲にまとわりつく。


「これで体の支配権は問題ない」


 代わりに周囲の音は一切聞こえなくなるが、この目なら問題なく対処できる。


 目の前が灰色に染まっていく。今この状態で背景の色なんて必要ない。


 聞こえていた風の音も消え、自分が設定した環境音だけが残る。


 灰色の世界に色が映える。


 その映えた色を自分の銃で着色し色を変えていく。


 赤を黒に、青を黒に、緑を黒に、


 色を混ぜ変色をさせていく。そうして濁った色からは、想定した魔法は出ず用意に避けられる。


 前方以外の攻撃は展開している風に触れればわかる。


 途切れることのない攻撃が流れる。


 音楽家の攻撃は歌だ。歌により魔法を展開し、それを永続的に発動させていく。


 対して自分の攻撃方法は一点型だ。どんな魔法にも対応できるが、威力は低い。装填は早いが、連続して撃てる数は少ない。


 ようは、今のような細かい攻撃では余り役には立たず、時折行われている。大きめの魔法の対処には十分妨害できる。


 つまりこちらは小型の攻撃のみに対処していれば現状を維持できる状態だ。


 360度から襲ってくる攻撃には殆どズレはないが、展開にも限界はある。動きながら、攻撃が薄い部分を突破する。


 当然攻撃には当たる。当たるが掠るだけなのでダメージは入らない、絶対命中用の対策だ。


 掠れば魔法は消える。わざと掠らせ魔法を消し、その合間から道を作っていく。


 相手の攻撃は単調だ。丸い球体が周辺を巻き込んだ爆発か、槍のような形状で攻撃が飛んでくるかの二択だ。だからこそ大量展開できる。


 属性の変化は実際に音を聞けばすぐにわかるが、今の自分なら色の違いはわかる。


 まぁ違いがわかっても、結局やることは変わらないから何も変わらないのだけれど。


 色が変わっていく、青から緑へ。緑から黄色へ、黄色から紫へ、そして紫から赤へ変わる時、視界の変化が現れた。


「んっ」


 視界が変わる。丸と棒状のみに現れる色が、今は粉吹雪のように色が舞っている。


「これは……」


 状態の変化に頭がストップをかけるようにスローモーションになる。


 粉、粉?


 今の状況……、来そうな相手……、そこから考えられるのは。


 自分の正面に、全裸に見える男が現れる。


 魔法よりも早くそいつは近づいてくる。近づけば近づくほど見たくない物が見えてくる。


 格好はパンツのみ、首輪に蝶メガネ。何がいやかって、その三種には色つきな事と、そいつが背負っている羽がそいつの体とマッチしていないことだろう。


 汗のように出す色の飛沫を見ながら、思わず後方へと移動してしまう。


 しかし、まっすぐ来る奴には速度が遅く、追いつかれてしまう。


「ひっさっしぶりーー、スカイおっと今は空海だっけ」


 中に粉がまかれる。


「久しぶりだな、道具係。アカウントは生き残っていたのか」


「うん、うん。あぁまぁ運良くな」


 ? なんか歯切れが悪いな。


「それより余所見はいいのか」


 四方八方からの攻撃は未だに終わりがない……、といっても恐らくダメージは殆ど与えられないとは思うが。


 それよりも、周りが粉のせいで見られない方がやっかいだ。


「この程度の攻撃で倒せるとでも」


「いいや……、しかし【守れもしなかったら少しは入るんじゃないか】」


 ん、ひょっとして。


「火薬じゃないのか」


「ボス相手に自爆特攻はしないさ」


 攻撃も止まっているって事は……


「視界ジャックとシールドの解除が目的か」


「ご名答。それでどうするんだい」


 どうするか……か。


「個人的には、手札は出し惜しみせず出して欲しいんだがね。持っているんだろ。復活+αのあれを」


「あぁ、持ってるよ。でもあれはまだ早いから」


「早いから……どうする」


「こうする」


 手から魔法を繰り出す。繰り出す魔法は属性魔法の混ぜ合わせ。自分からみれば色々な色彩が混じり、最終的には黒色の何かが生まれる。


「昔から聞きたかったんだが」


「なんだ」


「何でヘドロみたいなのにしたんだ。普通もっとなんか……こうあるだろ」


 あぁ、これヘドロに見えるのか。


「そうだな……、知りたいなら途中まで生き残るんだな。多分今回はちゃんと種明かしするだろう」


 粉が手の黒い物に飲まれる。


「この風は消えないのか」


「まぁ、後でな」


 黒い球体を外に放り出す。


 その直後球体めがけて光線のような何かが発射され飲まれていく。


「あらら、あれ終わったらしばらく休憩しないといけないのに」


「まぁ数十分歌えばね」


 寧ろそこまでよく歌い続けたもんだ。


「それで手加減は? 」


 ちらっと蝶メガネでこちらを見る。


「一緒に落ちるか」


「それはごめんだね」


 お前の粉化にも対応策はあるが、まぁここで出さなくてもいいだろ。


「ならその状態を維持し続けながらお仲間の退出を受け入れるんだな」


 まぁ時間は与えたんだ。何か来るんだろ。


 手を上げた後クイッと下げれば、先ほどの光線で大きくなった黒い球体が、下へと落ちていく。


「遅いな」


「周囲を巻き込みながら落ちてくからな」


 周囲には歌の余韻の色鮮やかな空間が広がっているが、それが球体の近くに行くと色彩が奪われグレーの色に戻される。そして球体は大きくなる。


「これ球体の攻撃に巻き込まれないのか……って上に上がってるな」


「因みに、今から上がろうとしても飲まれるぞ。最も空中戦メインの奴なら逃げられるかもしれんないが」


「何回成功した? 」


「6割くらい。ここ一番の時が多いからな」


「悪運が強いな、いや逆境に強いのか」


 さて無駄な話もそろそろ終わりか。


 何もなければこれで脱落だが。


「当然そうはならないよな」


 大きくなった球体に線が入る。左右に分かれた球体は、また分断され。その後はよくわからなかった。


「なんだ、はやいお出ましじゃないか」


「……てことは」


 ここに来るまでの状況を確認する。


 上空に、画面が出されこちら側がボロ負けしている状況が映し出される。


「おぉ、やられてるやられてる」


「まぁ、あいつらが来たらこうなるよな」


「ならこちらに来る奴も増えるのか」


「いや、それはないだろう。無駄に謎解きをするか、一番高い難易度じゃないとこれないようになってるから」


「うわ、面倒くさそう」


 そりゃあ一応3日あるからな。


 そろそろ、あれも来そうだしな。


 アラートが流れる。なるほど、あいつらがきたこのタイミングか。どうやらあいつらの中にも協力者が居たのかな。


「なんだ、なんだ。おい空海」


「どうせ、すぐに声明が出されますよ」


「あー、テステス」


 聞いたことのない声が聞こえる。


「たった今ウィルスをばらまきました。このウィルスは感染後、消滅するデータまるごと消滅。つまり植物人間となりまーす」


 はぁ、死ななきゃ問題ないのか……


「温くね? 」


「反応がそれかよ」


「勿論ワクチンがありまーす。ただし条件がありまーす」


 癇に障る言い方だな。


「イベント主催者のスカイアースの個人情報。後1兆ぐらいもらえばまぁ考えてあげまーす」


 いつの間にかモニターはジャックされたらしく、画面にはよく分からない人物が映し出される。


「さぁさぁ、どうします払いますかー、それとも死にますかー」


 気付けば画面が俺の方に向いている。笑い声も甲高いし、不快だなこいつ。


「どうしましたかー、それとも誰か殺した方がいいですかー」


「はぁ」


 ため息しかでない。ついでに画面向けに合図を送る。


「3分以内か」


「何を言ってるんですか? 」


「業務連絡だよ……それで、あぁ」


 責任の擦り付けしないといけないから、ネタバレは出来ないのか。


「つまらん」


「あなた、状況がわかっています」


「あぁ、理解できないからもうちょい状況を教えてくれないかな」


「いいんですかそんな態度をとっても」


 パキっと空間が割れる。割れた空間から雪のような球体が降ってくる。


 アラームは鳴り終わり、また空間の割れる音が響く。


「私だけがワクチンを持っているのですよ」


 当然こちらも降ってくる。


「キコエてイマ……アれ」


 あー、やっぱり不正してたのかつくづく分かりやすいなこういうやつらは。


「何いってるかわからないぞ」


「ナぜ、ワタしが」


 そりゃ、そういう設定にしたからだよ。


 さて除菌は終わりだ。


 空間の割れが大きくなる。


「この毛むくじゃらはなんだ? 」


 生命体であることはわかるのか……改良しないとな。


「不正及びウィルス対策」


「ナノマシンみたいなもんか」


「おおよそそれで正しい」


「それで、なんで不正者はああなるんだ」


 ……まぁいいか。


「【最適化】と調整の結果だ。【データの中身を調整するからな】まぁなんだ……壊れたから一旦ソフト外してフーフーする感じ? 」


「よくわからんし、フーフーした年じゃないだろ」


 飛行機にはたまにあるんだよなぁ、特にファーストクラスは何故か多数の種類がある。


「家庭の都合で遊ぶ機会が多かったんだよ」


 今思えば、パイロットの父なだけでファーストクラスの子供と遊んだのって不味かったんじゃないか。


「あぁ、海外と行き来してたんだって、良くゲームできるな」


「まぁ、監視がつくけど悪くないぞ」


 まぁ監視がついたのは海外ではなく、予備校に卒業した際だけれどな……そうだよな。


 いけないな、幻聴や幻覚のせいでネガティブになっている。


「……それで話を戻すが、調整でなんであぁなるんだ? 」


「不正のステータスはどうやってできると思う? 」


「あぁ、そりゃあステータスの改変だろ」


「じゃあ、そのステータスは【何処に調整されるんだ? 】」


「何処にって……」


 そのプレイヤーキャラには行かないだろう。そこから改変させたんだ。


「いや待て、バフはあるだろ。そっちで改変したらわからないだろ」


「問題はな、【バランスがとれていることだ】昔のゲームでSTRを極振りができない原因は何だった? 」


「筋力による触覚の変異、俺がマッチョマンになるのを諦めた理由か」


「そういうこと、つまり調整はチートの状態に戻るから」


「体が崩壊……というか制御できずに体が崩壊すると」


 おまけに、ダメージは受けないから死ねないと。


「まぁ、不正者にはいいお灸じゃないのか」


「さぁ、どうでもいいことだな」


 空間は割れ続ける。そうして今度はピッピと一定のリズムで音が鳴る。


「今度は何だ? 」


「何、さっきの馬鹿のせいでこちらの時限爆弾が作動したんだよ」


「爆弾? 」


 さてそろそろか。


 少しの目眩が起きる。


「がっ」


 初めての体験か、道具係の体制が崩れる。それは他のプレイヤーも同じだ。


「今度は何をした? 」


「【時間軸】を戻しただけだ」


 空間が割れ、時計の文字が読めるようになる。


「19時48分35秒、半日程度楽しんでくれたかな」


「何を」


「これ以降はリアルタイムでの行動となるのだよ。目眩は体感時間の変化についていけてないだけさ」


 割れる音は止まらない。


「この数字が0時0分0秒の時、この世界は崩壊する」


 正確にはイベントデータのフォーマットが終わる。


「止めるには俺を倒せばいい簡単だろ。戦闘終了時間は【終了1時間前】以降は【プレイヤーは追い出され】この場所のプレイヤーは自分のみとなる」


「お前は何を言っているんだ」


 さすがに理解しようとは思わないか。


「【俺を倒せなかった場合は俺はゲームと共にデリートされる】」


 まぁ、復活はするが。


「本気で言ってるのか? 」


「俺の体はイベントのキーとなっており、キー以外に終了にはできない」


 そこだけは持てる全てのセキュリティとした。


 その言葉を聞き、道具係は下を向く。


「お前は……」


 賭けてもいい、その表情は


「つくづく馬鹿だな」


 空間に粉が撒かれる。


「いいだろう、適当に遊ぶつもりだったが気が変わった」


 そこには先ほどの鮮やかな粉の色とは違い、黒く、赤く、くすんだ色の粉が辺りに撒かれる。


「それが効くとでも」


「何、決意表明という奴だよ」


 道具係も地上に降りる。


 あまりにも相手よりも遠いので、ある程度近づく。


 その間に道具係が今の状況を話しているんだろう。


「馬鹿ですか貴方は」


 音楽家の声は良く響く。


「馬鹿で何が悪い」


「死が怖くないのですが」


「死なん」


「死ぬんですよ、データが消えたら」


 その言葉には悲しみの声が聞こえた。


「だったら、生きてたら。現実でリアルサーカスな」


「貴方は……えぇ、愚問でしたね。馬鹿は馬鹿だから馬鹿でした」


 酷いいわれだ。


 こういうやりとりの中でも、時計の音は止まない。


「さて、それじゃあ。続きをやろうか」


 相手は、過去最強に元同僚2名。


 対してこちらは、補正を入れ感覚を戻した俺だけ。


「さて、何時間持つかな」


 できることなら3時間ぐらいはこの体で持たせたいものだ。

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