コネクト  創造する世界

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創造する世界 開幕

 ピピピと音がなる。その音に気付き目が覚める。


 顔を洗うこともしなければ、服を着替えることもない。


 ようやくなれた4本の足で移動し、現在の状況を確認する。


「……あぁ、今日か」


 講義以外はずっとここに居たから日付の感覚がなくなっていた。


 さて、【ちゃんとうまくいくかね】


 4本足を2本足に戻し、形を人に戻していく。


「おっと」


 膝から落ちてしまう。


「参ったな」


 2本足しかないから歩くのが難しい。


 よちよち歩きもできず、とりあえず壁を作り、作った壁に手をかけ、たとうとする。


 しかし立てない。腕への力の入れ方がわからないのだ。


 仕方がないので壁を背にし、体を預けることでようやく立つことができた。


「さて、どうしようか」


 一応、ボスとして君臨してるんだし、流石にハイハイは不味いよな。かといって今まで頑張ってきたあの感覚を忘れたくないし。


「……しょうがない」


 なんとか体裁が保てる方法を模索するか。


 まぁいっても感覚を忘れないなら、三次元攻撃。つまるところ空中戦闘しか考えつかない。


 とりあえず、足に魔法を入れ。中に浮く。


「よし」


 こっちはまともに動かすことができる。


 次に移動か。


 体勢を変えないまま前後左右に移動する。


 これも多少は問題があるが十分及第点だ。


 後はこれの速度をあげていけばおおよそ大丈夫だろう。


 壁を消しまた、なにもない空間に戻す。


 上を向けば、今イベントに挑んでいる挑戦者達が見える。


「あーあ」


 もう数十分はたったはずなのに、いまだにスタート地点から離れた人はいない。


 現れては消され、現れては消され。まるで巻き戻しの映像のように同じ光景を繰り返していく。


「駄目だなありゃ」


 まるで、高難易度のイベントのように動いている。スタート地点は安全で、先は見渡せて、攻略の鍵は置いてあるし、知らせる要素もある。敵も最初は弱く、避けられる攻撃をする。そんな何処にでもあるゲームだと思って挑んでいる。


 だから、【最初のラグで鈍り、そのままなにもできずやられてしまう】


 移動もできず、動けず。叩き潰される。


 移動魔法よりも回復魔法や防御魔法を使おうとし、そのままやられていく。


 いつも通り攻撃しようとして、攻撃できずにやられていく。耐久が強いやつは生き残るがなにもできないまま終わっていく。


「オートで遊んでることが目に見えてわかるな」


 大量に存在させることにより、遅延を発生させ。仕様をセミオートにすることでオート行動をできなくする。


 すると、自動ガードや自動回復ができないので、それに頼っているのはそこで脱落する。


 味方も勿論質が悪い、こちらはまともに使えるの鉄塊しか使えないので、当然、前に出てくるのは蟻の大群。今回は三種類の蟻を作り、対応させている。


 耐性はないんだけどな。即死やら感電やらやりようが幾らでもあるんだがそれを試す前にやられていく。


 まぁ暫くは放置していても大丈夫だろう。


 んじゃあ調整の続きを始めるか。






 ……ピピピ


「ん、もう2時間たったか」


 さて状況は……と。


 状況は……変わらずとはいかないか。


 どうやらごり押しで突破したのが出てきたみたいだ。まぁ最も


「あれほど不正は使うなと言ったのにな」


 どうやら突破組の殆どは【不正組】みただが。


 不正組におかげで突破できたのが数十人攻略して居るぐらいか。


 天井を見る。空にはこれまでの挑戦者が見える。


「2時間で10000人か」


 23/11318の表記がでてくる。分子が今まだ生き残っている数だ。


 招待状の数は、今回のイベントやっている人の人数……最大で10万人。その中でもう1割の1万が挑戦し、残っているのはほぼ0。


「やっぱ暫くは、出番無しか」


 まぁそんなこととは思ったが、そもそもあと何人参加するのか。


 あいつらは確定として、まぁ後3万ぐらいは来るのかな。


「後70時間か」


 一応、あれが発動したら、リアルタイムと同期するから、まぁそれでも後10時間以上はあるか。


「さてどれくらいであいつらは来るかねぇ」


 もしかしたら、時間制限の短縮の方が先かな。


 そうこうしている間にも、挑戦が続く。


 何人が先に行くが、すぐに止まる。


「昔ながらのシステムの有効だな」


 やっていることは単純、ムービーシーンを入れて、各チートに合わせて調整しているだけだ。


 ステータスは各ゲームとは違うから調整を行う。FPS等は火力を高くし、体力は低いが自動回復を追加したり、パズルゲームなどは詠唱がパズルになり、どの相手にもダメージが与えられるようになるなど各ゲームによって傾向がある。


 推理ゲームなどでもできるが……まぁ規定時間までやっている奴なんて居ないだろ……多分。


 後は、作った規定値よりも高い、ボス用の規定値を作り。オーバーフローするように限界の値を作り、更に不正用にもう一個上を作れば不正対処のできあがり。ムービーでステータスの最大値を解析して不正値なら動画をストップ、いやムービーが止まる仕様にした。


 またムービーは【無敵】、自分で操作もできない。不具合はあり得ない【その状態以外では発生しないから】まぁパラメータ弄くる系の不正が大多数だからこれだけで大部分の不正は防止できる。


「まだ増えるな」


 いっそ、ラスト用に調整できるように何かやってみるか。腕四本は、肩に装備品つけて……足は魔法で感覚共有して……






 ……


「まぁこんなものか」


 緑の渦を足下に出し、両肩には銃。


「本来は手を使いながらの銃にしたいが」


 さすがにそれは意味を問われるだろう。この状態で腕を追加するのは不自然だ。


 時間を確認すれば、残り64時間。8時間が経った。


「さて、あちらの方は……と」


 231/38651


 あれから更に増えて、挑戦している。問題は……


「何人まともなのが居るかな」


 画面を確認する、前見たときも更に動かない奴が増えたが。


「うん」


 数人は、ムービーを乗り越えた人たちが居る。


 どれも攻撃に当たりながらも前に進む。


 最低難易度の攻略かな。


 一応難易度は作った。最も、難易度が高くないとこちらに攻撃すらできない仕様だが。


 逆に低難易度はそこまでの行き先に優遇されている。最もその結果ダメージは与えられない敵もいるし、戦闘にできない敵が居るから一長一短だ。


 ……にしても。


「4万近く挑んで、やっと気づくのかよ」


 よほど自身かなのか。まぁその他大勢は別に気にはならないんだが。


 どれくらいが挑戦するか知らないが少なくとも、挑戦権の4割はもう挑んで終了している。


「一応は数人でも到達できるようにしているが」


 それは、金剛とか俺とかロックとかを想定しての難易度だぞ。というかPTを組むとかそんな概念はないのか。


「はぁ、はぁ」


 とどうやら、到達できた人が現れたようだ。


「お疲れさん」


 ビクッとこちらに気づく。


「スタミナの概念があるゲームは久しぶりか? 」


 ずっと走ったのだろう。立ち止まれは回復できるのに、ただ走り続けたのか。


 いきなり後ろに下がり、武器を構える。


「そうやって進んできたのか? はっきり言って【オートの連中】なら武器なんて構えずに走った方が楽だぞ」


 はぁはぁと、息を整えないまま、こちらの操作を伺う相手には悲しさすら見える。


「なるほど、これは酷い」


 仕様を知らないというか、遊び方が浅いというか。


 なんというか、子供のわがままを全て許可した結果何にもできなくなった? そんな感じか。


「構えるだけで攻撃もしないのか」


「はぁはぁ」


 多分話さないのではなく話せないのだな。


 スタミナを回復させずにいきなり武器を構えたいやそれすら知らないのか。


 とりあえず、武装解除を試みる。といってもそんなことできないのでとりあえず武装解除として相手の武器を弾く。


「これでどうにか……」


 あぁ、こいつ【解析】したな。


「これだからあっち側は」


 幸い、威力は弱めで行っている。まぁすぐに倒せば後遺症程度で行けるだろう。


「最初からこれとか最先が悪い」


 最初ぐらいは情報でも渡そうかと思ったがどうやら無理なようだ。


 そうして、なにもできないPCを処理し、次を待つ……


「こないな」


 おまけに入る人も減っている。


「あれの責任か、それとももう人切れか」


 なんにせよ、まだまだ暇そうだな。


「しょうがない、寝るか」


 恐らく後数時間はろくなのは来ないだろう。


 一応、AI搭載のマンティスを置き、もう一度寝に入る。


「こんなことなら【停滞】も覚えておくべきだったな」


 使い道ないからなあれ。誰が好き好んで【自分の感覚を鈍くし時が経つのを早くする】スキルなんて組み込むなか。


 今なら少し使い道はわかるがそれでも組み込もうとは思わない。


「今更必要もないか」


 今更この待ち時間にとやかく言うつもりはない。


 自分が上になったつもりはないが、少なくとも今このときはまだ上に居ることを確信できている。


「セミオートはできるはずなんだがな」


 技術は批判を浴び、違いはスキルとエフェクトのみ。威力はインフレ気味に上がり、特化以外に生き延びる術はなし。


 守りはただ構えるだけ、前衛は武器を振るうだけ、なにもしなくても攻撃を回避し、照準を合わせなくても弓や銃が当たる。


「本当に嫌になるね」


 大部分のゲームがそれで、そうして、飽きられていくなんて。


 ユーザーの批判でグラフィックの違いしかないと言われる。技術が不正だと淘汰されるRPGの結果、それなりの難易度にしただけで不正キャラしか生き残らないイベントになってしまった。


 そうではないだろ。


 攻撃は弾き。時には防具を捨て走り抜き。時には足を止め状況を判断する。


 後衛だとか前衛とか関係なしに周囲を確認し他人が他人をカバーする。


 一人が駆け抜けるならその一人を集団でボコり規律を守らせる。


 それができないならはじめから一人もしくは少数で挑み、少人数に対する弊害は甘んじて受け入れる。


 それがRPGってもんではなかったのか。こいつらは半年間なにやっていたのだ。


「少なくともあいつらはそうじゃなかったんだがな」


 むしろあいつらが異質なのか。


「やれやれ」


 本当につまらないゲームだらけになったな。


 聞いている環境BGMが変化する。これは……クラシック音楽?


「全く嘆かわしいですな」


 その声にニヤッとする。どうやら、招待客が来たようだ、


「これが大多数とは、数年前のゲームなら考えられませんな」


 その声はなんともない声に聞こえるが、不思議と耳に残る声だ。


 AIのマンティスが攻撃に向かう。


「こんなもの」


 大きく剣を上げ、それを振り落とす。


 それを回避しようともせず。


 腕を振り上げるだけでそれを止める。


「小盾の練習にしかなりませんのに、なぜこれごときが突破できないのか」


 そう、自分もその認識だ。


「あぁ、もう現在のRPGにはアクションは消えていたのですか失敬」


 もう片方の手で振り下ろされる剣を、ひょいと軽々しくかわす。


「ラグがある分はガードのタイミングもかなり簡単なはずなのに、ガードすらしない。いや盾の使い方を知らないのか」


 止められた2本の剣を今度は両方で振り落とす。


「ただ、足に力を入れて、相手の攻撃に合わせて腕を振り上げる。これ相手ならこれだけでいいのに」


 そういうと、片足を下げ、両腕をあげる。


 ガキンという音と動かなくなるマンティス。


「軽いですな」


 後ろに下がり剣が落ちる。


 その動作に拍手をあげる。


「コネクトでは2度目かな」


「そのようですな、【音楽家】招待に馳せ参じました、上からは【拘束されてるから遊んでこい】とのこと」


 パチンと音を鳴らせば、マンティスは竜巻で刻まれる。


「攻撃は音のみ。音でだす魔法を軸にしております」


 竜巻がドンドン赤く燃え盛る。


 轟音が鳴り響く。目の前には自身が出した竜巻をだす演奏家。


「貴方相手にはいささか実力不足ですが、まぁそれはそれ。時間稼ぎなので存分に奏でてあげましょう」


 演奏家を中心に床が抉れる。


「久しぶりに見たな、その実力の示唆」


「団長は飛びますし、猛獣使いはそれほど使いませんからね」


 何が起きているかと言えば、容量が大きいんで代わりに【周囲のオブジェクトが消されただけだ】


 昔のタイプは、色々言えば色々答えてくれたからな。それこそ独自システムも何個もつくっていただろう。


 そうやって自分オリジナルを作ることにより、容量はかさんでいく。そしてある地点を境に、周囲に影響を与えていくようになる。これがそのゲームにおいての【強者の演出】であった。


 当然、これは運営の作ったボスも使ってくる。封印していたシステムを解放や形態変化などで今のように地面を抉っていく光景は、中学時代は憧れたものだ。


「そちらは何もなしで」


「いや、幾つかは解放してるよ」


「ですが、それにしてはきれいすぎませんか?」


 音楽家は自分の足元を見る。そこには抉れていない地面があった。


「開幕はこれくらいでいいんだよ、まぁこれぐらいは使用か」


 目を閉じ、システムの1つを解放する。


 次に目を開ければ、視界が、赤に、青に、黄に、緑に、


 紫に、茶に、金に、銀に、黒に、白に、


 海のような透き通る青も、血のような赤黒く濁った色も、


 自分が確認できた全ての配色を経て、また元の色の世界へと戻る。


「白眼いや、パレットでしたっけ? 」


「昔の名前だな」


 見渡せば、様々な色が増えている。


「奇襲は……無理ですか」


「案外通るかもよ」


「いえいえ、そんな安易な誘導には載りませんよ」


 先ほどよりいっそう、地面が抉れる。


「ただ、出し惜しみをせずに殴る方針に変わっただけですか」


 この、行き着く先の方向性。スキルの振り方


 フフッと笑ってしまう。


「やっぱり、あんたも同類だな」


「類は友を呼ぶ……でしょう」


 その言葉で、目の前に強烈な光の色が生まれる。


「では、そろそろ始めましょうか」


 後ろも……ダメってか、床近くは全部ダメだな。


 じゃあ……


「さて団長に変わって、音楽家が開幕の合図を申し上げます」


 まず、体が動かない。


「今宵のサーカスは、泣きあり笑いありの大演目」


 すっかり忘れていた。音を操るのは人も操れるんだった。


「それでは遅くはなりましたが」


 光が大きくなる、不味い避ける方法が思いつかない。


「これよりサーカスを開演します」


 その後すぐに、光り輝いた色は爆発した。









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