コネクト  創造する世界

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創造する世界 クリエイトワールド

「バックアップは終了した」


博士の声が聞こえる。こっちの博士の部屋は広くPCのような機械はない。よくわからない設備と、透明な壁の先に見えるキラキラと光る何かが見える。


「あぁ、言われたとおり【記憶の改竄を行うから】動かないでくれたまえ」


よくあるような、拘束具で体を固定されてただ前だけを見る。


「この拘束には意味はあるのですか?」


「ん、意味はないぞ。ただやりたいからやってるだけだ。ちなみにこんな機能もあるぞ」


「イタタタタ」


体にかなりの痺れがくる。それなりに痛いけどよくある器具に比べるとかなり弱めに設定されていると思う。


「他にもくすぐり等のお約束一式は詰め込んだぞ。まぁ使う機会はないがな」


自分の顔の近くに、マジックハンドのような手がクネクネして動かされる。


「まぁ、お約束はここまでにして。そろそろまともな話にしようか」


だったら、そのクネクネは止めてくれ。


「まずイベント名だが創造世界クリエイトワールドはいいと思うぞ、少なくとも前のイベント名を止めた社員にはボーナスを上げたいな」


「前の名前もよかったんですけどね」


泡夢バブルドリームなんて漢字からすれば、如何わしい名前に決まってるじゃないか、100%  R-18を考えてのイベント名だろ」


「まぁ、そこで稼がないと利益は出ないですし」


実際にR-15とR-18は趣旨は一緒だが内容は全く異なっている。R-18は【負けるの前提の内容だし】


「まぁ、R-18はR-18でいいだろ。そっちだけ、泡夢にしとけ。あれに溺れる奴はいずれ他で溺れる。でだ、R-15にしてはどうするんだ」


「どうするとは?」


「わかってるとは思うが、【破壊工作はされるぞ】それぐらいのヘイトは溜まってる。不正プレイヤーはイベントをぶち壊し、潰された企業は破壊工作をし。敵対組織は君を必死に狙うだろうそれこそ命をかけて」


「承知しております」


まぁ、後は今まで動かなかった奴らが動くかどうかだが・・・。多分幾つかは動くかもしれないな。


「まぁ、ゴミが増えるなら僕はどうでもいいけどね」


透明で光で反射する何かを貫いて、博士は輝く何かを手に取った。


「現実のゴミはゴミだが、この世界のゴミはおもちゃ箱だ。文字、画像、動画、最近にいたってはモーション、感情、そして記憶。捨ててる物だから色々しても問題なし。いやぁいい世の中になったな」


「【感情の復元?】そんなことできるのですが?」


「簡単に言えば、残照の抽出かな。現実で言うと自縛霊みたいな奴だ」


輝く何かが炎のようなものに変わる。色は極彩色。中心いや1部分だけ色濃くなっている。


「霊体が人魂とはよく言ったものだ、この形が一番安定した」


「それが感情なのですか?」


「いかにも、どうせその体も無くなるんだ、体験させてやろう」


極彩色の炎が自分の体に入る。


・・・何も変わらない。


「何も感じませんが?」


「当たり前だ、他人の感情なんてわからないだろ。所詮他人は他人、【強い刺激】でもない限りそうそうかわりはせん」


そういえば、いつも使っているのは強烈な記憶だけだったが。


「たしかにトラウマのフラッシュバックとか、激痛とかしかフラッシュバックしてませんね」


「それは感情ではなく【記憶の復元だ】自分の記憶を他人に復元させているに過ぎない、感情というのはこういうものだ」


博士は、3匹の犬をだす。


「この中からどれを選ぶ?」


何の代わり映えしない犬を3匹出されてもな。


少し考え、右の犬にした。


「右のそう、白い犬です」


「何故白い犬を?」


「さぁ、ただ選んで見たですけど」


「それでも何かしらあるはずだ」


「しいて言うなら・・・」


白い犬を見る、視線が行くのは鼻だ。


「鼻ですかね?」


「よしそれじゃあ、外すぞ」


博士の手が自分の体を貫き、先程の炎を取り出す。


「ではもう1回見てくれ、白い犬に何か感じるか?」


白い犬を見る。先程感じていた物は何も感じない。


「いえとくに」


「鼻はどうなったんだ」


白い犬の鼻を見ても、なにも感じない。


「特に何も感じませんね・・・これが?」


「感情の一部なのだろうな、もっと言えば【深層の記憶】強烈なものじゃなくても、それを深層に保管しとけばそれを重要だと脳が認識し、大切にする。先程のあれはなんであれ真相に何かあったんだろう。まぁあくまでゴミからの復元からだから、断片かつ少し動かすぐらいだろうがね」


抜いた炎をまたバラバラの輝きの何かに戻し、外に流す。


「覚えておくといい、【自分の感覚に違和感がなくても深層には影響してる可能性はある】」


「対処はできるんですか?」


「感情を消せなんて人に生まれた以上無理だ、だから【同じ事をするしかない】感情を放出する。【感情を理解して不純物を取り除け】勿論間違えると死ぬ可能性もあるぞ。自分を投げるってことだからな感情を放り出すってことは」


外にはバラバラになって光輝く幾つものものがあった。


「あぁ、他にも他を寄せつかせないのも1つの手だ、君もよくやるだろ」


「えぇ、行動を制限するには良い手ですからね」


「それで欲求不満に為るんじゃ、意味ないけどねむしろマイナスだ」


「むぅ」


それを言われると・・・つらいな。


「全く、【強いやつには勝ちたいのに、危険はしたくない】だから狡い手を使って嵌めてどうしようもないときだけ全力を出す。はじめから全力で戦っていたら満足できていたんじゃないかな」


「・・・」


「危険になりたいなら、危険な行為をしなさい。観察せずに戦え安全対策を無くしなさい。プレッシャーをかけなさい。それだけで勝てなくなりますよ」


まぁ、それはわかってる。わかってるが保険はかけてしまうし観察はしてしまう。


「それを含めて全力じゃないんですか?」


「お前がほしいのは【ギリギリの勝利だ】なら演出でもいいじゃないか。だから【イベントにも後だしが許されてるんだろう】予定調和が崩壊されることを期待して」


その言動にカチンと来てしまうが。反論はできない。その意味も内包してるからだ。


「まぁ、どこかが壊れているんだろう。それなが治ろうが何処だろうが知らないしわかりなくもない。そのお陰でこの領域に達してる可能性もあるし、できれば方向性を変えてもらいたくもない。まぁ用は」


自分の体から輝く何かを取り出し。それをこちらに投げる。


「君には死んで欲しくないんだ。被検体としても鑑賞対象としても話し相手としてもね」


博士がニコッと笑う。投げた輝きは体の中に入る。


「まぁ、願掛けみたいなものです。何も起きなければそれでよし」


「起きた場合は何か発動すると」


「まぁ、後押しぐらいですけどね、しかしそれが明暗をわけるかもしれない」


まぁ、保険として思っておけばいいか。


「まぁ、その記憶も消えるんだけどね。安心して必要な部分は残しておくから」


「あっ」


そういえばそうだった。記憶消されるんだっけ


「では、また。できればイベント終盤でくることを願うよ。あっせっかくだし笑いで行こうか」


「ちょっと」


博士はにやっと笑い、ワキワキしたマジックハンドがこちらを向く。


「では存分に笑ってくれ」



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