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仮想と現実  2日目  感覚

人は刺激がないとおかしくなるものだ。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、この中でどうにかなりそうなのは聴覚や触覚だろう。臭いなんてものは常時出せるものではないし、視覚を新しく作り出すなら、自傷などを行わないといけない。味覚はそれこそ無理だ、目の前で食べられるものなんてない。


本来、この状態で前日の対話の状態。モーションもしゃべることもできず、ただ会話のみする。それも、一定のことしかかえさない人形で……、恐らく三日ギリギリまで同じ事をやっていたらきっと壊れていただろう。


だから、二日目のあれはかなり楽だった。敵にだけ集中し倒せばいい。頭を働かせ、五感を使い行動をする。自分の強さを調整すれば、三日は遊べるだろう。


無傷の状態の彼を呼び出し、再度戦闘を行う。今度はレベルを下げ、勝てない状態で戦う。


攻撃が目の前で空を切る。風圧で体が吹き飛びそうになる。


相手は単純にナグルだけの相手だったらしい。ただ硬く、ただ力任せに殴り、ただ暴れる。大怪我でも瞬時に治し一撃必殺にはカウンターを与える。なるほど、普通に戦うならばかなり大変そうだ。


ドシン、ドシンとただ相手の床を殴る音が響く。攻撃を掠りでもすれば瀕死になるだろう。攻撃に意味はなく。勝てる可能性など、万に一にもない。


体を動かし、徐々に補正をなくしていく。補正を消すたびに、体は脆く、反応は遅く、味わう恐怖は増えていく。


一撃、一撃の風切る音が大きくなった気がする。攻撃等の行動は恐怖にかられ選択できなく、回避に至っても先程までの余裕はなくなり、余分な動作が増えていく。


一撃一撃で心臓が大きく稼動する。一歩間違えは死だ。恐怖にかられ、碌に行動ができないまま、時が過ぎていく。






……
何時間たっただろうか。徐々に戦いに慣れ、余裕が出てくる。少し少し体を弱らせていき、限界まで来ても数時間もたてば慣れてしまう。体に疲労を与えたらそもそも死んでしまうので、これ以上の弱体化はできない。


慣れてきたので、いったんあれを倒してリフレッシュを行う。


「……こないな」


流石にやりすぎたのか、結構な時間がたったはずだが彼女は来なかった。いやこれの策略の一つか……


「まぁ、何時かはくるか」


そうして、刺激がなくなれば。先程のあれを呼び出し、刺激が薄れればいったんやめて、余韻に浸る。


繰り返し、繰り返し行う。パターンに飽きたなら、勝てるような調整を行ったり。あえて強化してギリギリの状態を作り刺激を与えていく。


「……」


長い、長すぎる。来る気はないのか……。


最初の方に考えていた、この空間に閉じ込める方針にして、疲弊した時に狙うつもりなのか? いやそもそも何かのアクシデントでこれないとか……


ステータスバーを見る。ログアウトの項目は灰色に塗りつぶされており選択することはできない。


流石に何時かは来るとは思うし、帰れるとわかってはいるが……それに【時間がおかしい】


ステータスバーを確認する時刻は11時、起きたのは8時、彼女が来たのは10時、事が終わってまた戻ったのは10時40分


あれだけしてまだ20分か体感的はもう半日近くたっているように感じる。


時が進まない、バーをみても秒が進んでいるようには見えない。システム上のものだから時間に間違いはないだろう。そうなると考えられるのは自分に起きてる状況であり、考えられるのは。


「幻術……か」


確か、あまりにも時間軸が変わる場合、幻術と形で動くらしい。詳しい事は不明だ。


どのような形で頭の負荷を減らしてるのかもわからず、人体への影響がどれくらいあるかもわからない。しかし現状解く方法も思いつかない。


「時ならば何とかなったけど、幻術だからな」


やり方と考えられるのは、陣地作成の要領で自分の空間を作り時間軸を合わすことだが……そもそも、ここの空間を変えたところで現実が変わるとは限らない。


同様に感覚を鈍らせて、体感時間を早くしても効くかどうかわからない。


「まぁ、念のためやってみるか」


ただ響く自分の声に自分で頷き、作業を行っていく。






……
結果はどちらも失敗に終わった。こうなると思ったが実際に失敗すると思うところがある。


こうなるとできることは、最初にやったように何らかの条件でとくしかない……


何をして、戻したんだ?たしか、NPCのエネルギーを、馴染ませたら解けたんだよな?


……【エネルギーの爆発?】可能性は低いはやってみる価値は……ないな、反動でなにも出来なくなったらそれこそゲームオーバーだ。


ならどうする?相互認識の解除か? いやそもそも、相互もなにも一人しか……


辺りを見渡してみる。確かに周りには気配もなければ何もいない。


では自分の視界から離れた領域は?そもそもここはどれくらい広いんだ?端はあるのか?確認したのか?実は結界の中とかそんな落ちではないのか?


「確かめてみる価値はあるか」






……
「あった」


魔術的な要素の何かに反応があった。何かはわからない。それは付近にはなく、矢印でその場所が示されているだけだ。


指針は斜め上つまり空に向かって伸びている。なにかはわからないがどうやら空になにかあるらしい。


さてどうする?ここを動くって事は、即ち【すぐに発見される場所から離れる】と言うことになる。


仮にもし本当に機器故障で入れないとしよう。通信は遮断されこちらの座標もわからないとして。ここから動いたら、救助は来てもらえるだろうか?そもそも、この矢印すらも幻で基点からずらしたいだけの罠じゃないだろうか。


目印をつけたら残ってくれるだろうか?自分の位置がわかるものは?矢印が消えたら?


ネガティブな思想が頭に巡る。いつ戻るかわからず、何ができるかもわからない。


答えは見つからず、ただ時間が過ぎているように感じる。しかし、時間を、確認しても分針は動いておらず、多少秒針が変化したぐらいだ。


「あぁ、駄目だな」


ぽつりともらしてしまう。やはりこういう環境にはなれない。


理不尽を潰すのは好きだ。好きだと思わないとやっていけない。どうしようもない環境に陥った時に、自分ができることなんてたかが知れてる。


怒ろうが悲しもうが状況は好転しない。ならば開き直ってこの状況を楽しめるよう考えていくしかない。何かに思考が囚われてるわけでもないんだし。


「まずは幻術について」


これが幻術と仮定しよう。では幻術とはなんなのか?


「最初の発言を考えると……」


確か贄の初日でヤーヌスの贄になった時だよな。そこで数日間の体験をしたが、実際は一瞬でそれを話したら幻術との扱いを受けたんだよな。


つまり幻術は【相手が認識できなくて】【自分は認識できる】いや違うかヤーヌスは一緒に体感したはずだ、【特定の人物が認識できる】なにかということになる。


では、違いは何か?それは【時間感覚の違いだ】


単純に他と自分の感覚が異なっているに他ならない。つまり幻術とは、【ゲーム内においての超反応にほかならない】今回で考えれば、だいたい36倍ちかく体感で長く感じている。


では何倍なら幻術になるのか?これは後で考える。時間なら恐らく管理者のシステム描写が追いついていないのだろう。戻ったら実験でもしよう。


「ところで、なんでこっちの時は働かないんだ」


普通なら働いても良いはずだ。いや違うのか。【実は機能してるのか】


「働いてるから……今動けているのか」


理由は召還した時計だろう。この時計は、過去に戻れるが時は常に一定に進んでいる。ストップやら再生やらも許可しない。ただ一定リズムで時を進める。そして自分の体も普段と変わらず時を刻む。ようは時に対しての耐性ができており、今回のうごけるのも耐性のおかげだろう。


逆に言えば耐性があれば、反応薬を使っても普通に動くことができるのか。


ようは脳の認識やらの問題なわけだ。時の加速や減速といった反応なら。スローモーションとかにしないでただ体感を変えれば、脳はそれを誤認して動いてくれる。1日を3日にしても、3日あったから問題はなかった。1日が3倍の時間なら、狂ってしまうのだろう。


今現在おおよその反応は通常の36倍、何時、体に異変が起きてもおかしくはない。今回は日を感じていない、体に悪影響を与える可能性もある。しかしだからといって考察をやめれば、一般人と変わらなくなってしまう。


感情で動くのではなく。現状を楽しみ、最適だと思う行動を探り、それを信じて動く。これがゲームにおいての自分の指針だ。だから考えよう。状況を好転させるために次の一手を。


「次にこうなった原因だが」


現象として同じのを引っ張ってきたで大丈夫だろう。つまりこの反応の相手は……


「ヤーヌスだな」


これは周回プレイだ、当然1周目の要素も引き継いでいる。つまり【贄は適応されている】適応しないと神なんて倒せない。


腐っても神は神だ。プレイヤーとは格が違う。普通の攻撃スキル等殆ど通用しない。通用させるには【同格】で対処するか、【弱点】をつくしかない。今回は【贄なることで同格に近づいた】ダメージが通るようになったので勝つことができた。あくまで格が強かっただけだからな今回は。


「さて、ここまで推定できたなら。後は行きかたか」


何かが作用したら、矢印は変わるか?魔法以外にも反応するものはあるか。【何がある】かはわかっているので先程と違い別の手法もある。……しかし


「……他のゲームにも利用できそうだなこれ」


しかし、今はこれを終わらせる事が優先だな。まぁまずは……。


「ゲーム内容の把握といきますか」 

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