コネクト  創造する世界

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データの残骸 病室にて 1

体が重い、目を開けてみれば白い天井がある。


いつもと同じように、起きようとするが、体が動かない。昨日の戦闘の影響かなと、メニューバーを出そうとしても出てこない。


ついに本格的に壊れたか。はめをはずしすぎたことを後悔した。 


これからどうなるのだろう、実験とかいってたよな。抹消ともいっていた気がする。


「……」


どうしてこんなことに、今は話そうとしても言葉はです。体はろくに動かず、ただ白い天井を見つめるしかなかった。なんとか体を動かそうとがむしゃらに体をうごかず。しかし結果はモソモソと微弱に動く程度で思い通りには動かなかった。


「緑郎、聞こえるのか緑郎」


誰かに呼ばれている。懐かしい声だ。しばらく聞いてない声だった。


顔を動かし声の主を見たい。自分の体を動かすことが出来ない。


動け動けと、体に命令を送る。しかし、送っても送っても体は言うことを効かない。何故? そこで気づいた。ここがVRではなく現実だと言うことに。


「いったいどうなされました」


「先生、緑郎が緑郎が動いたんです」


大きな声で、父さんだと思う人物が叫んでいる。それを聞き、コツコツと誰かが近寄ってくる。


前に男性が映る。目線を男性の目へと移動させる。


「僕の声が聞こえるかい」


頷こうとするも、体が動かない。必死にわかってる事を伝えようと体を動かす。


「話すことはできるかい」


「……」


「できる」といいたい、起き上がり父の顔をみたい。しかし、言葉を伝えようにも出来ない。


必死に体を動かして反応を起こしていることを伝える。


「ステージ3ですか」


ステージ?なんの事を言っているのか? さっぱりわからない。


検診をした医者は手にデバイスを持ち……、他の人物に連絡を始めた。


「はい、……そうです。……えぇ、ステージは3でした。……はい、はい、ではそのように行います」


話を終え、また別の人と話しだす。


「あぁ、僕だ。昨日運ばれた患者なんだけど。……だから」


目の前にいるからかも知れないが重要そうな部分については小声


で聞こえない。


「……それでよろしく」


そして足音から遠ざかっていき。


「診……、今は……、……」


もう内容はほとんど聞こえなかった。時おり、父から悲しげに「そうですか」やら、「はい」などの声が聞こえてきた。


僕はどうなるのだろう。久しぶりにあった老人の言葉を思い出す。


「現段階では、お主は現実に戻ることは出来ない」


確かにそういってたはずだ。それに、なにやら政府からも都合が


悪いとかで殺されるとかも言ってたな。


はは、たかだか、一日たっていないはずなのに酷く昔に感じる。


昨日の戦闘を思い出す。一方的な戦いだった。


余裕だと思っていた。強さを感じなかった。普通にやれば勝てると思った。


普通じゃなかった。


未知の連続だった。


戦いにすらなっていなかった。


誰も精神攻撃なんてやってこず、誰も感覚の変化なんてやって来なかった。


三次元の高速移動なんて戦ったことがなかった。補足が相手の行動を有利に働くとは思わなかった。


そう全ては思わなかった。そして、【知っていたらどうなったのか】に至り、【知った所でどうにもならない】との感想に至る。


補足せずに攻撃を当てる方法なんて知らないし、自分の攻撃をずらされる経験なんてない。そもそもの話【相手が何をしたかはほとんどわかっていない】ただわかっている事もある。


【遊ばれていた】相手は本気ではなく、じゃれていた。それだけはわかる。わかってしまう。【何故だかわからないがそう確信できる】


コンコンとノックの音が聞こえる。続いてドアの開く音が聞こえる。


「お待ちしておりました、金剛様」


金剛?何処かで聞いたことがある名前だ。


カツン、カツンと歩き。近づいてくる事がわかる。


ピタッと音が止まり。自分の前に老人が見える。


ひょっとしてこの人が【ロック】だったのか。


そう思いながら、僕はなにもできずにただなすがままに老人が持ってきたヘットギアを装着した。












実験室にて


「難敵じゃな」


そうロックに言われる。


「あぁ、恐らく【最悪の敵】の1人だ」


完璧に【VR慣れした動作】【地獄に耐えうる精神】【猛攻に捌ききる技量】どれをとってもトップであり。自分が勝っているものは技量と精神しかなかった。


「最悪程度ですめばいいんじゃがな、恐らくいや、まず間違いなく持っておるぞ。あやつは【運】を」


「それは、わかってる。それもただの運じゃなく。もっと恐ろしいなにか」


悪運なのか幸運なのかはわからない。しかし、あいつは【天文学的な確率を突破し、最善を引き寄せた】


「一応聞いておくが」


「【壊す】つもりだった。勿論体は残した状態でいた。一応手加減はした」


手加減はした、しかし程度は本気でやった。それこそ【常人じゃ精神病院に通院】する程度には壊しにいった。


「まぁ、つまり……」


「奇跡的な何かがそこで起こったって話だな」


長時間VRに浸った人間ならそういう【精神耐性】がついたのか、……いやそんなことはないだろう。【死の恐怖程度で耐えられるレベルではない】では、【元からそういう人格だったのか】いやそれも無理だ。最初の応答で【人格は確認している】つまり、たった数時間でそうなるに至る何かが起きたってことだ。


「さてどうする。相手は天運じゃぞ、いや【主人公】と言ったほうが正しいか」


「まぁ、それについては対策していく。まぁあそこで壊れないならこっち側に来るみたいだし」


いずれは、考えも変わっていくだろう。拾われ先もあそこだし。まぁ当分については、干渉しないで放置で確定だな。


「まぁ、つまり放置確定か」


「できることなら相対したくないんだが……」


体が光る。こういう状況でこれが起きるってことは。


「ファントム・ヒーロー起」


景色が変わる。


フラッシュが起こる。状況として、【何かに呼び出されて転移させられれた】感じか。


「それ以上、邪魔をすると。退室をしてもらうことになるがよろしいかな」


懐かしい声がする。確か【音楽家】だっけか。フラッシュがやんで、チカチカしながら目を凝らして見れば見覚えのある顔が見えてくる。


先ほど喋っていた【音楽家】、先日戦った【猛獣使い】、そして【小道具係】か


「まるで、同窓会気分かな、ところで何の用ですか。侵略者の方々」


その言い回しに、反応したのは音楽家か。てことは今回は音楽家の招待か。今のうちにムムに、データの変更をしてもらう。メインは戦闘用にして、サブは臨機応変か。


「さて、ところで君はスカイアースでいいのかね」


「情報非公開のスキルが上から与えられてる。この情報から導き出せると思うが」


なるべく、情報を錯乱させるよう口調を変える。声は変えられるが変えてはならない。その情報は与えなくてもよい。格好はポリゴンの黒い格好。服はブラウンのジャケットの黒いズボン。まぁ簡単に言えば【相手は自分と認識できない】だからなるべく情報を錯乱させるように動く


「まぁいい、【私はスカイアース】じゃ。こんな老人に何のようかの」




















VRに覗き込むことで、やっと自分は現実で顔を動かすことができた。【乖離性症候群】いわばVRに自分の体を慣れさせすぎた影響で、現実世界で体が動かせなく【病気】らしい。説明した金剛氏から言えば【副作用】らしいけど。


自分の状況も把握できた。ここは【金剛羅漢氏の所有の病院】で僕のような乖離性症候群の集めて置く施設らしい。最も今は僕一人しか居ないらしいけど。ちなみに連絡をしてくれたのは僕が着いていったロックという人物だった。


「感謝しといたほうがいいぞ。少なくとももう片方は政府側の思惑だったはずだしの」


「殺さなくて良かったんですか、僕を」


「緑朗」


父さんが注意の為か怒声に近い者も聞こえるが、気にはならない。


元よりVRの生活が長すぎて現実世界に現実味が起きない。しかもこの体だ【VRの方が現実だと思ったほうが精神的に安静だ】


「馬鹿か、お前は。【お前一人、被検体の一人にしか過ぎん】あいつも上に目をつけられない程度に痛めつけただけじゃ」


「あれが、痛めつけた程度……」


絶句する。あれは耐えられるものではなかった。【入る前に飲んだ薬】のおかげで、かろうじで耐えられたが、いま正気の状態であれが起きたのならば。耐えられる自身が無い。


「あの程度、あいつなら挨拶程度に済ましてくるわい」


「あの程度って」


「【そんな場所なのだよ】君がこれから入ろうとする場所は」


ごくりを唾を飲む。いや飲むように考えたという感じだ。今の状態では【動作をしたところで自分がそうしたと感じているだけだ】


今の僕は、ディスプレイに映し出されているらしい。そうらしいだ。ディスプレイの上にカメラがついており、それが【僕の視覚になっているらしい】顔には僕の顔が映ってるらしい。全てらしいだ。現実の僕の体は精神衛生上見られるものではないと、視界から外されている。父はこんな僕でも良かったといってくれる。


「まぁ、奇縁ではあるが、お主はもうわしから逃れられない。まぁ安心せぇ。才あるものには寛容じゃよわしは」


つまり自分に才がなければ追い出されるともとれる。


どうすればいい。どうするのがいいんだ。答えは出ない。そういう【選択からは逃げてきた人間
】だ、今更考えたところで……


「ふむ……、一つ良いことを教えてやろう」


「なんでしょうか」


「【あいつの敵について、何事もなく終わる時点で。わしからの評価は最高評価だ】どれそろそろ時間だろうし、お主も見て見るといい。【あいつと敵対するとどうなるかを】」


そういわれ、視線をテレビのほうに移動される。現状自分の体があるためか、自分で思い通りに動かすことはできない。最も自分で動かすことなんてできないかも知れないけど。



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