コネクト  創造する世界

AAA

最初の三日間 スタートダッシュ

「まずいな」


祭りが終わって戻ってきた後、大空大地は、自分が入手した情報を調べていた。しかし情報の精査は思った以上に難航していた。原因は徹底的な情報操作と隠蔽だ。


「コネクトβの間に既存のサイトの全閉鎖、及び掲示板の全削除。またβ特典のせいで情報の提供も期待できない。というか信用できない」


簡単に言えばβ憎しで掲示板の情報は信用できなくなっている、公式は全閉鎖だ、となるととれる行動は限られている。そして取る行動は一択しかない。コネクトというゲームをするなら。コネクトというゲームに対応するしかない。対応ができないのなら対応をできる状態にするしかない。


「まるで、あの時と同じだな」


周りから避けられ、けれどもそこに居たくて仮面を演じていた中学時代と。


「まぁ、今は仮面を被ることが嫌じゃなくて。嫌いなら辞められるけどな」


当時はその考えはなかった。つくづく甘かったんだなと思う。


「ほんとに、あいつに会わなかったらどうなってのか」


……、感傷に浸るのはここまでにしよう。現実に戻る。


コネクトは悪意前提で作られている。そう仮定する。では悪意は何ができるのか、最大の悪意は何か?答えはいくつかあるが、終着点は現実での死で確定だろう。方法はなんでもいい。【ロスト事件】のようにゲームでの死を脳死状態にしてもいい。【リアル事件】のようにVR空間で薬物中毒にして生活できないようにしてもよい。しかもそれは凄腕のハッカーなら簡単に行うことができる。そして時間稼ぎもできない状態じゃ簡単に事はなされてしまう。少なくともコネクト正式版開始から一種間以内にこの事件は起きるだろう。この規模だ死者がでないわけがない。【ゲームだから】、【リアルじゃないから】そんな理由で、現実では行わない方法をし多分何十人かは死ぬだろう。ゆえにこの間の一ヶ月は悪意に対抗するための何かを手に入れないといけない。現状では方法は一つしか思いつかない。だから


「これはあまりやりたくないんだが。背に腹はかえられない」


今年から入学するT大学のVRサークルに連絡をとる。


「さて、今年度から航空宇宙工学部に入学する、大空大地……。よしこれで完了。とりあえずこれで様子をみるか」


翌日


朝早くに起き、メールを確認する。


「岩井さんからは……、確認を行ってくれてるみたいだ。サークルのほうは……まだメールはなし、先に準備しとくか」


VR機器に入ってるFPSゲームを動かす。


「うん、久しぶりに動かすとやはりぎこちないね」


四年ぶりのゲームを動かしながら。ゲームへ体を慣らしていく。


「後はこれを使って……、うん中々できるね」


鳴らしはうまくいったので、朝ごはんを食べ、再度メールを見る。高校生以降、大空大地は親に仕送りを貰いアパートを借り生活している。主な食生活は外食と弁当、時々自炊だ。仕送りは多いほうなので、このような食生活でも十分にやっていける。


「さてメールは、来てるね」


VRサークルからの連絡が来てた。内容は何時でもきていいか。


「それじゃあ機器を入れて出発しますか」


準備に時間がかかって、お昼少し前ほどに大学にたどり着いた。


「さて、サークルは四練の325だっけか。」


メールで送ってもらった、場所へと移動する。ノックを行い。


「失礼しまーす」


中に入ると機器に接続された人が四人。それとお茶や菓子の用意してる人が二人。結構人数いるな。


「あぁ、君が大空大地君」


「はい、今年度入学する大空大地です」


「僕は雛形明津ひながたあくつここのサークルの一応はまとめ役かな」


「おっ、そっちの子が新入生、私は雛形佐喜子ひながたさきこ。明津の妹よ」


「兄妹なんですね、おふた方ともよろしくお願いします」


二人に挨拶を行い、本題にはいる


「それで、本題なんですが」


「あぁ、開発者と規制の件ね。こっちは僕以外に佐喜子とハマがいったよ」


「ハマっていうのは」


「あそこでFPSやってる四人のうちの一人さ。全くβ特典があるって知ってたんだから入ればよかったのに」


特典について事前公開されていた?そんな話は聴いたことなかったな。


「特典って公開されてたんですか」


「いや公開はされてないはずだよ。僕達はマイナーゲームやってたから、そこの運営からβに特典つくぞって公開されてたんだ」


なるほど、マイナー会社とかならそうゆうのもあるのか。


「なるほど、ちなみにどんなゲームか聞いても?」


「あぁ、僕達はTRPGをVRでやっていてね。作ったキャラクターが動くのが楽しんだこれが」


「ちなみに兄さんは脚本担当ね、デザイナーはほとんど私がやってるんだけど。兄さんグロイの書くのだけはうまいから」


TRPG。欲しい開発者の一つだ。


「ぶっしつけですみませんが、TRPGの開発者って」


「あぁ、僕は貰えたね。たしかサイキックの開発者だったけな」


「私はファンタジー系の装備品担当ね」


「そうですか、僕は……」


ここで、鉄塊のユーザーであることと、火気担当の開発者。それと追加で何人かの開発者のフレンド申請を持ってることを話す。


「ちなみに申請は何通ぐらい」


「12通でしたかたしか」


「12!! 私は3通しか貰えなかったのに」


「僕も8通ぐらいだね」


「えっ、兄貴そんな貰ってたの」


「まぁ、僕はカードゲームとかそっち関係もやってたしね。だいたいはTRPGとカードゲーム関係。一つだけファンタジーゲームの奴があったかな」


「そうですか、そこの四人がまだ時間かかりそうなら、先にβでフレンド交換等を行いたいのですが」


「私はいいよ、あいつらはまだ時間かかりそうだし」


「まぁ書置きしてから入れば大丈夫か。それじゃあコネクトスペースのTRPGブース021に集合で」


VR機器を接続しコネクトブースに入る。


「やぁ、待っていたよ」


そこには、昨日演説にしていた社長が写る。


「あぁ、わかっているとは思うが私はここにはいない一種の録音データさ」


「……」


あぁ、わかってるよそのくらい。


「君ならわかっていると思うが、このゲームは悪意に立ち向かえるようになってる。しかし立ち向かえるだけだ」


「……」


それも知っている。ついでに、基本的に考えて行われる悪意に対抗することが難しいことも。


「わかっているとは思うが、規制とは目を逸らすことだ。逸らしているだけで悪意は君を見ている。逃げることはできない」


「……」


つまりは、規制ってのはフィルターってことなのか。それは知らなかった。


「ゆえに、私が言えることは一つ。悪意に負けぬよう繋いでくれ。君ならできると信じてる。」


男の手から光が出てくる。


「これを君に渡しとこう。これは対不正用の切り札となる物だ君以外にもいくつか渡しているから遠慮しないで持っていて欲しい。」


男からの光を受け取る。


「さて、もう時間だ。言いたいことは伝えたから僕は退出しよう。それじゃあ良き生活を。君に幸福に楽しめることを祈ろう」


男は消えていく。言いたい放題言って。


「無駄に時間がかかったな」


雛形兄妹の指定した場所に向かっていった。


「やぁ、時間がかかったね」


「録音メッセージが入ってたもので」


「あぁ、確かそういうこともできるんだっけ。とりあえず情報を交換しようか」


「はい、こちらが出せるものは」


規制情報と火器の開発者のフレンドの交渉権をだす。コネクトでは仲介というシステムがある。これは今居ないフレンドを他の人物に紹介できるというシステムだ。紹介で登録もできるので。開始までの間はこれを用いて開発者のフレンドを増やすことができる。勿論くだらない方法や恐喝などを行えば、フレンド登録を解消されるので。注意は必要だ。しかし、コネクトは開発者と共に作り上げていくとうたっているので趣旨があれば仲介は簡単に行えると考えている。規制については、自分の設定を公開することにより、見せた。


「開発者はあまり興味のないものだけど。規制のほうについてはかなり欲しいね」


「どんな規制があるの」


「痛覚やエロの感度の調整と設定も入ってる。後流血や四肢欠損での動かし方や。トイレや食事といった生活要素の設定もある。はっきり言って僕達が持っている規制とは比べ物にならないね」


「えっ、そんなやばい設定があるの」


「うん、しかも思った以上に規制が細かい。これはフレンドと入る際は考えて入らないとまずいね」


「まず考えられるのは偽装ですからね」


表示を偽装して相手を連れ込む。一番簡単な方法だ。


「だけど、これに見合うような報酬を僕が持っているとは思えないんだが」


「いえ、雛形さんはTRPGの開発者との仲介だけでいいです。勿論妹さんの分もつけます」


「そこまでする理由はなんだい」


条件が良すぎて疑いはじめている。まぁFPSならともかく、最初から当たりの開発者を見つけたからなんだけどね。他ならこの条件にはしない。


「それを踏まえて、仲介者との連絡をお願いします。別に規制の方は先出しでもいいです」


「……妹のを先に頼む、そのあと仲介を行い。成功したら僕のも貰おう」


「ちょっと兄さん 」


「これでいい、はっきり言って僕の目からみると君は胡散臭すぎる。騙しているようにとられても仕方がない状況だ」


「まぁ、仕方ないですね。僕も開発者がFPSとかなら手を引くのですが、まずは妹さんに規制を渡します」


当たりの開発者を手にいれるチャンスを逃すのは勿体ない。規制を手渡す価値があると、判断した。規制情報を渡す。後5か。これでうまくいかないなら少し考える必要があるな。


「こっちは、確認できたよ」


妹は規制情報を兄に見せる。


「確認しました。それでは、仲介を行います」


ボタンクリックし、えぇや実は等が聞こえる。


「今話しても大丈夫なそうです」


「では、仲介をお願いします」


「今回の仲介はスピーカーで行います。一対一での会話ですが。周囲に聞こえていることは理解してください」


そういってボタンを押す。


「あー、お前か俺と友達になりたいっていうのは」


「はい、スカイアースと申します」


「ふーん、俺は榊健児さかきけんじだ。単刀直入に聞くが、俺に何を求めてる」


「はい、この一ヶ月でVRゲームを作りたいと思いまして。システムに絶対に必要になるだろうTRPGのシステム開発者の友達が欲しいんです」


「『はっ?』」


これには周囲にいる雛形兄妹も驚いている。まぁ昨日の話と規約書をみてできそうだから試して見るだけだからなこれ。


「俺の耳が悪くなったのかな、ゲームを作るって聞こえたんだけど」


「耳は正常です。ゲームを作ると言いましたので」


「ちなみにジャンルは」


「んー、ジャンルは難しいですね。古典遊びっていうんですか?」


「よくわからんぞ」


「何単純ですよ。コネクトしたゲームで鬼ごっこやかくれんぼをするだけです」


「「はぁ?」」


「つまりは対コネクト用の準備を行うための場所です。規制を大量に盛り込み、コネクトした際の機能などを想定したりする。実験場ですよ。ですがそれだとジャンルがないため、コネクトして鬼ごっこやかくれんぼ、氷鬼などをして遊ぶ場所として世界を作成します」


「それができるっていう勝算はあるのか」


「むしろできないとコネクトがうたっている『開発者とユーザーで創造するせかい』じゃなくなりますからね。説明書にもインディーズゲーム欄がありましたし。多分ユーザーのゲーム開発は想定されてることです」


「……必要な開発者は」


「グラフィックの開発者が一人いれば完成できます。まぁ僕が欲しいのにTRPGのルールがあるので。TRPG開発者も必要ですが今のところはそれだけです。」


「欲しいシステムってのは」


「色々ありますが、まずはターン制。これがあるだけで対応ががらりと変わります。続いて暴走判定これも組み込みます。これにより相手の自壊の可能性がでてなおかつ制御ができなくないます。またコアシステムなどがあれば弱点も作成できますし……」


悪意への対策を次々に述べていく、仲介も含め三人は黙って聞いている。色々と話し終えた後開発者の榊は口をひらく。


「つまりはあれか、コネクトで遊ぶためにコネクト用のゲームを開発するんだなお前は。」


楽しそうにいう。


「他にもAIや自分がやりたいことをそこに詰め込みたいと考えております、ちなみにTRPGも作ってみたいですね」


「……ジャンルは」


「ロボットもの、大型小型、人形昆虫型なんでもござれのコストシステムなんていかがでしょうか」


「設定は」


「人しか生きていないのには飽きたんで、全てが機械でできている世界でいきたいと思います。わざわざ人にこだわる必要もないし」


「特徴は」


「コストをつけます。コストが高いほど強いスキルが使えます。またコストオーバーもできます、デメリットは命中率の低下と安全性の低下ですね」


「まぁ、詰めればそれなりのものができそうだな。」


「暇潰しにたまに鉄塊でもやってましたしほどほどには楽しめますよ」


「なんだもう試作品はやったのか」


「えぇ、暇つぶしに二人で戦闘だけやってましたそれなりに遊べますよ」


「良しいいだろう。俺もそのゲームとやらに参加してやる」


フレンドコードに榊健児が登録された。


「ありがとうございます。では引き続き他のTRPG開発者との仲介をお願いします」


「俺一人じゃたりないっていうのか」


「あたりまえです。まさか開発者だからといってこの世界の神にでもなったつもりですか。悪意に対抗する以前に面白いもの作るには色々な人が必要なんですよ」


「他にはどんな人を呼ぶつもりなんだ」


「格闘ゲームのモーション担当、アクションのオブジェクト担当、背景はまぁホラー系以外で何人か呼んで、システム関係でファンタジーとSF系の何人か。まぁ最初はこれくらいで行きます。ちなみにこの中の開発者が数人フレンド承認待ちになっているので該当してたらとります。後は……」


言おうとしているときにメールがなる。


「あぁ、最初の開発者の火器担当の方がグラフィック担当と開発して承認が取れたみたいです。三日後に集まる予定になっているのでそこで集まりましょう」


苦笑しながら榊はいう


「あぁ……なんだ。随分と愉快なユーザーに会えたじゃねぇか」


こうしてスタートダッシュは順調にいった。



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品