[悲報]異世界行かされて、ひどい目にあったと思ったら心の友が物語の主人公過ぎて泣いた~まっ俺の方が強いけどね!!~

ハイパーニート

4、この世界は殺すか殺されるかだ

俺は改めて、目の前にいる敵を見つめる。
姿かたちは、普通の少年のそれにちかしいものがある。
しかし、異形の翼、細い体躯、圧倒的オーラ、そして顔につけられた仮面、これらがこの目の前にいる者がモンスターであることを証明している。

ああ、そうか、先生が言ってたのこういうことだったのか、、、。
世界のためか何のためか知らないがこいつは間違いなく俺を殺すつもりでいるだろう。
戦おうにもあまりの圧倒的オーラと目にいやでも入ってくるステータスが、俺の心を挫かせる。

悪魔 フェネックス 

HP1500
MP1200
SP900
ATK2500
DEF1000
AGL3000
LUK90

<状態>
堕天
弱体化

<スキル>
不死 Lv.ー
悠久の使者Lv.-
飛行Lv.-
不死鳥の羽Lv.- 


「なあ、小僧、この世界はお主らのいたところのように優しくはない。
ここでは殺すか殺されるかが鉄則の世界だ。
だから申し訳ないがわしのため、そして魔物の未来のために死んでもらう、、、。」

そういうと悪魔は空に羽ばたき、俺を上から見下ろす。

「そんなの、はいそうですかって黙って納得するわけねーだろ」
俺は負けじと吠え返すものの、やはり勝機など一ミリもない。
だけど、まだ俺は日本でしたいことがたくさんある。
それをせずにここで、こんなところで、人生から退場するわけにはいかない!!!
とりあえずまず俺は逃げるためにその場から走り出した。
向かう先は用意されていたかのようにある一本の小道。
だが、ここで迷っている暇はない罠でも踏み抜いていかなくては逃げることなど到底できない。

「お主が逃げることなど想定済みじゃ、そのためにお主を部屋に閉じ込めておったんじゃからの。」


そういうと俺が小道の前に着た瞬間、悪魔が指を鳴らす。
すると、小道の前にあらかじめ設置されていた魔法陣が起動したのか、俺の体と、その魔方陣が反応し、青白く光り始めた。
気づいた時にはもう遅かった、俺の体は呪いがかけられたかのように重くなり、痛みとともに動くことができなくなっていた。

「では死んでもらうぞ、小僧」

そういうと、虚空に手を差し伸べた。
すると大量の漆黒の羽があたり召喚され、それらは悪魔の手に集まり一振りの剣と化す。
あまりに濃厚な死の気配に俺の体は悲鳴を上げ、眠りにいざなおうとしてくる。
気絶してしまえば楽に死ねるだろう。そう体は思っているらしい。
でも、、、でも、、、

「い、、、、、や、だ、、、、、」

まだ、やり残したことはいっぱいある。ここで死ぬわけにはいかない!!

「ほぉ、その状態でよくしゃべれるのぉ、その魔法は古の禁呪、毎秒HPを吸い取り、被術者を金縛り状態にして多大な疲労と苦痛を与えるものぞ。ま、その絶大な力ゆえに、被術者を抵抗のないところで閉じ込めているときのみ術を行使できるという条件があるがのぉ、、、。ふん、まあよい、死せ。」

悪魔は天空から地上の俺に向かって加速しものすごい勢いで剣を振り上げ、向かってくる。
きっとあと一秒もしないうちに俺の体と頭は分離してしまうだろう。
せめて苦痛のないようにとおのれの不運を嘆きながら、目を閉じた。


、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、
俺の人生は平凡そのものだった。
生まれてこの方何かに熱中したわけでもなく、何かで目立ったこともない。
自慢できることもなければ、夢があったわけでもない。

知り合いにはいつもすごい奴はたくさんいた。
そいつらはいつも俺を置いてって、先に進み世間に評価されている。
、、、結局俺は何者にもなれなかった。
かといって何かになりたかったか?と聞かれたら、なにかになりたいわけではないと思う。

ああ、つくづく退屈な人生だった。
何者にもなれなかった俺にはなんともふさわしい惨めな死に方だ。
もうこんな人生手放してしまってもいんじゃないだろうか、来世があるならそれに期待するのもいいかもしれない。
でも何なのだろう、この心にこびりついて落ちない錆みたいな何かは。



どうやら心の奥にはまだ何かが叫びを、悲鳴を上げているらしい。。



それはガキだった時の話、、、
俺は妹と一緒に公園の砂場で城を作っていた。

「ねぇ!お兄ちゃんは将来何になりたいの?」

「あん?どうしたんだ急に?」

「いいの!!答えて!!」

「そうだなぁ、俺はみんなの幸せを守れるくらい強いヒーローになりたいかな。」

「そうなんだぁ、、、じゃあ私はそんなお兄ちゃんのお姫様になりたい!」

「はいはい、そういう冗談は好きな人ができるまでとっとけ」

「ぶぅー、お兄ちゃんの意地悪ぅ、、、」

ああ、そうだった夢はあったんだ、、、俺が忘れてただけで。
それは夢というにはあまりに稚拙でだれもが笑ってしまう代物。
だけど俺はその時、、、本気でヒーローになりたかった。
人は時がたつごとに感情を忘れてしまう。
この何でもない日々の愛おしさ、日常を謳歌できる幸せ、そのすべてを失うのが
嫌で、嫌で、たまらなかった。
だからそのすべてをずっと守れるヒーローになりたかった。
だけど、願ってた幸せはいとも簡単に崩れてしまう。
そう認識したのは親が分かれた時。俺は夢ともどもすべてを捨てた。もうこれ以上苦しまないように。
捨てたはずだった。
だけど、どうやら心のどこかでその残りかすが息をしているらしい。
皮肉な話だ。今になってそれを思い出させられるなんて。
自分でも笑ってしまうくらいな、小さな勇気。
その泥臭い”諦めきれない心が”体を突き動かす、、、、


後ろでそっと自分が自分を押す。
もう大丈夫、勇気は満ちた、後は動くだけだ。



俺は、体を前傾に倒し転がる。
あまりの俺の唐突な行動、いやその魔方陣への絶対的な自信ゆえだろうか、悪魔は加速した体を止めることができず、俺の元居た場所に地面を深くえぐる形でクレーターを作った。
俺はその衝撃波で吹き飛ばされ、小道に体を投げ出させられた。
身体全体が鈍痛で包まれるが、ここで止まっている暇はない。

悪魔は、クレーターにはまって動けなくなっている。
今しかない!!
俺は小道の奥向かって走り出した、

「待つのじゃ!!」

「待つもんか!」

おれは、そう吐き捨て、逃げるために必死に小道を走った。
走って走って走った、決して追いつかれないために。
しかし運命はどうしても俺を殺したいらしい、、、。

走った先には壁しかなかった。

「ふっざけんなっぁあぁ!!」

俺はあまりの理不尽さに壁を蹴り飛ばすが、それでどうこうなる代物ではなかった。

「残念じゃったな、もしものことを考えて、入り口はふさいでおいたのじゃ」

もう追いついてきたのか、早すぎだろ。

「今度こそ殺させてもらうぞ。」

「くッ、、、、、」

せっかく逃げられたと思ったのに、畜生!!畜生!!!!

「ちくしょぉぉぉぉぉ!!!」

俺は死を覚悟した時だった、、、。

ズドン!!!

最初俺には何が起こったのかわからなかった、しかし気づけば宙に放り出されていた。
別に頭と体が分離していたわけではない。
そう、俺はただ単純に宙に放り出されていた。

どうやら、さっきの衝撃でここの地盤が崩壊したらしい。
ここの下には広い空間が広がっているらしく、下は見えない暗闇が広がっていた。
俺はそんな暗闇の中に放り出されたようだ。

「うぁぁあああぁぁぁぁぁぁ」

あ、俺こういうの苦手だったわ。
この内臓がえぐられるかのような感覚、無理です。
俺はあまりの唐突なことに反応できないでいる悪魔を尻目に意識を手放した。




























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