姉さん(神)に育てられ、異世界で無双することになりました
彼女がそこにいる理由
朝食の準備をしていると、チッケがうつらうつらと眠そうにしていた。
「チッケ、大丈夫か?」
「はっ! 大丈夫だぜ、師匠」
「大丈夫じゃないだろ。刃物を扱う仕事は俺がするから、チッケは火を熾しておいてくれ
俺はそう言うと、昨日残しておいたヒッポグリフの肉を捌く。
「悪い、師匠」
「気にするな、まぁ、あんな場所だったら眠れないのはわかる」
俺もあまり眠れなかったし、チッケがそわそわとしているのにも気づいていた。
だから、太陽が顔を出して直ぐに俺たちは朝食の準備に取り掛かっているわけだし。
ちなみにマクリラはまだ寝ている。
よくもまぁ、昨日会ったばかりの人相手にそこまで信用できるものだ。
逆にチッケは信用しなさすぎかな?
彼女が眠れなかった理由は、おそらくマクリラのことを警戒していたからだろう。
チッケが俺と一緒に寝ようとしたのも、もしかしたらマクリラと一緒に寝たり、俺とマクリラを一緒に寝かせるのが怖かったのかもしれない。
だとしたら、悪いことをしたかな?
でも、俺はマクリラのこと、悪い人のようには見えないんだよな。
姉ちゃんに雰囲気が少し似ているからかな?
「師匠。師匠はあの姉ちゃんのこと信用しているようだけど、おいらは怪しいと思うぞ?」
「なんでそう思うんだ?」
「あの姉ちゃん、おいらたちと同じ依頼を受けたって言ってただろ? でも、師匠より速く走れる人間はまずいないと思うんだ」
「まぁ、そりゃな」
自慢じゃないが、オリンピックに出場できたら、短距離走でもフルマラソンでも金メダルを取れる自信はある。チッケを背負ったままでも、だ。
「ということは、あの姉ちゃんはおいらたちよりも先にオーガ退治の依頼を受けたってことになる。でも、リディーさん、冒険者に依頼を出しても誰も帰ってこなかったって言ってただろ?」
「……確かに、そう言っていたな」
言われて気付いた。
依頼を受けたというのは嘘ということになる。
雰囲気でついつい信用してしまったが、そう言われたら確かに彼女は怪しい。
「んー、よく寝た。ごめんごめん、あたしも手伝うよ」
話がまとまる前に、マクリラが起きてきた。
俺とチッケは彼女の一挙手一投足に注意しながら落ち着かない朝食をとることにした。
そして、朝食後。
俺はチッケを背負子で背負い、まずはオーガに襲われたという廃村を目指すことにした……のだが。
「姉ちゃん、こっちだぞ」
「なんで川に入っていこうとするんだ、マクリラ」
「……なんで今来た道に戻ろうとするんだよ」
「街道を道なりだって言ってるのになんで茂みの中に入ろうとするんだ」
最初は罠だと思った。俺たちを変なところに誘導しようとしているのかと思った。
だが、違う、そうじゃない。
「姉ちゃん、もしかして――」
「方向音痴……なのか?」
俺たちが尋ねると、マクリラは乾いた笑いを浮かべた。
「はは……まぁ、そういうこともあるかな。ほら、よくあるでしょ? 隣町を目指していたら気付けば反対方向の町にいたって」
「「ないよっ!」」
わかった――本当にわかった。
マクリラがここにいる理由。
「もしかして、オーガ退治の依頼を受けたのはいいけれど、そのオーガの住む洞窟に辿り着かずずっと道に迷っていたのか?」
「はは……はぁ」
図星かよっ!
「まぁ、一カ月前に依頼を受けたんだけど、気付けばね。昨日もお腹が空いてヒッポグリフを狩っていたら、本当は嬉しかったの。人と会うのも一カ月ぶりなんだもん」
一カ月もサバイバル生活を送っていたのか。
なんという方向音痴だろう。
背中でチッケが、
「おいら、いったいなにに警戒していたんだよ」
と項垂れていた。
ご愁傷様。
「チッケ、大丈夫か?」
「はっ! 大丈夫だぜ、師匠」
「大丈夫じゃないだろ。刃物を扱う仕事は俺がするから、チッケは火を熾しておいてくれ
俺はそう言うと、昨日残しておいたヒッポグリフの肉を捌く。
「悪い、師匠」
「気にするな、まぁ、あんな場所だったら眠れないのはわかる」
俺もあまり眠れなかったし、チッケがそわそわとしているのにも気づいていた。
だから、太陽が顔を出して直ぐに俺たちは朝食の準備に取り掛かっているわけだし。
ちなみにマクリラはまだ寝ている。
よくもまぁ、昨日会ったばかりの人相手にそこまで信用できるものだ。
逆にチッケは信用しなさすぎかな?
彼女が眠れなかった理由は、おそらくマクリラのことを警戒していたからだろう。
チッケが俺と一緒に寝ようとしたのも、もしかしたらマクリラと一緒に寝たり、俺とマクリラを一緒に寝かせるのが怖かったのかもしれない。
だとしたら、悪いことをしたかな?
でも、俺はマクリラのこと、悪い人のようには見えないんだよな。
姉ちゃんに雰囲気が少し似ているからかな?
「師匠。師匠はあの姉ちゃんのこと信用しているようだけど、おいらは怪しいと思うぞ?」
「なんでそう思うんだ?」
「あの姉ちゃん、おいらたちと同じ依頼を受けたって言ってただろ? でも、師匠より速く走れる人間はまずいないと思うんだ」
「まぁ、そりゃな」
自慢じゃないが、オリンピックに出場できたら、短距離走でもフルマラソンでも金メダルを取れる自信はある。チッケを背負ったままでも、だ。
「ということは、あの姉ちゃんはおいらたちよりも先にオーガ退治の依頼を受けたってことになる。でも、リディーさん、冒険者に依頼を出しても誰も帰ってこなかったって言ってただろ?」
「……確かに、そう言っていたな」
言われて気付いた。
依頼を受けたというのは嘘ということになる。
雰囲気でついつい信用してしまったが、そう言われたら確かに彼女は怪しい。
「んー、よく寝た。ごめんごめん、あたしも手伝うよ」
話がまとまる前に、マクリラが起きてきた。
俺とチッケは彼女の一挙手一投足に注意しながら落ち着かない朝食をとることにした。
そして、朝食後。
俺はチッケを背負子で背負い、まずはオーガに襲われたという廃村を目指すことにした……のだが。
「姉ちゃん、こっちだぞ」
「なんで川に入っていこうとするんだ、マクリラ」
「……なんで今来た道に戻ろうとするんだよ」
「街道を道なりだって言ってるのになんで茂みの中に入ろうとするんだ」
最初は罠だと思った。俺たちを変なところに誘導しようとしているのかと思った。
だが、違う、そうじゃない。
「姉ちゃん、もしかして――」
「方向音痴……なのか?」
俺たちが尋ねると、マクリラは乾いた笑いを浮かべた。
「はは……まぁ、そういうこともあるかな。ほら、よくあるでしょ? 隣町を目指していたら気付けば反対方向の町にいたって」
「「ないよっ!」」
わかった――本当にわかった。
マクリラがここにいる理由。
「もしかして、オーガ退治の依頼を受けたのはいいけれど、そのオーガの住む洞窟に辿り着かずずっと道に迷っていたのか?」
「はは……はぁ」
図星かよっ!
「まぁ、一カ月前に依頼を受けたんだけど、気付けばね。昨日もお腹が空いてヒッポグリフを狩っていたら、本当は嬉しかったの。人と会うのも一カ月ぶりなんだもん」
一カ月もサバイバル生活を送っていたのか。
なんという方向音痴だろう。
背中でチッケが、
「おいら、いったいなにに警戒していたんだよ」
と項垂れていた。
ご愁傷様。
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コメント
ノベルバユーザー329772
新しい話出さないんですか?
面白いので続きが気になります