姉さん(神)に育てられ、異世界で無双することになりました
測定結果、化け物扱いされました
奥の個室に案内された俺たち。
「チッケちゃんはここで待っていてね」
と受け付けの少女に言われたチッケは不服そうにしていたので、彼女にはグリフォンの素材の売却を頼むことにしたところ、喜んで引き受けてくれた。
個室の中は、刑事ドラマの取調室のような殺風景な部屋だった。
カツ丼でも出てきそうだ。
俺はカツの中ではチキンカツが一番好きなんだけどな。というか、鶏肉全般が好きだ。
だから、グリフォンの味が鶏肉から遠くて残念だった。
そういえば、ファンタジー世界にはバジリスクとかコカトリスって呼ばれる鶏に似た魔物もいるそうだけれど、味は鶏肉に近いのだろうか?
場違いなことを熟考する。
「テンシ様、どうぞお座りください」
部屋の入り口で立ち尽くしていた俺を見かねた少女が、席に座るように促した。
椅子に座る。
「では、改めまして。私はギルドで受け付け兼審査官をしているリディヴィーヌと申します。リディーとお呼びください」
「ええ、リディ―さん」
俺は言われたままに、受け付けの少女の名前を復唱した。
リディ―がニッコリとほほ笑む。やっぱり可愛らしい。
「では、まずはテンシ様のお姉さまからの手紙をお渡しします」
「ちょっと待ってください」
俺はリディ―さんに、一番気になっていることを尋ねた。
「リディ―さんは、姉ちゃ……姉について、どれだけ知っているのですか?」
個人情報だからお答えできないのか?
「私が存じ上げているのは、個人カードが特級であることだけです」
「特級? 上級でも十級でもなくて?」
「はい。聖王国の中でも最重要とされる人物にしか与えられない個人カードです。通常の個人カードと違い、特級個人カードには名前も表示されません。したがって、私は名前も存じ上げません」
……姉ちゃん、本当にこの世界ではどういう立ち位置なんだ?
謎が解明できるかと思ったが、むしろ深まったよ。
「すみません、手紙を読ませていただきます」
俺はそう言って、リディ―さんから手紙を受け取った。
【てんちゃんへ】
手紙の書きだしは昨日のものと同じだ。
【無事にラッセルの町に辿り着けたようで、本当によかったよ。この手紙が開封されたら、お姉ちゃんに自動的に伝わるようになっているから、リアルタイムでお姉ちゃんは喜んでいます】
既読確認機能があるのか。どんだけ心配性なんだよ。
でも、きっと本当に心配していたんだろうな。こんな手紙があるのなら、昼食よりも先にギルドへ行って、姉ちゃんを安心させてあげるべきだった。
【てんちゃんにはできるだけ自由に動いてもらいたいんだけど、まず、てんちゃんには魔法を使えるようになってほしいの。魔法を使えたら、いろいろと便利だからね。それから、てんちゃんには以下のことを頑張ってほしいの。
・冒険者ギルドで活躍する。
・信用できる仲間を集める。
・侵略者に対抗するための組織《クラン》を立ち上げる。
詳しくは、この手紙を預けてたリディヴィーヌに聞いてね。お姉ちゃんも本当はよく冒険者ギルドとか組織《クラン》の仕組みについてわかっていないの。
もちろん、てんちゃんが別のことを優先したいって言うのなら、てんちゃんが選んだ道を決めてほしいわ。お姉ちゃんはてんちゃんの選択を信じてるから。
お姉ちゃんの心はいつもてんちゃんの傍にいるからね。
あなたのお姉ちゃん、矢代神奈より】
ゲームのチュートリアルみたいだなと思った。
本当に過保護な姉だ。
「それと、テンシ様の個人カードに入金依頼がありました。テンシ様のギルド口座に、三十万クラト入金されています」
……クラト?
これも姉ちゃんの仕業だろうな。
この世界のお金の単位だろうか? 銅貨一枚が何クラトなのか気になる。
「ええと、百クラト出金できますか?」
「では説明が終わりましたら出金手続きを行わせていただきます。まず、確認しますが、テンシ様は冒険者として登録されるでしょうか?」
「はい、したいと思います」
姉ちゃんもそうした方がいいって書いていたしな。
「では、魔法能力の測定をさせていただき、初期ランクを決定させていただきます」
「魔法能力だけ? 身体能力の計測はしないのですか?」
むしろ、身体能力が高ければそれだけで冒険者としてやっていける気がする。
チッケだって、魔法を使わなくてもポーターの仕事をしているんだし。
「はい。身体機能は鍛えれば成長し、怠ければ落ちるものです。しかし魔法能力は生まれ持った才能のみで決定すると言われています」
「生まれ持った才能のみ?」
そのあたりは闘気とは全然違うんだな。闘気は鍛えれば鍛えるほどに増えるから。
でも、それだと心配だな。
俺は魔法が存在しない異世界で育ったんだし。
「測定方法はこの簡易魔道具を使います」
宝石のような石がはめ込まれている金属製の板に、メスシリンダーのような容器が固定されていた。リディーがその容器になにやら透明の液体を注ぐ。
説明によると、魔力が高ければ、中に入っている液体が上昇するらしい。水銀温度計みたいなものなのだろうか?
「ここに手を乗せてください。魔力がなくても冒険者になれないというわけではありませんから」
「わかりました」
俺は少し安心し、板に手を乗せた。
直後だった。
――ビュンっ! ダンっ!
中の液体が飛び出し、天井に穴を作り、空の彼方へと消えていった。
……あれ?
これってどうやって測定するの?
……あれ?
リディーの俺を見る目が、グリフォンに狙われたチッケの目と同じなんだけど。
時間差で、メスシリンダーみたいな透明な容器が音を立てて割れた。
……あれぇ?
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「チッケちゃんはここで待っていてね」
と受け付けの少女に言われたチッケは不服そうにしていたので、彼女にはグリフォンの素材の売却を頼むことにしたところ、喜んで引き受けてくれた。
個室の中は、刑事ドラマの取調室のような殺風景な部屋だった。
カツ丼でも出てきそうだ。
俺はカツの中ではチキンカツが一番好きなんだけどな。というか、鶏肉全般が好きだ。
だから、グリフォンの味が鶏肉から遠くて残念だった。
そういえば、ファンタジー世界にはバジリスクとかコカトリスって呼ばれる鶏に似た魔物もいるそうだけれど、味は鶏肉に近いのだろうか?
場違いなことを熟考する。
「テンシ様、どうぞお座りください」
部屋の入り口で立ち尽くしていた俺を見かねた少女が、席に座るように促した。
椅子に座る。
「では、改めまして。私はギルドで受け付け兼審査官をしているリディヴィーヌと申します。リディーとお呼びください」
「ええ、リディ―さん」
俺は言われたままに、受け付けの少女の名前を復唱した。
リディ―がニッコリとほほ笑む。やっぱり可愛らしい。
「では、まずはテンシ様のお姉さまからの手紙をお渡しします」
「ちょっと待ってください」
俺はリディ―さんに、一番気になっていることを尋ねた。
「リディ―さんは、姉ちゃ……姉について、どれだけ知っているのですか?」
個人情報だからお答えできないのか?
「私が存じ上げているのは、個人カードが特級であることだけです」
「特級? 上級でも十級でもなくて?」
「はい。聖王国の中でも最重要とされる人物にしか与えられない個人カードです。通常の個人カードと違い、特級個人カードには名前も表示されません。したがって、私は名前も存じ上げません」
……姉ちゃん、本当にこの世界ではどういう立ち位置なんだ?
謎が解明できるかと思ったが、むしろ深まったよ。
「すみません、手紙を読ませていただきます」
俺はそう言って、リディ―さんから手紙を受け取った。
【てんちゃんへ】
手紙の書きだしは昨日のものと同じだ。
【無事にラッセルの町に辿り着けたようで、本当によかったよ。この手紙が開封されたら、お姉ちゃんに自動的に伝わるようになっているから、リアルタイムでお姉ちゃんは喜んでいます】
既読確認機能があるのか。どんだけ心配性なんだよ。
でも、きっと本当に心配していたんだろうな。こんな手紙があるのなら、昼食よりも先にギルドへ行って、姉ちゃんを安心させてあげるべきだった。
【てんちゃんにはできるだけ自由に動いてもらいたいんだけど、まず、てんちゃんには魔法を使えるようになってほしいの。魔法を使えたら、いろいろと便利だからね。それから、てんちゃんには以下のことを頑張ってほしいの。
・冒険者ギルドで活躍する。
・信用できる仲間を集める。
・侵略者に対抗するための組織《クラン》を立ち上げる。
詳しくは、この手紙を預けてたリディヴィーヌに聞いてね。お姉ちゃんも本当はよく冒険者ギルドとか組織《クラン》の仕組みについてわかっていないの。
もちろん、てんちゃんが別のことを優先したいって言うのなら、てんちゃんが選んだ道を決めてほしいわ。お姉ちゃんはてんちゃんの選択を信じてるから。
お姉ちゃんの心はいつもてんちゃんの傍にいるからね。
あなたのお姉ちゃん、矢代神奈より】
ゲームのチュートリアルみたいだなと思った。
本当に過保護な姉だ。
「それと、テンシ様の個人カードに入金依頼がありました。テンシ様のギルド口座に、三十万クラト入金されています」
……クラト?
これも姉ちゃんの仕業だろうな。
この世界のお金の単位だろうか? 銅貨一枚が何クラトなのか気になる。
「ええと、百クラト出金できますか?」
「では説明が終わりましたら出金手続きを行わせていただきます。まず、確認しますが、テンシ様は冒険者として登録されるでしょうか?」
「はい、したいと思います」
姉ちゃんもそうした方がいいって書いていたしな。
「では、魔法能力の測定をさせていただき、初期ランクを決定させていただきます」
「魔法能力だけ? 身体能力の計測はしないのですか?」
むしろ、身体能力が高ければそれだけで冒険者としてやっていける気がする。
チッケだって、魔法を使わなくてもポーターの仕事をしているんだし。
「はい。身体機能は鍛えれば成長し、怠ければ落ちるものです。しかし魔法能力は生まれ持った才能のみで決定すると言われています」
「生まれ持った才能のみ?」
そのあたりは闘気とは全然違うんだな。闘気は鍛えれば鍛えるほどに増えるから。
でも、それだと心配だな。
俺は魔法が存在しない異世界で育ったんだし。
「測定方法はこの簡易魔道具を使います」
宝石のような石がはめ込まれている金属製の板に、メスシリンダーのような容器が固定されていた。リディーがその容器になにやら透明の液体を注ぐ。
説明によると、魔力が高ければ、中に入っている液体が上昇するらしい。水銀温度計みたいなものなのだろうか?
「ここに手を乗せてください。魔力がなくても冒険者になれないというわけではありませんから」
「わかりました」
俺は少し安心し、板に手を乗せた。
直後だった。
――ビュンっ! ダンっ!
中の液体が飛び出し、天井に穴を作り、空の彼方へと消えていった。
……あれ?
これってどうやって測定するの?
……あれ?
リディーの俺を見る目が、グリフォンに狙われたチッケの目と同じなんだけど。
時間差で、メスシリンダーみたいな透明な容器が音を立てて割れた。
……あれぇ?
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