魅力値突破の『紅黒の魔女』
転道4
シグは転道者がよく思われていない原因、リズについて次の様に説明した。
10年前、転道者リズは自身の強大な魔力を用いて、当時大陸各国を纏めていた強国であるレイア王国を乗っ取り、そして女王の座に着いた。このため今では『簒奪さんだつの魔女』と呼ばれている。
そして、リズは様々な工作によって、レイア以外の国同士が争うよう工作し、大陸各地で戦争を引き起こしたそうだ。
そこまで聞いてカレンは浮かんだ疑問について問う。なぜ原因が、リズが奪ったレイア王国の工作にあると知りながら各国は戦争をしてしまうのか。
「原因がレイアにあると分かっても、魔女の戦力は強大で手を出せないってのも一つだが、戦争ってのはきっかけ一個あれば、そこからは当事国でヤったヤられたとなって引くに引けなくなる。
大きなドンパチはかなり減ったが、今でも同盟国以外とは何かのきっかけさえあれば大きな戦闘が起きてもおかしくない国が多い」
「魔女がいくら強大でも、全ての国が結束すれば勝てるんじゃないんですか?
シグさんの言うように、一度戦争が始まればなかなか止めることが出来ないと言うのも分かりますが……」
「レイアってのは大陸全土を纏め上げた強国だ。
ただでさえ大陸一の軍事力を誇ってたのに、更に魔女とその配下の絶大な力が合わさったんだ。
各国が手を取り合えばどうなるかわからんがな。
しかし、戦争は始まってるんだ。うまい例えとは思わんが、家族を殺した国への恨みを水に流して一緒に。なんて事にはならんだろう」
家族を殺した……そう言われてハッとするカレン。自身も今はあの犯人に復讐する事を目的として転道者となったことを思い出す。
「確かに、そうですね……」
「まぁそういう訳だから転道者というのは極力伏せて置くんだな。最悪魔女の配下だと思われるぞ」
シグから現在の世界情勢を聞けたことはカレンにとって大きな収穫だった。そしてついでにもう一つ気になっていた事を質問する。
「私が襲われていた時、どうしてシグさんは助けてくれたんですか。
相手は五人だったし、場合によってはシグさんも無事では済まなかったかもしれないのに……」
「さあな。俺も普段なら見て見ぬふりをしただろうな。
ただ、お前の姿を見て気付いたらもう撃っちまってた。魔が差したんだろうよ」
シグが話し終わると貰ったパンを口に放り込み、カップに残ったミルクを飲み干すカレン。それを見たシグはカップと皿を下げ、カレンを二階の一室のドアの前まで案内する。
「この部屋は使ってない。ベッドも有るから自由に使ってくれ。ただし、俺は面倒事は嫌いだから二三日中には出ていってくれ」
シグの申し出に感謝してから、部屋へと入るカレン。部屋の中には机と大きな棚が置かれ、窓の下には低めのベッドが横たわっている。棚の上にはぬいぐるみやおもちゃが所狭しと置かれていた。
たぶん子供部屋なのだろう。本来の部屋の主が何故いないのかと疑問に思うカレンだったが、そこはこれから数日の付き合いなのだから踏み込むべきではないと自分を納得させた。
靴を脱いでベッドに上がり、肩当てを外して服を床に脱ぎ捨て下着一枚になる。
(あれ? セロって下着にもなってるの? )
(ば、バカ! 下着にはなってないから!
それはあれだ! プレゼントだよ!
下着を着けてないのは色々と良くないからね)
何そのご都合主義。まぁ、下着がないのは困るので無理やり納得しておこう。カレンはそんな風に自分に言い聞かせる。
一旦ベッドに腰を掛けたのだが、壁際に姿見が置かれているのに気付き、再度立ち上がりそこに自分の姿を写した。こうして改めて自分の身体を見ると、さっきまで男だった事が信じられない。もうずっと女として生きてきたかのようだった。恐らくアルティの言っていた精神改変の影響なのだろう。
(しかし、我ながらなんと美しい。一言で言うと『エロい』。女の感覚にも関わらずそう思えるんだから相当なんだろうなぁ……)
しばし自分の身体に見惚れてから、カレンはそろそろ休もうと頭を切り替えた。シャワーを浴びたかったが、この状況でベッドで寝れるだけでも幸せなんだと考えベッドに横たわる。
窓の方を見ると、カーテンの隙間から満点の星空が見えた。
ーー此方の世界の方が星空が綺麗だな。
そんな事を思いながら、耐え難い猛烈な睡魔によって、カレンの意識は深い眠りに落ちていくのだった。
10年前、転道者リズは自身の強大な魔力を用いて、当時大陸各国を纏めていた強国であるレイア王国を乗っ取り、そして女王の座に着いた。このため今では『簒奪さんだつの魔女』と呼ばれている。
そして、リズは様々な工作によって、レイア以外の国同士が争うよう工作し、大陸各地で戦争を引き起こしたそうだ。
そこまで聞いてカレンは浮かんだ疑問について問う。なぜ原因が、リズが奪ったレイア王国の工作にあると知りながら各国は戦争をしてしまうのか。
「原因がレイアにあると分かっても、魔女の戦力は強大で手を出せないってのも一つだが、戦争ってのはきっかけ一個あれば、そこからは当事国でヤったヤられたとなって引くに引けなくなる。
大きなドンパチはかなり減ったが、今でも同盟国以外とは何かのきっかけさえあれば大きな戦闘が起きてもおかしくない国が多い」
「魔女がいくら強大でも、全ての国が結束すれば勝てるんじゃないんですか?
シグさんの言うように、一度戦争が始まればなかなか止めることが出来ないと言うのも分かりますが……」
「レイアってのは大陸全土を纏め上げた強国だ。
ただでさえ大陸一の軍事力を誇ってたのに、更に魔女とその配下の絶大な力が合わさったんだ。
各国が手を取り合えばどうなるかわからんがな。
しかし、戦争は始まってるんだ。うまい例えとは思わんが、家族を殺した国への恨みを水に流して一緒に。なんて事にはならんだろう」
家族を殺した……そう言われてハッとするカレン。自身も今はあの犯人に復讐する事を目的として転道者となったことを思い出す。
「確かに、そうですね……」
「まぁそういう訳だから転道者というのは極力伏せて置くんだな。最悪魔女の配下だと思われるぞ」
シグから現在の世界情勢を聞けたことはカレンにとって大きな収穫だった。そしてついでにもう一つ気になっていた事を質問する。
「私が襲われていた時、どうしてシグさんは助けてくれたんですか。
相手は五人だったし、場合によってはシグさんも無事では済まなかったかもしれないのに……」
「さあな。俺も普段なら見て見ぬふりをしただろうな。
ただ、お前の姿を見て気付いたらもう撃っちまってた。魔が差したんだろうよ」
シグが話し終わると貰ったパンを口に放り込み、カップに残ったミルクを飲み干すカレン。それを見たシグはカップと皿を下げ、カレンを二階の一室のドアの前まで案内する。
「この部屋は使ってない。ベッドも有るから自由に使ってくれ。ただし、俺は面倒事は嫌いだから二三日中には出ていってくれ」
シグの申し出に感謝してから、部屋へと入るカレン。部屋の中には机と大きな棚が置かれ、窓の下には低めのベッドが横たわっている。棚の上にはぬいぐるみやおもちゃが所狭しと置かれていた。
たぶん子供部屋なのだろう。本来の部屋の主が何故いないのかと疑問に思うカレンだったが、そこはこれから数日の付き合いなのだから踏み込むべきではないと自分を納得させた。
靴を脱いでベッドに上がり、肩当てを外して服を床に脱ぎ捨て下着一枚になる。
(あれ? セロって下着にもなってるの? )
(ば、バカ! 下着にはなってないから!
それはあれだ! プレゼントだよ!
下着を着けてないのは色々と良くないからね)
何そのご都合主義。まぁ、下着がないのは困るので無理やり納得しておこう。カレンはそんな風に自分に言い聞かせる。
一旦ベッドに腰を掛けたのだが、壁際に姿見が置かれているのに気付き、再度立ち上がりそこに自分の姿を写した。こうして改めて自分の身体を見ると、さっきまで男だった事が信じられない。もうずっと女として生きてきたかのようだった。恐らくアルティの言っていた精神改変の影響なのだろう。
(しかし、我ながらなんと美しい。一言で言うと『エロい』。女の感覚にも関わらずそう思えるんだから相当なんだろうなぁ……)
しばし自分の身体に見惚れてから、カレンはそろそろ休もうと頭を切り替えた。シャワーを浴びたかったが、この状況でベッドで寝れるだけでも幸せなんだと考えベッドに横たわる。
窓の方を見ると、カーテンの隙間から満点の星空が見えた。
ーー此方の世界の方が星空が綺麗だな。
そんな事を思いながら、耐え難い猛烈な睡魔によって、カレンの意識は深い眠りに落ちていくのだった。
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