ゲーマーでモブキャラ扱いの俺が何故かヒーローになった話。

怪盗80

第21話:出来損ないは恥ずべき事ではない。

そして、現在に至る。

「あぁ!?何言ってんだお前!」

「あー、悪りぃ!悪りぃ!なんか空気に流されちゃった♪」

「あー!てか俺も思ってはいたけども!」

「えっ、あっ…あの!私の事嫌わないの?その…」

先程の宣言の後、15分後に試合をすると言われたので各々で準備をしていた所にオドオドしながらエルが話しかけてきた。
その目には先程までの元気ハツラツな目ではなくどんよりしており、目も光を失っていた。
だが、先程の事とは関係なく勇人はエルの髪をガシガシしたりして元気づけていた。

「いや、嫌うとか嫌わないとか問題じゃねぇだろ?ただ俺達はあいつらにイラついただけだぞ?だからお前の為じゃねぇよ、な?煉♪」

「いや、待て。俺はそんな事…はぁ…そうだな…」

まぁ、勇人の演技に付き合ってやるか…。
俺だって、あいつの言い分には少し苛ついていた。
仕方が無く自分のデバイスを取り出そうとすると勇人が俺の手を止めた。

「どうした?俺が出るんだろ?」

「いーや、俺が出る!出なきゃいけないんだよ!」

「てか、とりあえず、お前はデバイスを…いや、何でもないw」

何かがおかしい様に笑う煉にエルは何のことかと首を傾げる。
美鈴から強制的に連絡が来て数分後に黒色のアタッシュケースが勇人に届けられた。
その中には俺の戦闘服とは違いただ腰に巻くベルト、そのベルトにはデバイスを入れ込むホルダー複数あった。

「あのよ…少し聞くが…美鈴は俺の事を嫌ってるのか?」

「さぁーな、でも嫌ってないのは確かだな」

ドームに戻るとそこにはもう先程の学生が準備しておりその周りには多くの学生達がギャラリーとなっていた。

「あ?おいおい、なんだぁ?その服装、ベルトが変わっただけじゃねぇか!戦隊モノの変身ベルトかぁ?」

「生憎、俺はこーゆーのが好きなんですわ、いやーすみませんね、ベルトが変わっただけで」

「それに、俺達はあんた達に証明しに来たんですけどー?それともなんですかねぇ?もしかして負けそうだからそんな事言って自分の心を落ち着かせているんですかぁ?」

これはアレだ…うん、やめてくれ、隣にいる俺にも痛い目が…。
いや、こーゆー人に対して煽るのはいい作戦かもしれないけど!
ズレかかったベルトを整えている勇人は落ち着いた様子で笑っていた。

「テメェ…そこまで言うんだ、オラッ!さっさとやるぞ!」

「あっ、タンマタンマ、ちょっと待ってねぇ…」

「早くしろや!オラァ!!」

勇人が何かをベルトに入れ込んでいる時に不意打ちを狙ったのか大型の戦斧を勇人に向けて振り下ろす。
戦斧を振り下ろすのと同時に何かが吹っ飛ぶ鈍い音が聞こえた後にその場からは瓦礫が飛び、その周りでは粉砕されたコンクリートが粉塵となってよく見えなかった。
煙が晴れるとそこには地面に突き刺さった戦斧と…。

「何?パワー型?てか、不意打ちは駄目だろJK」

そこには…勇人の身長よりも大きく、黒を基調とし、刃には鈍い銀色を放つ大剣を地面に突き刺して笑う勇人がいた。
戦斧を持っていたはずの相手は反対側の壁に叩きつけられていた。

「「「「はぁあああ!?」」」」

ドーム内で練習を行なっていた生徒達が驚愕の声を上げてざわざわしていた。

「あー、ヤッベェ!どうしよ!一撃で折れなかった!煉どうすればいいんだ?」

「俺に聞くんじゃねぇ!とりあえず相手のデバイスの戦斧でもその馬鹿でかい剣で叩き斬れ!」

「おーし!行くぞ!!」

ズズズッ…。と引き摺る低音を立てながら突き刺さった戦斧に向けてゆったり歩く。
馬鹿でかい大剣を戦斧に向けて構えていた。

「オラァ!!」(バギンッ!)

振り下ろされた大剣の一撃によって地面に一つのクレーターが出来た。
鈍く、重い音と共にデバイスの戦斧は砕かれその場に粉々に粉砕されたデバイスがあっただけだった。

「ありゃ?結構これ重いな、ねぇー!これ何キロ?」

「えっと…500キ…」

困惑したままエルが口を開くがすぐさま吹っ飛ばされた先輩が声をあげた。

「ふ、ふざけんな!なんだその剣はよぉ!デカすぎるだろうが!てか!何で持てるんだよ!」

「知るか、気合だ!」

走り出して無理矢理にでも近接戦に持ち込もうと真正面から走ってくるが勇人は無慈悲にも大剣を振り下ろす。

「うがっ…」

学生が落ちた地面に一つのクレーターが出来上がるとそのまま伸びてしまった。

「これが…俺の力か…」

「いや、デバイスの力だろ、しかも…こんな奴らのな♪」

率直な意見を述べる俺に勇人は伸びている学生に向けて爽やかに笑う。

「これが、出来損ないの力だ覚えておきな!」

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