ゲーマーでモブキャラ扱いの俺が何故かヒーローになった話。

怪盗80

15話:主人公より友達の方が身体能力が明らかにおかしいようです。

「やったぜ!俺のデバイスじゃねぇかよ!全く…あるならちゃんとあるって…」

勇人がアタッシュケースの中で鎮座しているデバイスを手に取ろうとするとアタッシュケースごと遠くに飛ばされた。

「「「「は?」」」」

「うひゃひゃはははは!これは俺らのモンだ!テメェに渡すかよ!!」

テロリストの残党が残っていたのか、デバイスの入ったアタッシュケースをかっさらっていった。

「煉君!早く追っ…」

「ごめん…動けない…」

デバイスに血を使いすぎたのかその場にぐったり倒れ込んでいる煉を蹴りながら走り出す姿が一つあった。
そいつは必死の形相で走り出して人を一人でも殺しているような顔だった。

「待てやゴラァ!!それは俺のデバイスなんだから返せやボケェ!!!」

「いや、勇人君の物でもないんだけど…」

「美琴…助けて…」

顔を地面に伏せながら助けを求める。

「ごめんね!少し勇人君を追っかけて来る!!」

虚しく助けが通り過ぎていく。
代わりに結衣が俺の身体をズルズルと引きずってくれた。
だけど…顔を下にして地面を引き摺らないで…痛い。

「煉君、大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫、血が足りなくなっただけだから」

「えっ、その…何か手伝える事は?」

困惑しながら優しく身体を起こしてくれる結衣には感謝しかない。

「あー…俺のポケットにあるタブレットを出してくれれば…」

「えっと…これかな?この赤いタブレット」

「あー、それそれ、それ飲んで数十分すれば血が増えるけども…あいつら大丈夫かな…」

「た、多分大丈夫だよ!いつも引き篭もっていて倒れている煉君があんなに強いんだから!勇人君だって強いよ!」

慌ててフォローをしてくれるが所々で棘がある言葉に少しながらダメージを受けていた。

「それならいいんだけどなぁ…」



「待てやゴラァ!!!」

「ひぃぃぃ!なんで!?なんだよあの身体能力!なんでこっちから殴ったのに逆に俺の拳が痛いんだよ!」

「知るか!ゴラァ!!!」

怯えるテロリストに跨って勇人は拳を挙げてぶん殴っていた。
テロリストはもう涙目になっているがもう色々とダメなのだろう。

「は、勇人くーん?その人気絶してるからもう大丈夫だよ〜?」

「はっ!やっちまった…どうしよ…」

慌ててその場から遠ざかる勇人にため息を吐きながら膝をつく美鈴。

「こ、この事は私がなんとかするから…
煉君の方に行ってくれないかな?」

怯えるテロリストの前に笑顔のまま座り込む美琴の顔はいつもより笑っていた。
勇人は何も反論もせずに素直だった。

「……ん、分かった」

何かを察したように勇人がすたすたと歩き出したと思ったら数歩してから止まって背を向けたまま話した。

「あのさ…一つだけ忠告してやるけどよ…あいつは…いや、なんでもない…」

「何の事?ちゃんと話してよー!」

軽い冗談みたく笑って勇人を見る美琴に向けて首を振り向いて微笑みながら歩き出した。

「なら何の問題ない、それじゃあなぁ〜」

いつものように軽く笑って勇人は走り出した。
その後ろ姿に美琴は奇妙な恐怖を覚えていた。

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