ゲーマーでモブキャラ扱いの俺が何故かヒーローになった話。

怪盗80

第10話:オタクは面倒事には関わりたく無い。

ドーム内では一学年全生徒が何が起きるのかとそわそわとしていた。
そんな中、俺は美鈴から貰っていた革製のような黒い手袋を左の手にだけ嵌める。
美鈴によればコレは普通の刃物やデバイスの刃では切れないらしい、やけに装飾が厨二病みたいだが美鈴の趣味らしい。

「はい、ここでは一学年の貴方達のデバイスを探してもらいます、デバイスとは簡単に言えばこの学園都市での護衛用武器でありつつデバイスを使って戦闘をしてもらいます、この学園での戦闘を行いランキングが高ければ高いほど大体の融通が効くようになりますのでそれでは…」

説明が終わり出すとドーム内の壁から至るところまでデバイスが収納されており生徒達は飛びつく様に探し始めた。

「てか、お前も探さないとダメだろ?行くぞ」

「はいはい…」

壁から一つのデバイスを取り出して勇人が俺に試すように促し、こちらに試験用のデバイスを渡して起動しようとしても何も起きない。
手当たり次第デバイスを試すがすべて起動すらしなかった。

「なぁ…なんで俺出来ないの…」

「わ、分からないけど…そのデバイスが原因じゃないか?」

『おっしゃー!コレなら一番強いだろ!』

『あっ、私も見つけれた!』

だんだんと自身で使えるデバイスを見つけ出していく生徒達に焦りを感じる事もなく探していた。

「なぁ、おいお前一つもデバイス起動出来てないじゃんw」

「う、うっさい!アンタ達には関係ないでしょ?」

俺がデバイスを探していると遠くで口論が聞こえていた。
(あの子…確かツン10割の女の子だ。)
一人…失礼だが俺が見ただけで嫌な奴だと分かるような顔付きの男子生徒と女子生徒が言い合いになっているようだ。
そしてその一人は同じクラスのさっき話してきたツインテールだった。

「ほらほら、俺は出来ていてオマエは出来ないって事は出来損ないって事だよな?」

「は、はぁ?何言ってんのよ!私だって…」

「諦めろよwどうせお前は出来損ないなんだろ?だから退けよw」(ドンっ…)

その男子生徒はツインテールをドームの床に突き飛ばして笑っていた。

「なぁ、煉。あーゆー奴には関わらない方がいい、後で面倒くさい事になるしな」

「わ、分かってる…でも…」

何処の場所でもあんな奴がいるんだな…面倒くさいから関わらないでおこ。
ドーム内で響く笑い声が嫌でも耳に入ってくる。
隣にいた勇人は苛立ちながら目の前のデバイスを試していた。
勇人もこのような事は嫌いなのはいつも一緒にいたのでなんとなく分かる。

「そういえば、お前…倒産寸前の会社の娘だったよな…この前見た事があるけどさ、学園でも社会でも出来損ないって笑いが止まんないわw」

また嫌な笑い声がドームに響くとツインテールは立ち上がった。
立ち上がりながらその男子生徒に向かって強く言い放った。

「そんなの…分かんないでしょ!まだ全部のデバイスを試した訳でも…」

「ごちゃごちゃうるさいなぁ!ただの出来損ないは黙ってろよ!」

突然男子生徒がデバイスを起動し細い刀が形成されるとそれをツインテールに振り落とした…が。
数センチギリギリの所で左手の手袋でその刀を弾き受け止める。
弾いた時に火花が飛んだ。
あっ、本当に切れない、美鈴やるじゃん。

「あ、あの〜、それはダメでしょ君」

「あ?お前誰だよ?なんか田舎者の感じがするけどよwもしかしてこいつのクラスメイト?」

「そうだけど?俺は焔魔煉、この人のただのクラスメイト」

やれやれと面倒事に関わってしまった自分に呆れながら話し出す俺と後で来た勇人はいかにも、
またか…。
というような仕草で走ってきた。

「んで、そこの出来損ないをどうして助けた?教えろよwもしかして出来損ない同士で傷を舐め合いに来た?」

「い、いやー常識的に考えて見れば分かるでしょ?」

「だからなんなんだよ理由は!」

まずは落ち着け、呼吸を整えてから一気に空気を吸い込め。そうすれば反論できる。

「テメェが無抵抗の女の子を傷つけようとしてんじゃねぇよクソ野郎が…!」

いつぶりだろうか久しぶりに怒りを本気で表側に、声に出した。

「れ、煉君…なんで…?」

涙ぐみながら俺を見てくるツインテールにカッコがつくようにくさい台詞を吐くと後ろからプギャーwwと勇人の笑い声が聞こえる。
後で勇人は一発殴ろう。
自分でもどうしてこんなに苛立っているのかわからないけどとりあえず言える事はただ一つ体が勝手に動いていた。
俺は確かにゲーム好きの謂わばオタクだし、こんな面倒くさい事にも巻き込まれたくも無い。

「ただ、このクズ野郎にイラついた、それだけ」

だんだん野次馬が寄ってきたのを男子生徒が見るとにやけながら大声で叫んだ。
ゆっくりと自分の腰にあるデバイスに手を掛けて紅い結晶体が形を剣状に整える。

「お前…この俺に逆らったらどうなるのか…自分の身で味わえ!!」

相手は刀を形成したデバイスをこちら側へと大きく振り下ろす。
デバイスを起動した俺からだと少し遅く感じてしまう。
躱す毎に揺れる赤い結晶の剣がドームの光に照らされて赤い光を反射していた。

「当たらないな…どうした?」

「「やっちまえー!!!」」

「テメェ!避けてんじゃねぇ!」

「…」

一言だけ言ってから結晶の剣で相手の手に握り込まれたデバイスを剣で引っ掛けて遠くへ飛ばした。

「「「おおおおぉぉぉ!!!」」」

周りの野次馬から聞こえる声には反応せずに相手の目を見た。
相手は自身の手から離されたデバイスを見て慌てながらデバイスを持ち直した。

「ま、まだ…まだだ…!ここで…ここで負けたりしたら俺の名が…」

「はぁ…面倒くさ…」

デバイスをホルダーに収納すると疲労困憊の男子生徒に歩き出した。
至って何もせずにただ歩いていた。
近づいてくる煉に恐怖しながらデバイスで攻撃しようとした。

「…」

不可抗力で前に突き出した拳が相手の鳩尾に入り込み腹を抱えて悶えていた。
悶えている男子生徒の近くで座り込んだ。

「コレがお前がアイツにしていた事だよ、分かったら謝…」

「てめぇ!覚えてろよ!」

言葉を遮られてしょぼーんとなっている内心ドキドキしまくってた。
それは面倒な事に巻き込まれないかという前にカッコつけすぎたので黒歴史化しないかと心配していた。

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