オタクと元ヤクザが結婚したら…

かのちゃん

11 働きたい!?

さーて、由ちゃーん。おむつ替えようね〜。

「う〜!」

私達3人が住むオンボロアパートは、木造で、お風呂が狭いし、お化けが出そうな和風だし、
キッチンは小さく、エアコンがなくて扇風機で我慢してます……。あと、夜になったらゴキブリの足音が聞こえるし……。
由ちゃんが大きくなったら、就職して、ちゃんとした家に住もう。

「はあ〜。俺達が向こうに行ってる間、壁をねずみにかじられてる。」

今度、管理人さんに頼んでもらおう。
ピンポーン。
ん?誰だろう?
私は、スリッパを履いて、ドアを開けると……。

「由香さん!おめでとう!」

田中さん、三田さん!ありがとうございます!
田中正子さんと三田薫子さん!私達と同じオンボロアパートに住んでいて、いつも良くしてくれてるんだぁ。

「男の子だってぇ〜?」

「見せて見せて〜!」

「はーい!」







「可愛いわあ♡」

「旦那さんにそっくりね!」

アハハハハ。

「それより……今日はすごく暑いわね。」

「扇風機一つじゃ、夏を乗り越えることができないし、由ちゃんにとっても不便よね〜。」

はい……いつか就職して、3人で引っ越そうと思ってます。

「私もよ〜。」

「そういえば!一人暮らしをしていた林さん、耐えきれなくて、シェアハウスに引っ越したんだって!」

えっ!?いつ引越しされたんですか!?

「由香ちゃん達が福岡に行った1ヶ月後よぉ。大学の近くにシェアハウスがあったから、そこにはエアコンあるし、キッチン広いし、ゴキブリやねずみが来ないから安心したって!」

そんな……。林さんとは、夜ご飯を共にした仲だったのにな〜。私の妹みたいな存在だったのに……。

「あ!由香ちゃんによろしくって言ってたわよ!」

そんなんですか!?

「ええ!これ、林さんの電話番号と、住所!」

わざわざ書いてくれたんだあ。

「それと、由香ちゃんのご飯、とても美味しかったって言ってたわよ。」

ゔゔ……泣きます。






あ!もしもし?林さん?今授業?今からバイトかあ。田中さん達から聞いたよぉ。

「う、う〜!」

「お母さんは今、電話してるからだめだ。」

「あ〜う〜。」

「……ん?」

(由香が出産前に書いていたノート……。)

<生後2ヶ月の赤ちゃんの接し方…「あ〜」 「う〜」に答えてあげましょう!>

「……。」






「あ〜う〜あ〜う〜。」

「あ〜う〜あ〜う〜。」

ふう。すっかり長電話しちゃったぁ。

「あ〜う〜あ〜う〜。」

……遼ちゃんが、由ちゃんの手足を動かしながら、甘い声を出してる……。
あんな声出す遼ちゃん……めっちゃ気持ち悪い。

「遼ちゃん……?」

「……!?」

遼ちゃんは、私に気付いた途端、由ちゃんの傍からぱっと離れた。

「んんー!もう電話終わったのか。」

うん。林さん、すごく元気そうだった〜。
コンビニでバイトしてるんだって!

「そうかあ。」 

あ!遼ちゃんにも、よろしくって言ってたよ。

「おう。」

今度、大学の文化祭に来てって誘われたんだぁ。
由ちゃん、大学デビューだねえ。

「う〜!」

「……なあ、由香。」

ん?どうしたの?遼ちゃん。

「話がある。」

急に真剣な顔になって、顔を近づけて。

「俺、働きたいんだ。」

……えっ?

「由香と由太郎のために、何かしてあげたいんだ。」

えーっ!?

続く!

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