笑えない騎士団長の恋人役になった件

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魔物退治から、数日が経ったある日、
「ねぇ、アレン。買い物行かない?」
とラファが聞いてきた。
「ラファって何か買うものあるの?」
とりあえず、聞いてみた。
「女の子だもの。色々あるでしょ?」
「……服とか?」
恐る恐る聞いてみると、
「そうだねぇ……服だけじゃないかもなぁ……」
「まあいいや。んじゃ行こうか?」
「え?いいの?」
どうしてそんなこと聞くのかな……
「いいよ?暇だし。」
ラファと話してる時は楽しいけど、それ以外は暇暇暇暇なのだ。
「それじゃ行こう!」
ラファは乗り気だった。
そして、王都の街に出掛けた。
服屋に着くと、ラファがウキウキしながら服を選んでいた。
すると、店員が、
「ラファエラ様、こちらはどうですか?」
と聞いている。まあ、様付けなのはラファは貴族だからね。いいんだけど……
などと考えていると、
「ねぇ、アレン。これどうかな?」
と聞かれたので、顔を上げると、僕は息を飲んだ。
いつもの白いワンピースじゃなく、白いドレスだった。その服は、彼女の美しさを十分に引き立てている。
「すごく…いいと思うよ……可愛い。」
「えへへ、ありがとぉ///」
照れてはにかむラファはものすごく可愛かった。
その後、色々服を買い揃えている中、
「おや、騎士団長!こんな所でどうなさったのですか?」
そう、ものすごくわざとらしい言い方で声を掛けてきたのは、変態の副団長である。
「副団長、貴公が何故ここに?」
ラファの顔に嫌悪があらわになった。
「いえ、服を買おうかと思いまして……そちらは?」
「同じくだ。」
「そうですか……では騎士団長、私が見繕って差し上げましょうか?」
「いらん、アレンのみで十分だ。」
「平民如きに、貴族の貴女が似合う服なぞ分かりますまい!」
うわぁ、最低だな。ラファと一緒になりたいからって言ってそれは無いわ。
「おい、訂正しろ。寄りによって、私が敬愛する師の子息を愚弄するなど言語道断だ。」
ラファがキレた。
今、ラファのこめかみにビキビキ青筋が立っている。怖い。
「事実を言った迄です。それに、武器も持たないか弱き少女である貴女にこの人数を相手取れるとでも?」
そう、奴の仲間は五人居るのだ。ラファだけじゃあ、確実に喰われる。
「くっ……」
ラファは苦しそうに呻いた。
「団長様、ここは僕に任せてください。僕、実は、素手も強いんですよ?」
「アレン……では、私も手伝おう。」
「ダメですって、ここは、男である僕に守らせてください。」
「…………ッ!///」ズッキューン
ラファが照れた。
「騎士団長もそんなお顔をするのですね?余程、その平民がお気に入りですか?……じゃあこうしましょう。私達が、貴様に負けたのなら、このまま見逃して、近づきません。しかし、私達が勝ったら、彼女は私達が、エスコートしますが、それで宜しいですか?」
「いいよ。」
そう言うと、僕は目を閉じた。
一斉にかかってきた時、僕は、一気に拳を叩き込んだ。そして、全員がノックダウンした。ワンパンである。
「はぁ、準備運動が終わった。さて、行きましょうか?団長!」
そう言い、ラファの方に歩きだそうとした瞬間、足に針が突き刺さる痛みが走った。
「えっ!?」
僕は、訳が分からなかった。急に、足の力が無くなったのだ。
そのままどさりと、崩れ落ちると、副団長が僕の体を蹴りながら、
「オラッ!どうしたんだ?さっきまでの威勢はよォ!」
と言ってくる。
奴らが使ったのは、麻痺毒。僕の神経に打ったのだ。
「アレン!」
ラファが駆け寄ろうとしたが、起き上がって来た副団長の仲間によって、取り押さえられた。
「騎士団長を連れて行け。俺は、こいつを連れて行く。」
そう言うと、仲間にラファを連れて行かせたのは、ある工場跡である。僕はそこで、椅子に縛り付けられ、ラファは僕の目の前で、下着姿にされ鎖で拘束されていた。
すると、副団長が現れて、
「さて、取り繕うのも面倒だな……ラファエラちゅわぁん……今の気分はどうかなぁ?あっそうか!今、口が塞がってるから答えられないのか!」
ラファは口に詰め物をされていて、顔を羞恥と怒りで真っ赤にしていた。
「さて平民……今からてめえの目の前で、可愛い可愛いラファエラちゅわぁんを強姦してやるからよ?せいぜい見てな。」
そう言うと、副団長は服を脱いだ。
そして、ラファの視線がある一点をさした時、ラファの瞳が大きく見開かれた。
「ふぐぅぅぅ!ふぐぅぅぅ!」
ラファは暴れるが、身動きが取れていない。
「それじゃ、ラファエラちゅわぁんの初めて貰おうかな!」
そう言うと、副団長はラファの最後の砦を破き、ラファにのしかかるようにして、その行為をしようとした。ラファが涙を流しながら、泣き叫んでいる。
僕は、それを見た時、激しい憤怒に燃え、爆発しそうになった次の瞬間、
一筋の閃光と共に、二人の男女が現れた。
僕は、その姿を目に留めたとき、目を疑った。
何故なら、そこに居たのは、本来なら居るはずがないだったからだ。
「父さん……母さん……」
僕の両親だ。
「よっ、アレン。どうしてそんな格好してんだ?椅子に縛り付けられるなんて、らしくねえな。」
「アレン、大丈夫?」
母さんは心底心配したように、灰色の瞳でこちらを見て、父さんは、そう言いながら、剣を抜き、剣風で僕の拘束を椅子ごと斬った。
「ありがとう、父さん。」
「ん、そんで?何があったのか説明し……なくてもわかるな。」
と言うなり、父さんは、ラファを縛めている鎖を剣風のみで切り刻んだ。
僕は、ラファの元へ駆け寄ると、
「ごめんね、僕が油断をしたばっかりに……怖い目に遭わせちゃったね……」
と詰め物を取りながら言った。
すると、
「アレン……怖かったよ……ふぇぇぇぇん!!!!アレン……アレン……!!!!」
と子供のように泣きじゃくった。
「よしよし、もう大丈夫だよ。」
そう言って、ラファの頭を撫で続けた。
一方その頃、
「さて、現副団長殿?」
と父さんはにこやかな笑顔で言った。
「は……はひっ!?」
「この落とし前はどうつけてくれるのかな?これは、元聖騎士団長として見逃す訳には行かないのだが……」
「お……お許しください!」
「はぁ、まっ、お前は優秀だと聞く。そんな人材を切り捨てる訳には行かんな。それに、騎士団則違反でもないから、罰することも出来ん。という訳で、一ヶ月の謹慎を言い渡す。よく反省するように。」
と言い、父さんは僕を呼んだ。
「アレン、帰るぞ。無論、ラファエラも今日はうちに招待するよ。ちゃんと、ラファエラのお父様にも言っておくから。」
「ぐすっ……ありがとうございます……アルファ様。」
「うん、嬉しいんだけど……なんか波乱の予感が……」
という僕の呟きは誰にも聞こえていなかった。
「ところで、二人はどうしてここに居たの?」
僕は気になって聞いた。
「俺らも色々と買い物だよ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「そういや、お前の怒りって本当にわかりやすいな。普段温厚だからか。」
「えっ?マジ?」
「ああ、それでお前がいることがわかったんだから。」
そう言われ、何故ここが分かったのか納得した。
「さてと、帰ろうか。」
そうして、帰路に着く。
その最中、
「ラファ、僕は君の護衛失格だね……」
「え!?待って、まさか……私の護衛辞めるの?」
「僕は結局、君を守れなかった。だったら、僕じゃない人が護衛になった方がいい。」
そう言うと、両親が、
「ねぇアルファ、女心がわからないのは、親子似たもの同士だね?」
「言わんでくれ。ラティナと俺では、年齢が違いすぎたんだよ。」
「十歳なんて些細な差じゃん。」
「たしかになぁ……」
などと、割とどうでもいい話をしている。
僕の言葉に、ラファはこう答えた。
「アレンじゃなきゃダメなの……アレンだけがいいの……アレン以外を護衛にも、恋人役にもする気は無いの!!!だからアレン……ずっと私のそばにいてね……おねがいよ……私は、聖騎士団で、アレンしか信じれないから……大好きなアレンだけが頼りなの!!!!」
「え!?今……大好きって……」
「私は、一目見た時から貴方に恋をしていました。貴方の事が大好きです。良ければ、私と付き合ってください。」
「ラファ……ごめんね……」
「え……?」
「本当にごめん。」
「そ…そうだよね……いきなり告白されても困るよね……ごめん……アレンの前から居なくなるね……」
とラファがそこまで言うと、僕の頭に衝撃が走った。
「か…母さん!?」
「アレンには女心というものが分からないの?そんな言葉じゃあ誤解されるでしょう?」
「どういう……」
「アレン、しっかり一言一句端折らずに、ちゃんと言いなさい。」
「あっはい……ごめんね、残念だけど、今は受けれない。僕はまだ、ラファと会ってから数える程しか経ってない。僕は、ラファの事が好きかも分からない。大好きかもしれないし、愛してるかもしれない。分からないから、今はまだ付き合えない。けど、恋人役だったら、いいよ。とりあえず、そこまででいい?もう少し経って、僕が、ラファの事を大好きになってて、ラファが僕の事をまだ大好きであってくれたのなら、その告白を受けようと思う。これじゃあダメかな?」
「アレン……うん!アレンだぁい好き!」
そう言うと、ラファは僕の唇に軽くキスをした。
そうして、家に帰り、そこでは色々と波乱が巻き起ころうとしていた。

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