勇者に幼馴染と妹を寝取られたので英雄になろう

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授賞式後

「待って、という事はこの世界の最高神達はみんな帝国の皇族が依代なの?」

アルファは驚いて聞いた。

「いえ、私だけではありませんよ?例えば、王国の第二王女であるアルプス様にはミカエル様、ガブリエル様、ウリエル様、カマエル様、ラファエル様、イオフィエル様、ザドキエル様の七柱がおられますから。」
「そうなんだ……」

アルファにとっては知っている名前なのだ。まさか王国の第二王女に居るのが地球の七大天使だとは……

「ただ、依代とは言っても、かなり無力ですよ?無理に神の力を降ろしたら身体の方が悲鳴を上げますからね。かと言って私やアルプス様は『姫』という立場なので、そんなに鍛錬する訳にもいかないので、神の力を降ろすのは限度として3分間しか出来ません。それ以上すると……悲惨なことになりますね……約1時間でバラバラの肉塊になります。」
「それは……エグイな。」
「こんなのはまだ序の口で、愛の神になると良くて廃人ですよ?運の悪い人は、生ける屍と化します。」
「一体どうしたらそうなるのか……てか例えが……」

そこまで言うと、そういえば。とエルミアが言った。

「そういえばですね、公国所属の勇者と呼ばれる者はキュリオテテス様の話からすると……テンセイシャと呼ばれるものらしいですね?」
「そうなんだ?」
「はい、何か知っていますか?テンセイシャという言葉しか聞いてはいないので、全く分からないのです。」

エルミアはアルファが何か知っていると思い、聞いた。

「ごめん、そこまで博識じゃないからわからないや。」

アルファも同じ立場だったが、教えれはしなかった。
それを聞いたエルミアは、そうですか……と言ってそれから微笑んだ。

「もうそろそろ終わりますね……あの…実は私と一緒に陛下にお願いして欲しいことがあるのですが……」
「何かな?」
「私は、アルファ様の村に行きとうございます。」
「……つまり、説得をして欲しいと?」

アルファがそう聞くと、エルミアは恥ずかしそうに頷いた。さっきまでの表情とは違う。

「はい……」
「でもエルミアは皇女でしょ?」

と尋ねると、エルミアは照れ笑いをして、

「正直、帝位を継ぐのは第一皇女で第二皇女は嫁ぐのが仕事のようなものですよ?なので皇室にいないといけないという義務がないのです。」

と顔を赤らめながら言った。

「別にいいけど……」
「ありがとうございます!」

エルミアはパァーっと顔を輝かせた。

「それで……具体的にはなんといえばいいのかな?」
「そこは適当で……」
「いや無理だけど……」
「…………」
「…………」

2人は解決策が無くて黙っていた。
すると、そこへ誰かが歩いて来た。

「姫様、アルファ……如何した?」

騎士団長だった。

「騎士団長閣下。実はかくかくしかじかで……」
「よく分からんな……なんだ?そのかくかくしかじかとは?」

この世界はかくかくしかじかでは通じないようだ。

「……つまりこういうことです。」
「何も言ってないではないか。」

この世界は割愛という概念も無いようだ。

「エルm……第二皇女様が俺の村に行ってみたいから陛下を説得してくれと言われまして……」
「ほう?……実は陛下から言付けを受けてな、『第二皇女たるエルミアに世界を見せてやってくれ』だそうだ。説得の必要はなかったな。」

この世界は人の心が読めるのだろうか……アルファは読めた試しがないのだが……

「本当ですか!騎士団長閣下。アルファ様、母u……陛下に感謝を伝えに参りましょう!」

そうして、エルミアに手を引かれるまま、皇帝のところへ行ったアルファ。

「此度は第二皇女様のご同行に許可をいただき、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」

アルファとエルミアは感謝の意を述べた。
しかし、お願いしたのはエルミアであるが、感謝の言葉を述べたのはアルファというのはいささか奇である。

「いえ、聞こえていましたよ?貴方がエルミアを呼び捨てで呼んでいるところも、私を差し置いて楽しそうに話しているところも……」

皇帝の言葉は少し皮肉が込められていた。

「あ……えっと……いえ、陛下を仲間外れにした訳では無いのですが……」

アルファはかなり焦った。

「冗談ですよ?冗談です。それで、エルミアの件、よろしくお願いしますね?」
「はい。」
「出来るならエルミアに嗜む……護身程度の剣術も教えて下さると助かります。そうすれば、エルミアの加護の効力が伸びますから。」
「そうですか……ならば、第二k……エルミアを預からせてもらいます。」

第二皇女と言おうとして口ごもったのは、皇帝からちょっとした圧を感じたからだ。

「是非そうしてください。それとエルミア、こちらに……」
「はい……」

呼ばれるままエルミアは母である皇帝の元へ行くと、抱き締められた。
その時、アルファには聞こえていなかったが、

「頑張ってアルファをオトしなさい。」

と言われ、エルミアは顔を赤くした。皇帝はそこまで分かったらしい。
エルミアナ……それが帝国の皇帝の名前であり、エルミアとエルミナの母親だ。2人の名前は勿論母親から取ったものである。

翌日、帝国を後にすると、フェニックスに乗って帰った。帝国に近いとは言っても、帝都まではかなりの距離……鹿児島から東京までの距離はある。
だが、天然でジェット機以上の速度を持つフェニックスに乗れば、ものの1時間弱で着いてしまうのだが、エルミアは着く時にかなりぐったりしていた。

「エルミア……エルミア!着いたよ。」
「は……はい……ちょっと待ってください……吐きそうです。」
「吐かないでね……」
「何か薬は無いのですか?」
「ない。頑張ろう。」

アルファは笑顔でサムズアップした。
すると、フェニックスがやって来て、

「我が開発した胃腸薬だ。飲むと良い。」

と言い、包みを渡した。

「フェニックス?なんで胃腸薬なんか……」
「うっさい!私は暇だったんだよ!」

いきなり口調……というか一人称が変わった。

「あれ?フェニックスの一人称……」
「私はね……まだ成体じゃないの!だから中身は子供なの!分かった?」
「え?でもさっきまで我って……」
「威厳を出す為よ。何?悪い?」

不死鳥は、老体になると一定期間で燃え尽き、灰になりその灰から再び復活するのだ。フェニックスは実は転生してからまだ10数年しか経っていないらしい。

「あ……そうなんだ……焼きt……フェニックスって俺とほぼ同い歳なんだね今は。」
「アルファ?今私を焼き鳥って言おうとしてなかった?」
「いや全く?」

アルファはしらばっくれたが、フェニックスは心が読める。バレているだろう。
フェニックスは頬を膨らませてプスッとした顔でこちらを睨みつけてくる。

「可愛……はっ!?」

アルファはついついそう呟いてしまってから、フェニックスの顔を見た。
フェニックスは口と目を丸くして唖然としていた。

「え……今、可愛いって……」

そう言ったがアルファは無視を決め込み、村の中へ入って行く。
エルミアはもう飛行機酔いならぬフェニックス酔いがおさまっており、顔色は良さそうだ。ただ、フェニックスの顔は耳まで赤くなっていた。

そして、自分の家の近くに着くと、

「おう!帰ってきたかアルファ!」

おっちゃん達が迎えてくれた。

「ただいま、おじさん、おばさん。」
「おかえり、どうだった?」
「帝国が友好を結んでなお一層王国と共に守護してくれるって。あと聖剣と聖盾を貰った。」
「そうかい……やっぱりあんたは勇者だったんだね……」
「うん……そうだね……みんなの為に頑張るよ。だから、これからもよろしく。」

そう言うと、村中で拍手が沸き起こった。
そして村の皆に、フェニックスとエルミアを紹介して、一悶着(嫁騒動)あって、その日が終わった。

そして、翌日、王国から村に第二王女がやって来るので、迎えに行くことにした。

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