第155話　魔族城戦3

　俺達の前に現れた髭を生やした魔族。

「いやはや、まさかこの者達までも負けてしまうと驚きました」

　髭をなでながらゆっくりと辺りを見渡している。

「そこの少年は魔族序列トップの四人を倒しましたから警戒をしてましたが、そこのお嬢さん達もとは思いませんでいたよ」

　にやりとした顔でこちらを見ている。

「ですが、そろそろ終わってもらいましょうか。魔王様も復活されてやっと計画が動き出したのです。こんなところで邪魔されても困りますのでね」

　言葉が終わると同時に目の前から姿が消えた。

「全員、後ろに下がれ！」

　俺はそれだけ叫ぶと、異空間収納より剣を抜き三人の前に出る。

　キーン！

　そこへ、魔族の剣が振り下ろされてきた。俺はそれを受け止める。

「何？」

　それを見ていたシェリーとヒョウカは一体何が起こったのか分からないでいる。

　そして、ミカですら魔族の動きをとらえきれていない。

「ミカ!　二人のこと任せた」

　俺が後ろにいる三人の叫んだ後、周りから続々と魔族達が現れてきた。

「さあ皆さん、やってしまいなさい」

　俺と剣を交えながら、他の魔族達に指示を出している。

　数にして五十はくだらないだろう。

「さて、私共も楽しみましょうか」

「何を楽しむって？」

　俺の中で少しの焦りふが生まれていた。ミカ達に任せておけばあの程度魔族達なんて簡単に倒してしまうと思うのだが、心のどこかで心配があった、先ほどの戦闘での疲労それにより動きが鈍らないとはいない。

「決まっているでしょう。彼女達がやられる姿を見ることですよ」

「うなもん見せるかよ!」

　俺は、魔族を押し飛ばして一度距離を取る。

　目の前にいる魔族はアレクシス同格かそれより少し劣るくらいで気の抜ける相手ではない。だが、どうしても後ろが気になってしまう。

「お兄ちゃん心配しないで!」

　そんなことを考えているとミカの声が聞こえてきた。

「そうよ、私達をもう少し信用しなさい!」

「大丈夫!」

　三人からの声がとても頼もしいと思え。

　俺が集めた仲間。その仲間を信用しないといけないよなと心の中で思ってしまった。

「まかせた!」

　俺は振り向かずにそれだけ叫び自分の戦闘へと集中する。

「最後の会話は終わりましたか？」

「終わったとだけ答えておこうか」

　そう、これがお前の最後の会話と心の中で思っていた。

　俺はゾーンを使い身体能力を上げる。それに合わせて強化の魔法を使い身体能力を底上げ。

　俺達は、お互いに目線を外さずににらみ合っている。その中で何回もお互いにせめぎ合っている。

　この戦い先に仕掛けた方負けるとお互いに理解している。

「どうした？　攻めてこないのか？」

　少し挑発してみる。その間も目線は外さずにいる。

「いえいえ、そちらかどうぞ」

　動こうとはしない。

　辺りの気配は全て気で感じ取っている。そのうえで全ての感覚までも敏感にしている。

　そのため、微小な魔法ですら気づける状態にいた。

　俺の前に小さな魔力弾が飛んで生きていた。その威力はファイアーボールの数十倍もあろうかという威力の魔法で、当たればそれだけやられていただろう。

　だが、その魔法が当たる瞬間に剣を一振りして魔法切り裂く。これは剣に付与した魔法反射を使い消滅させた。

「やりますね。まさかその魔法に気づくとは少し驚きましたよ」

　驚いたと言っているくせに顔には余裕の表情すら見て取れる。

　集中力をより一層高める。

　すると、背後より飛んでくる、魔力の塊が二つ。剣で切り裂き消滅させると同時に剣から魔力が消えてしまった。

「かかりましたね」

　魔族はニタリとしたような顔を一瞬したのだった。