第126話　　一回戦　6

　ミカが勝利を収めた頃、シェリー達は、

「ヒョウカ大丈夫！？」

　ヒョウカとシェリーは苦戦を強いられていた。相手の二人の魔道士から放たれる魔法は威力はそれほどではないものの、数が多い。シェリーが何とか相殺をしていたがヒョウカは二人に近づくことが出来ないでいた。

「平気」

　一言だけ返ってきた。風魔法で相手の魔法を防ぎながら何とか前へと進もうとしている。

「あらあら、その程度実力でよくSランクになれましたね」

「本当に、あの坊やの金魚の糞でいて偶然そのおこぼれにすがれただけじゃないのかしら」

「そうね、でもあおの坊やも可哀想よね。リーダーの相手なんて」

「そうね、あの少女は偶然にも勝てたみたいだけど、坊やは無理ね」

「ええ、だってただの偶然でSランクになった坊やが勝てる分けないもの」

　魔法を放ちながらこちらに向って何かを言ってきているようだが何も聞こえないでいたシェリー。だが、シェリーよりも前にいて戦っていたヒョウカには二人の声がはっきりと聞こえていた。

「うるさい！」

　自分のことをなんて言われても我慢できる。この四人の中で自分が一番弱いと一番理解しているのはヒョウカ自身だった。だが、仲間の事、特にケンイチのことを悪く言われることに対しては怒りを抑えることが出来ないヒョウカ。

「あら、何か言ったかしら？」

「うるさい！」

　先程よりも大きな声を出したヒョウカ。そしてその声はシェリーまで届いていた。

「どうしたのヒョウカ」

　魔道士二人の会話が聞こえていないシェリーには、何故ヒョウカが怒ってるのか分からずにいる。

　ヒョウカは返事が返ってこない。

「そろそろ、終らせましょうか」

「そうですね」

　魔道士二人は魔法を放ちながらあらたな魔法を放つ準備を整えていた。

　違う魔法の同時発動はかなりの高等技術とされている。それをＡランク冒険者の魔道士が行ってるのだからさすがにＳランク冒険者パーティーの一員と言うことなんだろう。

　そして何かやばいといち早く察知したヒョウカは、

「お姉ちゃん、防御魔法の準備して！」

　大声で叫んだ。

　それと同時に、二人から先程までと桁違いの魔力を持った魔法が放たれた。

「インフェルノ」

　その魔法は、火魔法の中でも最上位の魔法とされている魔法であった。ヒョウカは風魔法で自身を包んで守りを固めて何とかしのぎきった。

　だがインフェルノは勢いを緩めることなくシェリーへと向って行く。

「お姉ちゃん！」

　ヒョウカが振り向いたときには、インフェルノがシェリーに直撃していた。

　シェリーのいた周囲は煙が立っていて何も見えない状況でどうなったかつかめない。

「あっけないわね」

「そうね、前衛の子をやり損なったの少し誤算だったけどまあ一人は倒せたわけだしね」

　煙が立っている場所を見ながら話している二人。

　そこへ、シェリーがやられたことで我を忘れてしまったヒョウカは、相手が油断している隙に間合いを詰めて接近していた。

「お姉ちゃんの敵！」

　おもいっきり槍で突く。

　だがその攻撃は簡単にかわされてしまう。だが、ヒョウカそんな事お構い何しに正面から連続で突きを放っていく。

　だがその全てかわされしまった。

「お粗末ね」

　魔道士の内の一人がそんな事を呟いた。

「たかだかその程度でよくＳランクになれましたね。まだ後ろにいた魔道士の子が残っていた方がもう少しましな戦いになったかも知れませんね」

　もう一人の魔道士が放った魔法がヒョウカに直撃。

「さて、さっさと終らせて向こうの加勢に行かないとね」

　もうすでにヒョウカに勝った気でいる二人。

　止めの魔法を放とうとしたそのとき、

「ライトニング」

　雷魔法が魔道士の一人に直撃したのである。