第1話　思いが叶い異世界へ

　どこからか声が聞こえてきた。


「俺と互角もしくは、俺よりも強いやつのいる世界にいけたらな」


　それは、若い男の声だった。声のした方を見てみると、一人の男が空を見上げていた。面白い男を面白そうな男を見つけたと思ったその瞬間、その男はトラックに引かれてしまったのだ。


　それを見た私は、その男をこの領域に呼ぼうと考えた。そして暇つぶしに彼のお願いでも叶えてあげようと思ったのだった。










　俺は目を覚すと、目の前に白いワンピースを着た銀色の長髪のきれいな女性がいた。横になっていた体を起こし周りを見渡すと、一面白一色で、目の前にいる女性以外は誰もおらず、何もなかった。俺は、自分の体を見渡すと傷一つなかった。


「やっと目を覚ましましたか。私の言葉は分かりますか」


　目の前の女性が話しかけてきた。


「分かります。あなたは誰で、ここは何処ですか？」


　俺は、話しかけてきた目の前の女性に聞いて見た。女性は少しにっことした笑顔を見せて


「私は、フィオーネ。魂を司る神をしているわ。あなたをここに呼んだのは、あなたのお願いを叶えてあげようと思ったからよ」


　目の前の女性は自分のことを神と言った。俺はそれを聞き少し笑ってしまった。そんな俺の顔を見て彼女は、少し頬を膨らましながら、


「君が聞くから答えましたのに、私の正体を聞いて笑うなんて失礼ですよ」


「すみません。でも神っていくら何でも信じられませんよ」


　俺は、その自称神に向かって言うと、


「分かりました。私が魂を司る神だと言う証拠を見せましょう」


　彼女は、立ち上がると、右手を前に出して何かを呟いた。すると、白い鏡みたいのものが現れた。俺も立ち上がり彼女の横に行き鏡を見てみると、そこに映っていたのは病院のベットの上で横になっている俺とそれを見て泣いている妹と両親の姿だった。それを見た俺は、


「俺は死んでしまったのですね」


「その通りよ。だからあなたの魂だけをこの私の領域に連れてきたのよ。これでもまだ信じないのかしら？」


　俺の体が病院にいて意識はこの神と一緒にいる。こんなものを見せられたら信じるしかあるまいと思った。俺は不思議に思ったので、


「なぜ、神様が俺の願いを叶えてくれるのでしょうか？」


　俺はあのとき願い事をしたと言うよりは、流れ星を見てただ呟いただけだった。それをこの神様は、流れ星に願い事をした物と勘違いしたわけだ。その事を知らない神は、


「それはね。まだ十八歳で死んでしまうあなたを少し可哀想に思ったからよ」


　これは嘘である。この神は、ただ面白そうだから暇つぶしになりそうだからと、言う理由だけで願いを叶えようとしているだけなのだ。だが、そのことを知らない俺は、


「神様は、どのようにして俺の願いを叶えてくれるのでしょうか？」


「まず、その神様って呼び方やめて。私のことは、フィオーネと呼びなさい」


　なぜかと、聞かせてくれなさそうな勢いで言われたため、


「わかりました。フィオーネ様」


　俺が名前呼びすると急に笑顔になり、話を続けた。


「あなたは、他の世界に行きたいと言いました。そこで私は、あなたを異世界へと転生させてあげようと思ったのです」


　異世界への転生と聞き、俺はフィオーネ様は何を言っているのだと思った。


「本当にそのようなことが出来るのでしょうか？」


　俺を不思議に思い聞いて見た。するとフィオーネ様は自慢げに、


「この私を誰だとお思いですか？」


　神様なのでは、と思った。


「そう、この私こそ魂を司る神フィオーネ様なのです。人一人の魂を別の世界に転生させるのなんて朝飯前ですよ」


　言い終わると、どや顔でこっちを見てきた。


「分かりました。フィオーネ様を信じてみることにします」


　俺は、フィオーネ様を信じて転生することを決意した。


「転生するに辺り何か欲しいものはありますか？」


　フィオーネ様は、俺に聞いてきた。その質問に対して、


「剣をください」


　俺は、迷いなく答えた。俺の答えに対して、すぐさまフィオーネ様は剣を三本用意してきた。一つは鉄の剣に見えるが、後二本は、赤色の刀身の剣と、薄青色の刀身の剣だった。


「その色の付いた剣は何でしょうか？」


　フィオーネ様は、俺の質問に対して、目を輝かせながら、


「よくぞ聞いてくださいました。まずこちらの赤の剣は、剛炎剣です。魔力を剣に流すことで、炎を纏わせることを出来る剣です。そしてもう一つの薄青色の剣ですが、こちらは、氷魔剣です。こちらは魔力を流すことで、冷気を纏わせて、触れる物を凍らせる剣です」


　なんかすごい剣を出してきた。お願いして何だけどここまでの物が出てくるとは、思ってなかった。


「お願いさせていただいてなんなのですが、このような物をいただいていいのでしょうか？」


　俺は、さすがにこれほどの物は貰えないと思った。


「いいのよ別に。どうせ私が持ってたって宝の持ち腐れになるだけだしね。持つにふさわしい人がいたらあげようと思っていたのよ」


　その言葉を聞き少し安心した。


「では、お言葉に甘えてありがたくいただきます」


　俺は、フィオーネ様から剣を受け取った。その後、


「私からのあなたへのプレゼントなのだけど、回復魔法と特殊魔法をあなたにあげるわ。さすがに剣だけと言うのも心許ないしね」


　フィオーネ様から、魔法を二種類授けてもらった。その後簡単にステータスや魔法の説明を受け、最後にフィオーネ様が、


「これからあなたの魂は、これから行く世界の赤ちゃんに宿ります。そして、次にあなたの意識が戻るのはその赤子が五歳になった時ですが、まああなたにとってはすぐのことでしょうね。記憶はこのまま引き継ぎますから安心してください」


　俺は、それを聞きここのままの姿で転生するのではないのだなと思った。でもそれはそれで面白いとも思っていた。


「それと、あなたに渡した剣だけど、あなたの魔法の一つ異空間収納に入れておくから、目が覚めたら特殊魔法で異空間収納を使って確認してみてね。それとこれは忠告なんだけど、特殊魔法は人前ではあまり使わないようにしなさいね」


　フィオーネの言葉を聞いた俺は、無意識のうちに一礼していた。


「やめてください。神として当たり前のことをしただけなのですから」


　フィオーネ様は、少し顔を赤らめて照れていた。


　このやりとりが終わると、急に俺の体が光り出した。


「もう時間のようですね」


　その言葉を聞き俺は理解した。最後に、


「あなたの二度目の人生に幸せがあらんことを」


　フィオーネ様の別れの言葉を最後に俺の視界が真っ白になっていった。








　だがこの時、ファオーネは彼の強さを勘違いしていた。その彼が転生先の世界で色々な事件に巻き込まれるのは、まだ先の話であった。