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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

ヴァルディリスと側近

 


 『ヴァルディリス城』
 『始まりの狩人と亡者の森』と『ガルデアの塔』から行ける広大な白き、
 いや、グレー、やや灰色の城、
 『王』、『ルアーノ・ヴァルディリス』が長い間治める城である。


 この『ヴァルディリス城』から行ける『先』、
 今現在『秘境』と成り果てている『神に至れぬ古竜の巣』
 そこへ至る唯一の道の開門が今回の最初の目的である、




「ほんとうに大丈夫なの?」




 旭は若干疑う、前方にいる騎士たちのことである。




 かつてガルデアの騎士だった『銀色の騎士』と、
 現ヴァルディリス王に忠誠を誓い、
 この城に霊兵となり根付く『白金しろがねの騎士』、
 それぞれ左手を後ろに、右手で武器を持つ、
 各々の武器を正面に構え、一向に動かない、
 白金の騎士のほうが若干白に近い色の鎧などの装備に包まれている。




「ああ、こいつらはもうそれぞれ全員旧ガルデア王と現ヴァルディリス王の命令がない限り、
 襲っては来ない、まぁ攻撃したら襲ってくるがな、」




「ふーん残念、かなりの数いるから良い複数相手の
 実践訓練になりそうなものなんだけど」




 3人等間隔で配置されている『白金の騎士』たちを
 ジグザグに回転しながら舐め回すように見る旭。




「まぁこれが終わったらヴァルディリス王におっぱい揉ましてやれよ、
 二つ返事で攻略を許してくれるぞ」




「…それで…いいんだ?」




 龍人の冗談に旭の足が止まる、問いかけが龍人に突き刺さる、




「…すまん、調子に乗った、できれば俺が揉みたい、」




 流石に失言だったとあっさり非を認め、できれば揉みたいでさらに台無しにする龍人、




「…ばか【そんなに揉みたいなら受け入れてくれればいいのに】」




 龍人の足元を、頬を赤らめながら虚空を見つめそう呟く旭、




「なんか言ったか?」




「なんでもない、」




 プイッと怒った感じで横に顔を向ける旭を気にしつつも目的地、
 この城の最深部『王の玉座』に向かう、
 偉く気合の入った装飾の金色が輝く基本黒色の鉄で作られた
 『王の玉座』の扉の前に辿り着いた。




「ここだ、開けるぞ」




 龍人は黒い鉄で作られた装飾の施された扉を開門する、
 その先にいた男にすぐ話をかける。




「…少し肥えたように見えるな、昔ほどの迫力がないぞ『ヴァルディリス王』」




 龍人は肥えたように見えるというが、客観的にはそうは見えない、
 その風体は白金の長い髪と、眼光鋭い青い瞳、
 高級そうな白金鎧や、腰鎧、
 足鉄甲を纏ったイケメン騎士、
 下着は黒いタイツ、
 被るタイプの青を薄くしたような色の花色のマントをした男。
 年齢は20代とも30代とも取れる。
 見る限り玉座に座る彼の身なりは威風堂々、
 『王』、と言われれば納得の風体と風格である。




「…だれだ、おまえは…ああ、懐かしいな、そう、『龍人』、『吾妻龍人』か」




 額に左手を当て口を動かしながら記憶を探り、
 答えに行き着いたヴァルディリス王は龍人を懐かしむ、




「そうだ、『吾妻龍人』だ、懐かしいのはお互い様だ、…そいつは、見ない顔だな」




 見ない顔、龍人から向かって玉座の左に居る一人の長身で黒髪の男、
 防具装備は軽装、左肩に甲冑があるだけで、
 黒い長袖と、
 白いズボンと黒い革のブーツのようなもの、
 軽量重視のスピードタイプだろうか、
 獲物は刀、『虎徹』。




「こいつは私の側近、『ハジメ・サイトウ』、だ、
 昔の側近は皆、『白金の騎士』になるか、浄化されてしまった。」




「ヴァルディリス王、私は『ハジメ』は捨てたと言ったはずだ、
 …まあいい、『サイトウ』だ、吾妻龍人、噂だけは聞いてるぞ、
 『転生』を目指す、頭のいかれたやつという噂をな」




「斎藤、一…これはまた、歴史上の人物に会えるとは光栄だな、
 それに若い、全盛期の容姿でこの世界に来るタイプか」


 この世界、通称『テラ・グラウンド』では全盛期の容姿で来る者もいる。
 基本性能はみな『体格』を除き一緒なのであまり意味は無いが、
 『体格』に関しては武器のリーチが多少伸びたりすることにより
 一定の調整がかかるが、それは僅かである、故に完全に平等ではない、




「どこぞの時代の斉藤 一と同姓同名なだけかもしれんぞ、」




「まぁそうかもだがそう考えるのが妥当だろう。風格もあるしな、
 ぶっちゃけどっちでもいいがその方が俺にとってはロマンがある」




「……何かを残したつもりも、記憶も、
 俺には有りはしないがいい迷惑だ。
 俺は、ただ長く生き延びることだけに長けた『亡霊』だ。この『世界』でもな」


 そう言ってある意味肯定した斎藤 一は口をつぐむ、




「で、今更何のようだ龍人、
 昔のように、『ガルデア』が墜ちた時のように、『続き』をやりにきたのか?」




 過去の続きをするなら構わぬぞと言わんばかりに殺気を放つヴァルディリス王、




「今のお前ならやれそうだが、そうじゃない、
 『神に至れぬ古竜の巣』に素材を探しに行きたい、ただそれだけだ」


 
 その殺気を見て、
 過去のヴァルディリス王より明らかに『ぬるい』と感じた龍人は余裕な面持ちで要件だけを伝える、




「…またか、……断る」




 その発言に一瞬龍人と旭は肩を落とすがバルディリス王は続ける。




「と、言いたいところだが、いいだろう、」




「話がわかるな、どうした? なにかあったのか」




 左肘で頬杖をかき、にやりと不気味に笑いながらヴァルディリス王は口を開く、




「勿論条件はある、うちの『サイトウ』と、立ち会え、この場で、
 なに、『死ね』とは言わない、
 久々に感じさせて欲しい、私に、この幾千の時、
 ここに留まり続けても聞こえ続ける最強の『脳筋』を、」




「……」




 無言の龍人にヴァルディリス王は続ける。




「刺激が最近なくてな、お前の言うとおり『肥えた』のかもしれない、
 …私は意味、『なにか』を渇望かつぼうしている」




「条件はそれだけか? ヴァルディリス王」




「もう一つある、持ち帰ったものは全て見せろ、
 そして私が欲しいものがあったら一つ、譲ってもらう、以上だ」
 そう言うとヴァルディリス王は目を閉じ、龍人の返答を待つ、




「…なるほど、了承した、シンプルなのは好きだぜ、
 柱石を使うのは俺でいいな? こいよ、新選組、3番組組長 斎藤 一さんよ」


 即決、すぐにでもかかってこいよ、
 龍人は大剣『ヴォルファング』を両手に展開させ臨戦態勢に入る、
 そして『闇の衣の柱石』を展開させ、闇の衣を纏い始める。




「いまは、ルアーノ・ヴァルディリスの右腕、『サイトウ』だ」




「『一』も藤田も、山口も、もう、捨てた、」




「……ッッッ」




 会話をただ見守っていた旭は感じる、緊張が走る、威圧感、ではない、
 語彙がさほどない旭は言葉にならない程の適切な表現が見当たらない緊張感を感じ、
 ただそこに立ち尽くす。


 サイトウの武器は、なんの因果か『虎徹』、
 この『世界』にただ一つある日本刀、
 リーチは大剣ほどまでない、
 ロングソードと変わらないだろうか、
 武器にはそれぞれ『モーション』、
 意識するだけで技術がなくとも出せるものがある、
 この世界の『システム』が許す平等の攻撃手段、
 だが、『サイトウ』はそれを無視し、
 モーションにない形の『突き』の構えをする、
 右手で虎徹を持ち、行なうは恐らく、
 『片手平突き』、新選組の代名詞、集団で戦う際、
 味方を斬らぬようにと考案されたという、その突き、




  ただ主に従い、主は『さい』を投げ、戦場に身を投じ、
  ただ、刀を『とう』じる、
  俺はもう一人の修羅でしかない、
  『吾妻龍人』、『最強の脳筋』、
  しかと見せてもらおう、






「いくぞッッ」






 勝負は一瞬、素早く直進し、間合いを詰める『サイトウ』、
 眼前にいるは、黒き闇の衣をまとう『最強の脳筋』『吾妻龍人』、
 常人なら、飛び込めなどしない程の、『オーラ』『殺気』『威圧感』、


 『サイトウ』は臆せず、ただ、『虎徹』で突きを行なう、
 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、龍人は全て躱す、
 いや、全てを躱したわけではないか、
 彼の頬を数回掠めためたので僅かのダメージが有る、




「(そんなに連撃して、スタミナ管理放棄か? 食らっちまうぞっ斎藤一ッッ)」




「ッッッッ!」




 大剣『ヴォルファング』二刀の左右の連撃、
 その迫力は、一言で形容するなら『絶望』、
 しかし、『サイトウ』は後方に回転し、
 これをギリギリで躱す、それは回避モーションではない、
 独自に回避する行動、そして空いた龍人の横腹に虎徹で横薙ぎを一つ入れる、




「…よく躱したな、『サイトウ』、」




「…恐れいった掠めただけで、このダメージだ、さすが『脳筋』といったところか、」




 霞めた胸元に目線をやりながら左手で撫でるサイトウ、
 目線を上げ龍人をその鋭い眼光で見つめながらさらに言った。




「あと一歩遅かったら連撃をもらい続け『大聖堂』行きだったぞ、化物め」




 突如として拍手が舞起こる、
 ルアーノ・ヴァルディリスが拍手喝采とまでは行かない、
 『わかった、わかった』という感じのテンポの拍手だった。




「見事だ、もうよい、見せてもらった、緊張感ある素晴らしい『衝突』だった。」




 ヴァルディリス王がもう満足したのか戦いの終わりを宣言する。




「なんだよ、もういいのかよ。本当に『肥えた』んじゃないのか?」




「そうかもしれないな、…サイトウ、案内してやれ、私は少し休む、」




 ヴァルディリス王は本当に疲れたような面持ちで眉間に手をやり目をつぶり
 もう片方の左手ははあっちいけと言わんばかりのしぐさを繰り返す、




「はい、承知しました、王。」


「ついて来い、案内する」




 サイトウと、龍人と旭は王の玉座を後にする。




「あいつは大丈夫なのか? サイトウ」




 王の玉座を出て、サイトウの背を追い、案内をされる龍人と旭、
 龍人はヴァルディリス王の様子が気になるらしい、




「どうだろうな、最近の様子が変わってな、お前の察する通り、
 そろそろやばいのかもしれない、
 それ故の『気まぐれ』なのだろう、
 まぁ俺は『最後』まで付き合うさ、どうせ、やることもない、
 お前のように『転生』に焦がれる選択肢もあったのだろうがな、俺は選ばなかった」




「…そうかよ」




 とある扉の前についたサイトウは持っていた鍵で扉を解錠し、
 開ける、その先は崖で、下一面には木が生い茂っていた、
 しかしその木々の中心は天高くそびえ立つもう相対するもう一つの崖、
 そこと繋がっているのであろう、エレベーターのような仕掛けが目の前にある。




「着いたぞ、ここだ、このレバーを引くと『からくり』が動いて上の丘に辿り着く、
 そこがお前達の望む、『神に至れぬ古竜の巣』の入り口だ」




「これで行けるんだ、強化素材あると良いなぁ」




 旭がそう久しぶりに発言する、




「…女、お前も『転生』を目指しているのか?」




 サイトウは旭にも興味があるのだろうか、問いかける、




「そうだよ、目指してる、」




 旭はその問いかけに即答する、




「…そうか、一応、名前を聞いておこう、教えてくれるか?」




「旭、朝凪 旭、朝の凪の数字の九を漢字で書いて日にちを日を書いて旭、」




 その名を聞くとサイトウはしばらく目を閉じ、すぐ目を開け、言った。




「旭、…か、…いい名前だな、
 せいぜいその『脳筋』を支えてやることだ、
 そのうち本当に脳まで筋肉になりそうに感じる、話し相手はいたほうが良いだろう」




「まぁそのつもりではいますけど」




「おまえ、結構お節介だな、サイトウ」




 今日出会ったばかりの二人に忠告するサイトウにお節介の烙印を押さざる得ない龍人、




「ふふ、かもしれんな、昔、誰かに言われたような気がする、」




 少し寂しそうな、哀愁漂う不敵な笑みをしたサイトウはレバーに手をかける




「レバーを引くぞ、しっかり乗っておけ」




 上に昇降するのであろう台座に乗り、龍人達は返事を返す、




「ああ、わるいな」
「いってきまーす」




『からくり』は無事動き、龍人と旭は上の崖、丘へと登っていく、
 それを眺めるサイトウは彼らの名前をただ呟き、何かを想った。






「…『吾妻龍人』、『朝凪 旭』、か、」






   なんだろうな、思い出す、
   『あの頃を』今となっては遠い遠い、
   あの『過去』を








「もう捨て、忘れ果てたと認識していたはずなのだがな」








 その想いの最後は思わず言葉にしていた。





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