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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

超えてみせるよ





「ッッッ」
「すごいっすごいっやばいっやばいっ」




 2対象に同じ魔法を同時に放てる魔法技量、
 対称が一人なら3つ同時に放てる魔法、
 そしてそれは威力的にはテラ・グラウンド最上位、
 そして眼前には気を離せない巨大な骨の魔王、
 巨大なエンチャント済みの燃え続ける炎を纏う極大大剣、
 龍人は本来の力を半分も出せないこの状況、
 これ程の危機、乗り越えてこそ『本物』、
 旭も、龍人でさえもまだ、試される側、
 試され、その屍を踏み越えていく『生者』、
 目的を果たすまでは『満足』など許されぬ、
 心の、愛の『亡者』。


 熱を帯びた巨大な極大大剣が熱風を感じさせながら放たれ、
 それを恐怖か、それとも武者震いなのか震える足を何とか動かし、
 寸前で炎の鉄塊を躱す旭。
 避けた後は地面から伝わる地面を削る剣の衝撃と熱風をさらに感じ、
 驚嘆の声しかでない。
 視界を遮られている龍人は、
 蒼黒の炎の結界を貫いてくる様々な角度からの攻撃をギリギリで躱し続ける。




「ほらほらどうしたの、防戦一方じゃないっ」




 戦いが再開されて数分、されど数分、この戦場の『数分』




「うるせぇな、今『レピオス』飲んでるんだよ」




「あらそう、回復してもまた削られ続けるだけよ、楽にならない?」




「…一つ教えといてやる、」




「あら何かしら?」




「…あまりしゃべるな、『位置』がばれるぞ」




 龍人は距離を詰め、右手に持つロングソードの連撃繰り出す、




「「!?」」




「とりあえず二撃は入ったな」


「(それにな、お前は測り間違えてる。
 お前を測り間違えた俺と同じように、
 『うち』の、相棒は、お前を支え続けたヘルウエイドと同じ、
 『捧げる』者でもあり、
 俺と同じ、『求める』者、でもある、
 そして、お前以上の『異常』で、『異端』、でもあるんだぜ)」




 龍人がそう思った直後、魔女アリデリーテに予想を超える雄叫びが聞こえる。




「「ゴォォォォォ」」




「!? ウエイドッッ、もうダメージをそんなにっ」




 5割のダメージを追うとヘルウエイドは攻撃力が増し、
 攻撃パターンが増えるそれを告げる雄叫び、
 魔王ヘルウエイドはそこまで体力値は高くはない、
 忘却の騎士エルディオンや、黒鉄の騎士長オルガルドよりも生者に近い体力値である。
 それでも生者よりは数倍は軽く超えてある。


「ちぃッ」


 予想外の展開に魔女アリデリーテは攻撃の矛先を旭に全て向ける。


「ッッッ」


 BOSSにも痛みはある、ましてや、かつては人、今も変わらない、




「おいおい、いいのかよっそっちに攻撃集中して」




 視界を遮られても、攻撃する手が凍りついても、
 左手を縛られ電撃を受け続けようとも、冷静に気配を察知し、
 龍人はアリデリーテに確実にダメージを与える。




「くっ」




 たまらずアリデリーテは龍人の距離を取る、
 6番目の炎魔法『容赦なき蒼黒の結界』は諸刃の剣でもある、
 魔法をかけた対象の炎に触れれば当然ダメージを追う。




「確かに、『そちら』がやや分が悪いようだな」


「ふふふ、はははっ、ハハハハハッ、その『言葉』、まだ訂正は致しません」


「?」




「わたしは、『魔女』アリデリーナ・アルフレード」




「私は本質的に『虚無』を完璧には使えませんが、
 私の抱える『光』と『闇』を利用し、
 擬似的にそれを『再現』、ワープぐらいなら使用することが『可能』」


「! おいおいおいおいっ、聞いてねぇぞっ」




「お喋りはここまでにしましょう、あなたの言うとおり、『場所』がバレてしまう」






「(わたしは『魔』女、『魔法』と、『魔術』の『探求者』、
 光と闇をつかい、『無』を作り出す、
 それにより、ワープを可能とする、さぁ踊りなさい、超えて見せなさい、
 思わせて見せなさい、吾妻龍人、朝凪 旭ッ)」


「チッ、旭っ気をつけろッ」


「ッッわかってるっけどっ、ちょっとっやばいっ」




 魔女アリデリーテが虚無に消えた瞬間、
 魔王ヘルウエイドは高く舞い上がり剣を地面に突き立てる、
 旭は攻撃自体は躱すが攻撃の際生じる衝撃に地面に足を取られ行動不能に陥る。
「(あなたは、この状況下で避けられる?
  彼の、あの人のあの攻撃に晒されて、突然、後ろに魔女が現れて、
 初見で、対応できる? 足は取られても、
 その実、行動できないわけではないのよ、
 それはあなたの創りだした人としての『所作』、
 だけど初見なら攻撃をもらうのは必然)」




「ッッッ」




 魔女アリデリーテは『戦慄』する、
 彼女の、旭の振り返る瞳を見て、『予感』する
 旭のした決断、刹那の思考の結果、
 それは、魔女アリデリーテの想像を凌駕していた。
「(後ろっ? 魔法? 直線的雷魔法? 避けられる、
 でも、この人の想像を、越えたら、
 精神的ダメージを与えられたなら、もっと『面白い』く――、)」




「わりぃな、『そいつ』、普通じゃねぇんだわ」


「なッッッ」




「(『かっこいいじゃない』)」




「ッッッ(嘘でしょっ)」




 旭の選択は、思考の結果は、
 大剣グレートソードの1番モーションの大きい、攻撃。
 それもあえて雷魔法のダメージをもらいながらの『右横からの回転二連撃』。
 魔女アリデリーナは魔法を放ちながら、
 そのダメージ覚悟の二連撃を食らい壁に打ち付けられる形で吹き飛ばされた。




「かはッッ」




 壁から地面に落ちたアリデリーナは旭の狙い通り肉体だけでなく
 精神にもダメージをきたしていた。




「はー、はー、はー、」




 たった三度、意識を冷静に戻すため呼吸を整えた、しかし、
 『魔女アリデリーナ』は旭を狙うであろう、
 そう読んだ龍人は、旭がいるであろう付近にアリデリーナの気配が消えた瞬間、
 そこに向かって走っていたのだ。
 そして標的である旭がそのアリデリーナの攻撃を貰おうが貰わなかろうが
 退けるであろうことまで龍人は予測した、
 『未来を見た』、と言ってもそれは過言ではない。


 動揺したアリデリーナの三度の呼吸、
 吹き飛ばされて壁に激突した壁際にいる彼女のもとに
 龍人辿り着くには十分な時間であった。




「あんまり手を出す気はなかったがあいつを見てたらな、わりいな」




 そう言うと龍人は連撃を繰り出す、
 アリデリーナ自らが龍人に可し続けている蒼黒の炎の結界に再び体を焼かれ、
 ようやく距離を取るが絶命寸前である、
 そしてその隙に、旭は魔王ベルウエイドをあと少しまで追い詰めていた。




「…やりますね、単純すぎましたか、あのお嬢さんにもやられました。
 ふふふ、あなたの『脳筋』が感染ったのかもしれませんね」




「ああ、そうかもな、だが、」




「終わりだ」






「まだ、あなたに負けてはいません」




 アリデリーナは虚無に再び消える、
 龍人は、虚無に消えたアリデリーナに聞こえない発言をする、




「ちがうな、」


「!?」


 虚無から出たアリデリーナは龍人に炎と氷の魔法攻撃を繰り出す、が、
 龍人はその攻撃を避けもせずただ受け止めながら助言をする、




「教えてやる、そいつはここに来てまだ『1ヶ月』」




「「ッッッッ」」




「確かに俺とお前は引き分けなのかもしれん、
 だがお前はどこか『俺』だけと戦っていた。
 それが、お前の『勘』を鈍らせた、それがお前の『敗因』」




「「おぉぉぉぉぉぉぉ」」




 ザシュッと、音を立て大剣グレートソードが背後から背中を通り、
 魔女アリデリーナの胸元に突き刺さっていた。
 アリデリーナの肩から2つに分かれた髪は胸元で一つにまとまっていたが、
 その髪の束はその衝撃で胸から離れ浮き上がる、




   まさか、強さが増し、攻撃パターンが増えた彼を、
   もう倒した?? 初見で!?




 その瞬間、魔女アリデリーナの体力は尽き果てていた。




「ふふふふ、ははははは、確かに、感じました、確かに、『思えました』」


  確かに、この髪型はやられた時に見栄えが少しわるいとも『想えました』




 顔を隠していたフードは取れ、
 素顔を晒したアリデリーテは健やかな顔で一時的にゆっくり消え行くその、
 旭に、微笑みかけた。




「…アリデリーナさん」




「そんな顔をするものではありません、旭」


「龍人を、この『脳筋』を頼みます」




 同じく旭に倒され、消えゆくヘルウエイドを旭の向こう側に視認しながらアリデリーナは想う、






  ああ、ヘルウエイド、ええ、そうね、強かったわ、
  危うく、満足しすぎて浄化され昇天してしまいそうになるくらい
  そうね、そう、あなたの言うとおり、この二人は、きっと辿り着く、
  わたし達が目指さなかった、目指せなかった『転生』という『希望』を


  『奇跡』を


   よかった、魔法を、魔術を探求して、自分の限界を感じ、
   満足してあなたと共にただ消えるのではない、
   あなたの『提案』を飲んで、
   本当に良かった。
   見届けましょう、それが、
   あなたの『勘』が導いた答え、『望み』、
   そして今はわたしの『望み』でもあるから


   旭、頑張りなさい、貴女の愛、届くと、
   わたしは信じているから




「消えちゃったね」
「ああ、また復活するがな」


「魔王とか悪い人のイメージ有るけどそんなことなかった。
 どこか似てるとすら思った」




「……そうだな、」


「その『アニマの結晶』、砕いてみろよ」




「え?」




「それはあいつらの一部、ちゃんと、受け止めておけ、
 刻んでおけ、忘れないうちにな、きっと『見せて』くれる」




 言われるがままに旭はドロップしたての
 魔女アリデリーナと魔王ヘルウエイドの『アニマの結晶』を空高く掲げ、砕いた。
 それは、彼女の想い、彼の想い、彼らの記憶、おそらく旭だからこそ、
 見せている、『記憶』、




  『超えられる?』『転生』はこれよりもおそらく、果てしない、
  あまりにも健気で、あまりにも無邪気に、研究をしてきたわたしの、
  わたしの素質を見抜き、ここでの生涯を捧げた男の、想いに、
  あなたは、これすらも超えていける?




「…うん、頑張るよ、アリデリーナさん、ヘルウエイドさん、」




 想いにに当てられ、旭は、静かに涙を流した。
 彼女は精一杯の意味を、想いを込めて誓った。




「…『超えて』、見せるよ」




 主を一時的に失った静寂の魔王城ヘルウエイドに、黒い雲が奏でる
 雷槌の雷鳴が響き渡った。





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