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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

アクセプタンス -受諾-

 


 『リディアの港』の一角、木で組まれた海の上にある休憩していた地面ではない、
 幾重にもある小屋、段差のある壁の上部の通路、
 リディアの港上部付近で獣の亡獣を苦もなく倒す男がいた、理道である、
 今日はなぜか一人である。
 空気を読んだのか、なにかを察したのか、そこに近づく影、
 体格のいい黒いボロボロのマントを羽織った大男が更に上の階層から近づく、
 上から理道に声を掛ける、




「よう、『理道くん』、」




 嫌味を込めて、その大男は理道正知に声をかけた、




「…あなたは、『吾妻さん』じゃないですか、どうしたんです? 
 昨日の今日というわけではありませんが、
 正確には一昨日かな、本当にどうしたんですか?」




 理道正知は顔だけ振り返り後方上に居る大男、龍人にそう返事を返した、




「くだらん詮索はしない、事情は知らん、だが―――、』




 前置きは『適当』に、
 一呼吸置き、
 『殺意』を込めて、
 『感情』を込めて、






「『カオスアニマ』を『賭けて』、俺と戦え、」






 龍人は、聞こえるように、脅すように、威圧するように、
 確かに『理道』に宣戦布告をした。




「ふふふ、ははははは、おかしいですね、実におかしい、
 一昨日、『今の僕じゃ倒せない』、と伝えたばかりなのに、
 わかって言ってるのはわかりますが、
 僕はやりませんよ、知ってますよね? 
 カオスアニマを賭けた戦いは互いの了承がないと、成立しないことは」




「俺と戦え、理道、」




 先ほどのオウム返しのように、だが、確かに『感情』は込められてる、
 『同じ』、『同等』の、『同質』の、
 いや、それ以上の二度目の、宣言、




「はははははは、面白い人ですね吾妻さんは、
 一昨日は苗字しか名乗っていませんでしたね、…まさちかです。


 僕のフルネームは『理道正知』です。


 理知的な道を歩く、正しきを知るもの、
 そんな感じのご立派な名前と苗字のフルネームですよ」






「『カオスアニマ』を賭けて、俺と戦え、『理道正知』、」






 彼のフルネーム、苗字を追加して、また懲りずに龍人はそう宣言する。






「はははははははっ、だからっ、戦わないって、言ってるでしょっ、
 面白いなぁ、
 でもそろそろいい加減にしてもらえますか。
 僕の腹筋にも鮮度というものがあるんですよ。
 そろそろ笑えなくなりそうです、」




「…そうだな、これでも戦わないか?」




 腹を抱えて愉快に踊る理道に、龍人は一枚の赤い紐に包まれた紙を投げ渡す、
 それを理道は見事掴み、紐を解き、理道正知の表情は変わる、




「!(…これは、『カオスアニマ』を掛けた戦いの際、
 条件を付与できる『契約書』、
 アイテールの大聖堂で『神の代行者ユーノ』に言えば
 タダで一日一枚くれる、誰も貰いもしない『クソアイテム』、
 『カオスの誓約書』、
 最後にもう片方の名前を書くことで書式は完了する、『あれ』か――、)」


 『カオスアニマ誓約書』、
 理道の思うとおり、アイテールの大聖堂、『神の代行者ユーノ』に言えば
 誰でも一日一枚貰える、『クソアイテム』、
 赤色の紐に包まれており、解き、開けて紙を見ると
 『契約』の意味を表す英語、『contract』と書かれており、
 真ん中のTは小文字ながら大きくtとなっており、
 少し小洒落ているのが余計に鼻につく、
 ろくに使われないゆえ通称『クソアイテム』である。


 真顔になり、テンションが落ち着いた理道に龍人は挑発を続ける。




「どうだ、これでも逃げるか、『理道正知』、」




 龍人は不敵な笑みを浮かべ、挑発を続ける。




「ふふふ、ははははは、ハハハハハハハッ、


 わたしの『腹筋』を破壊するのは作戦のうちですか?『吾妻さん』、見事です、
 わたしの『腹筋』は今まさに崩壊寸前ですよっ」




 左手で腹を抑え、右手で顔を覆い、少しずつ笑い声を高めていった理道は、
 その手の、指の隙間から覗く、瞳を、龍人の視線に合わせた。




「ああ、俺も名乗ってなかったな、
 そこに書いてあるように、俺のフルネームは『吾妻』、
 『吾妻龍人』だ、返事はどうした。
 『理道正知』、


 『イエス』か『ノー』か、」


 龍人は問う、『これ』でもやらないのかと、答えは2つに1つだと、












「「ッッッッッッイエス、ッイエスッイエスッイエスッイエスッ、アクセプタンッスッッ」」












「いい、いい、いいでしょう、やりましょう、あなたが、
『吾妻龍人』が書いたこの『カオスの誓約書』に誓って、
『理道正知』は『これ』を了承しますッッ」








   このハンデなら余裕ッッ








 連続で頭を揺らし、
 ド派手にシェイキングしながら『了承』を連呼する理道は、
 実に楽しそうな様子である。
 さすがの龍人もその様に、愉快さに、
 不本意ながら釣られニヤけてしまう。




「ですが、条件があります、『場所』は『ここ』ではない、
 やはり、『始まりと終わりの村』、『アイテール』がふさわしい、
 『観衆』は必要ですッッ」




「わかった、『それで』いい、行くぞ」




 思考する必要などない、それで『了承』するのなら、
 龍人はそれを拒む理由は何もない。
 たとえそれが勝ち目がなかろうとも。
 たとえその誓約書の内容が『理不尽』だろうが、
 どれほどの『不利』を被ろうとも、
 『勝率』が『1%』もあればいい、
 いや、『1%』もなくていい、
 舞台に上がってさえくれれば『それ』でいい。


 龍人は、闘志を漏らさぬよう、殺意を漏らさぬよう、
 その怒りの全てをぶつけるために、今は抑えるために、


 恐ろしいほどに静かに笑った。





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