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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

キンキンに冷えた水

 
 旭と出会い6日目の昼、龍人と旭は小休止のため
『始まりと終わりの村アイテール』の西にある
『リディアの港』に来ていた。


 『リディアの港』、
 『港』とはなっているが今は使われていない。
 海の向こうに何があるのか、
 かつての先人達が調べるために船を作り、試したが、
 なにもないことがわかり、
 結果放置されたステージだ。


 まだ旭を連れて攻略はしてはいないが狼のような猛獣と、
 亡者、朽ち果てた戦士、などのモンスターがいる、
 難易度は『始まりの狩人と亡者の森』より1段階、
 2段階程度むずかしい場所である。
 空には雲が多く、薄暗いため、
 街灯のようなものが不規則に建てられている。


 この日龍人と旭は、
 『リディアの港』から行ける『灼熱の黒鉄城』を攻略していた。


 『灼熱しゃくねつ黒鉄城こくてつじょう』、
 名前の通り『灼熱』
 これがゲームならなんの問題もないのだろうがこれはゲームではない。
 その城の暑さは、熱さは、尋常ではない。
 必然的に装備を脱ぎ、涼しい状態にならないと、
 とてもじゃないが攻略はできないやっかいなステージだ。
 だからこそ今、龍人も旭もとても涼しげな格好をしているのだ。
 二人は今『リディアの港』の海の水の上、
 木の板でできた通路に腰を下ろして涼んでいる、




「まったくなんなのよっ、あの『灼熱の黒鉄城』っての、
 おかしいでしょ、
 ばかでしょ、
 何考えてるのっ」




 旭の格好は純白とは言えない白く薄い布を胸に巻き付いた状態
 肩紐でなんとか支えている、下も同様で、
 紐付きビギニ水着のような状態と言えばわかりやすいだろか、
 肌の露出度は限界ギリギリで、
 旭はリディアの港からわずかに見える『灼熱の黒鉄城』に向かって罵声を浴びせる。
 栗色の髪はまとめられてポニーテールになっている。




「まぁそれには概ね同意だが、
 そのおかげで攻略しようとする輩があまりいないのも事実だからな。
 あまり狩られない性質上、行けばだいたいいるし、
 他者がいてもそれに応じて敵も多く出現してくれる親切設計で、
 敵の量も多い、良いアニマの稼ぎ場だ。
 そしてやつらはなかなか強いうえに、
 複数を相手にしなければならないシチュエーションが多い、
 やりがいがあっていいだろ」




 そう龍人は上半身裸の防御力皆無の茶色の布短パンで
 下半身の露出を守っているだけの原始人スタイルで利点を述べる。




「そうかもしれないけど、温度高すぎて防具が装備しづらいってどうなのよ」




「言い伝えによれば黒い城を作りたかった王がいて作ったらしいが、
 その後溶岩が吹き出てきて
 それすらも城の一部として取り入れようとした結果、らしいがな、
 黒と相まって、たしかに熱くてかなわん、
 幸い床は灰色の普通の要石で助かるがな、
 あれで床まで真っ黒だったらやってられん」


「なので頼む」




 龍人は、おもむろに水筒を差し出す、
 ボロボロの水筒を旭に向けて差し出す。
 『生者の水筒』一日3リットル、
 自然に満たされる1リットル程度が入る程度の水筒、
 円型に円柱の飲みくちが付いた形の変哲もない不思議な水筒である。




「しょうがないわね」




 そう言うと、旭は少し龍人と距離を取り『氷魔法』、
 『すべての罪に突き刺さる氷の雨』を放った。


 旭を中心に半径3.5メートルの範囲に長さ平均85センチ程の
 両先端が尖りきった中心部は直径25cmはある氷の雨が降り注ぐ、
 その氷の雨達は間抜けに
 リディアの港の人の手で作られた海の上の木の通路に突き刺さる。




「ほら、後は自分でやりなよ」




 龍人はその間抜けに突き刺さった氷の先端を鷲掴み
 砕いて程よい大きさになった氷達を水筒に招き入れる。
 しばらく水筒を適当に揺らし水と氷を踊らせ、
 しばらく放置した後、
 中の水を一気にグビグビと喉を鳴らしながら口にする。




「ッッッキンッッッキンに冷えてやがるッッッ」


「ぷはぁぁぁッ、ほんとね、氷魔法便利だわー」




 ほぼ同時に旭も『キンキンに冷えた水』を飲み干す。
 旭が使った氷魔法、
 第2氷魔法『すべての罪に突き刺さる氷の雨』は
 『始まりと終わりの村アイテール』にいる三人の商人の一人、
 主に魔法系の武器武具、
 そして魔法を売る、女商人『シエスタ・パンドラ』から魔法を購入し、
 使用できるようになったのである。


 『魔法』、
 『法力』と呼ばれるステータスが初期状態から1上がれば
 『炎』、『氷』、『雷』、の魔法を使用することが許される。
 数値が上がれば威力が上がるのは当然として、
 リキャストタイム、次に魔法を撃つまでの時間が短くなるなどがある。
 『法力』とは別に『術力』はまた別ステータスで
 『光』『闇』『無』属性の『魔術』が使えるようになる。
 だが『魔術』は『魔法』のように複数は使えない、
 その者の『本質』が大きく関わり
 『光』を使えるものは『闇』と『無』の魔術は基本的には使えない、
 他の組み合わせも同様であるがそれはあくまで『現時点』では、
 というお題目が全てのものにつくのは忘れてはいけない。
 ここは地獄、未知の世界『テラ・グラウンド』なのだから。
 『例外』はあるし、人の可能性は一つではない。


 ともかく旭は、『法力』のステータスを最低限上げ、
 女商人シエスタから『魔法』の『理念』を一つ購入したのだ。
 各魔法には現状5種類の魔法がある。
 購入にそれなりのアニマが必要ではあるが
 『理念』は、一度買ってしまえばこの世界にいる限り
 使うことができるので安いものでもある。
 何一つ購入しないのは龍人くらいなものだろう。


 『理念』、は宝石のようなもので、
 ステージ『詩姫の祠』で取れる魔晶石に魔法を知るものが『理念』、
 即ち魔法を撃つつもりで詠唱し吹き込むことで伝承できる。
 詠唱と言っても『この魔法出したいのん』と
 『の◯のんび◯り』気分で願うだけでいいので言葉を発する必要はない。


 『魔法』はそもそもこの世界の始まりには存在しなかったと言われている。
 ステータス上は存在していたが、
 最初の魔女『アリデリーナ』によって創造されたと言われ、
 今に伝承され続けている。


 女商人『シエスタ・パンドラ』は魔法系装備を脳筋連中から買い取り、
 魔法系を生業とする生者にそれを売る、
 魔晶石を仕入れて、それに理念を伝承させ、
 この世界に来たものに売ることを生業とする商人、ということである。
 この先は『灼熱の黒鉄城』に行く前に溜まったアニマで
 『始まりと終わりの村アイテール』でシエスタから魔法を買って来た一部始終である。





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