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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

それぞれの理由





「まだ落ち込んでるのか?」




 ズズズと暖かなお茶をすすりながら龍人が旭に尋ねる。




「…しゃべりたくない」




 龍人に背を向け薄茶色の布を体に包ませ横になっている旭はそう言葉を返す。


 今晩の野宿ポイントは『ガルデアの塔』の塔と塔の間に複数ある中間地点、
 大きな広場のような場所から少し階段で外れた場所にある海にも入れる休憩ポイントである。




「…今日のお前は、点数をつけるのなら99点だったよ、
 …まぁ、この世界では残り1点が時に命取りになる、ただそれだけだ」




「……」




「お前にとって今回それを知る良い機会だった、
 ただ、ただそれだけだ。
 そこまで反省しているのなら、
 そこまで反省できるやつだとわかったなら、
 俺はお前を責めたりはしない、むしろ好ましくも思う。」




 龍人は少し笑みを浮かべながらそう言った。




「……やけに、今日はやけに優しいのね」




 半分起き上がり、龍人の方に目をやる旭、




「…喋りたく、なかったんじゃないのか?」




 その旭に龍人は視線をやり、先ほどの言葉を、『喋りたくない』と言った彼女自身の言葉の矛盾を突く。




「…やっぱり訂正、意地悪、」




 旭は龍人の視線をしっかりと受け止め、目を逸らさずに顔を、いや頬を膨らませた。




「ふふ、そうだな、俺は意地悪だ」




 手に持つコップの中に浮かぶ温かいお茶に視線を落とし
 少し手を揺らし転がしながら気分よく意地悪げに龍人は笑う。




「いや、悪いな、『転生』を望む奴など調べたわけではないが、
 中々いないんでな、
 少なくともお前の姿勢に、姿に、
 『本物』を感じてしまってな、
 嬉しくて意地悪をしてしまった。」




「……龍人はどうして『転生』を望むの?」




「俺か? …そうだな、
 …まぁいいだろう、話して減るものでもないしな、―――だが、」






「本当に聞きたいか?」






  龍人は念を押す、言葉で、視線を旭に再び向けて真剣な顔で、そう尋ねる、




「…聞きたい」




 旭も真剣な顔で、その問いに頷き聞きたいと返した、




「…わかった」




 龍人は持っていた愛用の薄灰色のコップを地面に置くと語り出す、
「俺は、長い間父親に虐待されていてた、
 だが、力が足らないと自分が悪いと思考をめぐらせ続けた。
 どうすれば親父に、理不尽に抗えると思い続けた、
 だが、中学くらいの時だ、
 まぁ端的に言うと虐待していたクソ親父が酒に溺れて意味『溺死』したんだ」


「親父が死んだ後も、親父をどうしたら抑えられるか、とか考えていたんだが、
 しばらくして気づいた、
 親父は死んだのだからそんな対策必要が無いってな。
 そしてそこから、世界が変わったかのように、色が付いていることに気がついた」




「勉強も多少はした、遊びも楽しんだ、
 ゲームもした、漫画も読んだ、夢もできた、
 話が逸れそうだな、
 そして、好きな人もできた。
 まぁ一目惚れしてしまってな、必死というか俺なりにアプローチした。
 そんな行動が、どう公をそうしたのか付き合うことになってな
 お互い共働きではあるが結婚した。すぐに子供を授かった」


「幸せな日々が続いた、苦しいこともあったがな、
 それでも昔に比べれば、なんでもイージーゲームだった」


「31になった時だ。妻と、息子は自宅で無惨にも殺された。」


「妻と子供を殺したやつは、すぐ逮捕されなくてな。
 俺は独自に仕事をそっちのけで、そいつを探し見つけ、
 まぁ、端的に言うと殺しに行ったんだが、狡猾なやつで、
 気配にも敏感なやつでな。
 俺の図体も殺意も分かりやすかったんだろう、
 逆に罠にかけられて殺されてしまった。
 そして俺はこの『テラ・グラウンド』にやってきた」




「だから、それが『理由』だ、
 ようやく幸せになれたのに、
 それをぶち壊しにした糞野郎に返り討ちにあって殺されたんだ、
 情けないが、俺は奴を殺さないと気がすまない、
 これが俺の『転生』の『理由』だ」




「……そっか、」




「お前は、朝ガキはなんでなんだ、喋りたくないなら別に構わんが」




 龍人は視線を旭に向ける、語る龍人を見つめていた旭と視線が合う、




「…この空気でも普通に呼べないの、まあいいわ、私も話とく」




 体育座りをしながら未だまともに名前を呼んでもらえないことに不満気な顔を晒しながらも、
 表情を改め、旭も話し始める、




「といっても似たようなものだけど、男に襲われてね、
 乱暴されそうになって、抵抗したら殺されちゃったの。
 もっとうまく、対応できてればよかったんだけどね、
 ちょっとドジっちゃって、死んじゃったんだ」




「…それで、『転生』したらお前はどうするんだ?」




「…もちろん『復讐』したい気持ちはあるよ、
 気持ちはあるけど、私はそれよりも、それよりもね、私は謝りたい」




「…謝りたい? 誰にだ?」




「私のお父さん、離婚して、男手ひとつで私を育ててくれてた、お父さんに。
 先に死んじゃってごめんなさいって」




「…そうか、お前の『理由』はわかった、悪いな、話させて」




「お互い様でしょ」




「そうだな」




 互いの『転生』を目指す『理由』を聞いて、
 少しまた距離が近寄ったようにも見える、
 しかし後、何度、夜を越せばそれは叶うのか、叶わないのかも、
 まだ、誰も知らない。






「月が、きれいだね、龍人」


「…ああ」






 夜は更けていった。







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