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カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

おじさんとエルディオン



 『忘却の騎士エルディオン』、


 龍人はかつて、
 生前の彼と戦ったことがある。


 旭が戦っているこの場所で、










「どうしても通さないか、『騎士エルディオン』」








 今と容姿も格好もあまり変わらぬ龍人は言う、
 変わっているのは持っている装備ぐらいなものか、
 『大剣ヴォルファング』ではなく、まだ『大剣グレートソード』、
 装備重量と、ほどほどの筋力だけを求められる灰色のスタンダードな大剣である。




「わたしはここを任されている、
 信頼にこたえるのが我が忠義、
 許可無きものを通す訳にはいかない、
 『吾妻龍人』とか言ったな」




『騎士エルディオン』、
 本名 エルディオン・ハイマー、
 金髪の青年、
 顔立ちの整った顔、
 銀色の鉄甲や、足鉄甲、鎧を纏う、
 右手に持つのは『銀色の騎士のロングソード』、
 左手には中盾『銀色の騎士の中盾』、


 そしてこの時はまだ他の生者を攻撃するために、
 『闇の衣の柱石』を使用し闇の衣を纏っている、




「…そうか、なら、力尽くで行かせてもらう」




 龍人は一本の大剣グレートソードを両手持ちで構える、




「やれるものならやってみろ、」




 騎士エルディオンも『銀色の騎士のロングソード』を構えた。




「「行くぞッ」」




「「「オオオオッッッ」」」




 その時の結果は引き分け、
 まだ龍人もこの世界に来てまだ、
 年を数えていた頃の話である。




「はぁッはぁッはぁっ…、やるなお前、
 今日は引いといてやる、
 どの道この先に用があるわけじゃない、
 できた塔を拝んでみたかっただけだ、悪かったな」




 龍人は構えを止め、エルディオンに背を向ける、




「はぁッはぁッはぁっ…尻尾を巻いて逃げるの間違いじゃないのか?」




「それでもいい、
 俺はお前が気に入った、
 俺の知らないところで記憶をなくして
 『意味』死ぬんじゃないぞ、」
 龍人は歩く、逃げたで構わないと、
 右手で大剣グレートソード持ち肩で担ぎながら、左手を上げ手を振った、




「……承知した」




 騎士エルディオンは少し嬉しそうに、笑みを浮かべた。




 龍人は旅をした、
 し続ける、
 未知の装備を求め、
 レベルを上げる為のアニマを求めて、
 『転生』への備えをするために、
 何年、何十年経ったのだろうか、
 ある日、龍人は久々に騎士エルディオンに会いに行った。




「元気してたか、エルディオン」




 陽気に話しかける龍人、
 その右手にはまだあの時と同じ大剣グレートソード、




「エルでいい、龍人、」




 以前と違う鎧、鉄甲、足鉄甲、剣、そして兜、
 全身銀色の装備を纏ったエルディオンはそう言った。




「ここに来るまでのあいつらはなんだ? 何かあったのか?」
「…? 何だエル…その鎧は、その兜は、」




 塔の柱の影で遠目には分からなかったのだろう、
 近づくにつれ、様子が違うことに気づいた龍人は当然聞く他ない、




「実はな、肉体を捧げ、この地に、この塔に全てを捧げたのだ。
 『信仰』が、『忠誠』なすこの世界の『奇跡』らしいな」




 エルの告白に龍人は黙考する、
 ここに来るまでぶちのめした以前は生者だった者達が霊体化していた事実を、
 それをエルディオンも行っていたこと、
 受け入れるのに多少の時間を要した。




「…おまえは、…おまえはそれでよかったのか」




 龍人はようやく開いた口でそう尋ねた。




「…『転生』などに興味はない、
 私が望むのは現世で成せなかった、主君への『贖罪』、
 ただそれだけだ」




「ガルデア王はお前の現世の主君ではないだろう?」




「そうだが、あの方に似た、王であることに違いない。
 龍人、これはわたしの自己満足だ、突き詰めてもあまり意味は無い」




 『責めてくれるな、これは俺の決断だ、』
 そう言うエルディオンに、龍人は引く他ない、




「…そうかよ、だが、『約束』は守れよ」


「『約束』…か」




 『約束』、『勝手に記憶を無くして意味死ぬな、』
 龍人はそれだけは失うなと、だが、それは必ずいつか訪れる、
 『転生』を目指していないのなら、必ず訪れる『滅び』、『浄化』、
 『霊体』もまた、狩られ続ければいつかは浄化される、
 その前に訪れる死、それは記憶の消失、
 『人の石』の供給がなければそれは必ず訪れる。




「破ったら俺が問答無用でぶった切って、浄化するまで何度でもやってやるがな」




 龍人はすこし笑いながら、少し寂しそうに聞こえる声音で、冗談を言った。




「ああ、わかっているよ龍人。だがもしそうなった時は優しく頼む」




 少しお互い見つめ合った後、
 龍人は振り返り初めてあった時同じように背を向けて言った、




「もう行く、顔が見れなくて残念だったが、話せてよかった」




「ああ、わたしも話せてよかった。龍人、また、会おう」




「ああ達者でな、気が向いたらまた来るよ」




 龍人は背を向けたまま左手を上げて振り、エルディオンに別れを告げた。


 とある日、また幾日が過ぎたのだろうか、幾年過ぎたのだろうか、
 龍人は人伝に聞く、 




 『ガルデアが墜ちた』と。




 その日はなぜか雨だった、
 龍人がこの地に『テラ・グラウンド』来てから雨など一度も振ったことがない。
 基本天候は固定、
 それは奇妙な日だった。


 龍人は、走った、
 しかしその報を聞いた場所からは数日はかかる。
 龍人が聞いた時はすでにガルデアが墜ちてから2週間ほど経っていった。
 龍人は引きこもってアニマ集めをしていたことを悔いた、
 ようやく塔にたどり着いたがもう、文字通り『遅かった』、




「エル、」




 びしょ濡れの龍人、大剣グレートソードから浴びた雨が滴り落ちる、




「わたしは、ここを守る、騎士、エルディオン、
 ガルデア王の許しがないものはここを通す訳にはいかない、死、あるのみ」


 感情はまだ多少込められているが、龍人のことを忘れ、
 おそらく生者であれば亡者に堕ちているであろうエルディオンを目の前に、
 龍人はこの世界に来て数度目か、それとも初めてなのか、確かに動揺する。
 ガルデア王の死、守れなかった自分自身への罪の意識か、
 タイミングが悪く『人の石』の供給が途切れたのも後を押したのか、
 それら全てが彼の記憶を『臨界点』まで奪ったのだろうか? 


 それはもうわからない、




「……約束だ、ぶった切ってやるよ、エル、」




 龍人はすでに襲いかかってきているエルディオンにそう言い放つと、
 彼の剣をするりと躱し、
 装備していた武器、大剣グレートソードによって連撃を食らわせ、
 その後、幾度の接触の後、これを粉砕した。


 しかし彼はもう、『選ばれていた』
 この、新たに生者によって作られたステージ、
 『ガルデアの塔』のBOSSに、
 もともと霊体であったのだから復活するのは当たり前ではあるが、
 浄化など程遠いのを龍人は感じた。
 彼はしばらくしてガルデアの塔に復活した、
 ここを通るもの全てを迎え撃つBOSSとして。
 何度か龍人は彼を粉砕したが徒労に終わる、
 勘が囁く、無駄だと、浄化など程遠いと、
 彼の無意識と有意識の狭間の状態の心を砕くのは難しいと、
 彼はある意味この世界の『例外』だった。




 あの日から、彼の言う最初のセリフは変わってはいない。
 彼は未だに約束を守り続けている。彼は意味、まだ死んでいないのだ。
 やはり彼は『例外』、





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