異世界転移の覇王譚

夜月空羽

18 誓いと戒め

復讐姫となった水谷沙織はクラスメイトである遠藤篤紀を殺して親友である関谷静葉がいる洞穴に向かうと篤紀の言う通り、そこには静葉がいた。
手足を縛られて全裸にされて凌辱の限りを尽くされた静葉が地面に横たわり、微かにも呼吸をしているのがわかる。しかし、その瞳は虚ろ。身体は生きているも心は死んでいる。
植物人間状態となっている親友を目の当たりにした沙織は親友を拘束している縄を切り、そっと抱きしめる。
「ごめんね……」
助けに来るのが遅れたことに、助けられなかったことに親友に謝罪する。そして今なら理解できる。これが弱者の末路。弱ければ大切な人を守ることもできず、ただ怒りと憎悪でその身を燃やしながら耐えるしかない。それが嫌ならば強者となるしかないということに。
「仇は必ず取るから……だから……」
今は涙は流さない。
この怒りも、憎しみもぶつけるべき相手はいる。それら全てを殺さない限りは沙織の復讐は終らない。だからそれまでは涙は流さない。
「安心して休んで……」
沙織は短剣を静葉の胸に突き刺す。
これ以上苦痛を強いらせない為に親友を苦しみから解放する。手に伝わる生々しい感触と短剣から伝わってくる赤い液体。篤紀を殺した時とは違う。今度は人を殺したという実感を抱きながら沙織は静葉を苦しみから解放した。
そんな沙織を見て影士は土魔法で墓穴を作った。
「そこに埋めてやりな。そのまま放置するよりかはいいだろう」
「……ありがとう」
影士の言う通りに墓穴に静葉だったモノを入れて埋めて簡単に墓を作ると近くにあった花を摘んでそれを墓に供える。
せめて元の世界に埋めてやりたい。そう思う気持ちもあるも今は元の世界に帰る方法もわからなければ遺体を持って行く余裕もない。ここに埋めるしかないのだ。沙織は両手を合わせてせめてその魂だけは故郷に帰れることだけを願う。
(私はまだそっちへは行けない……)
やらなければいけないことがある。親友を見捨てたクラスメイト達を、玩具として沙織達をこの世界に召喚した神達を殺すまでは沙織は死ぬわけにはいかない。
「……影士。お願いがあるの」
「なんだ?」
「私を犯して」
沙織はそう影士に懇願した。
「あいつらが静葉にしたように私を滅茶苦茶にして欲しいの。私が死なない程度に犯して」
「それは別に構わねえが、どうしてそんなことをする必要がある?」
「私自身が強者となる為に弱者がどれだけ惨めな末路を辿るのかをこの身体に刻み込んでおきたい」
強者となる為に強くなることを誓う為に、そして弱者がどういう末路を辿るのかを忘れない戒めの為にも沙織は影士に凌辱されることを望んだ。それを聞いた影士は口角を三日月に歪める。
(はぁ~ほんと、いい女になったなぁ……)
再会した時とは比べものにならないぐらいにいい女に沙織に影士は一瞬とはいえ見惚れてしまった。復讐という炎にその身と魂を捧げて復讐姫となった沙織が影士にとって絶世の美女だと思えるほどだ。だがら沙織の望まれるがままに影士はその場で沙織を押し倒す。
「加減はいらねえんだよな?」
「したら殺すわ」
「ハハ、いいねぇ。いい女すぎて惚れちまいそうだ」
そうして影士は沙織の望み通り死なない程度に沙織を犯し続けた。乱暴に貞操を奪い、女としてのプライドも滅茶苦茶にし、人としての尊厳すらも踏みにじるほどに獣の如く沙織を蹂躙した。
親友と呼んだ少女の墓の前で。



「それでどういう状況だ?」
「あらあら、お盛んですこと。私に言ってくだされば喜んでお相手しますのに」
一部始終を見ていたエルギナとエルザはことが終えてから顔を出して状況の説明を求めた。影士は隣で意識を失っている沙織を置いて簡易に説明する。
「そんなわけだ。外でするのも解放感があってなかなかいいもんだな」
「妾としてはそんなお主に一言申したいのだが、まぁよい」
言っても聞かないだろうと察したエルギナは小さく肩を竦めてエルザはピタリと影士に身を寄せると影士はエルザを抱き寄せて手慰みに胸を揉む。エルザの口から艶のある声が漏れるが影士とエルギナは気にも止めずに話を続ける。
「それで沙織はどうなのだ? お主にとって使える駒か?」
「ああ、今はまだレベルが低いのと実戦経験が低いが文句はねぇ。強くなるぜ、こいつは」
「お主がそこまで言うのであれば問題はないのだろう」
思っていたよりも高評価だったことに内心驚きながら沙織が新たに仲間になることに歓迎していいのかは悩まされるところだが、本人がそれでいいのならいいだろうと納得しておく。
「そういや、他のクラスメイトとかはいたか?」
「沙織が着ていた恰好の者は妾は見ていない。恐らくはもうこの森にはおらんだろう」
「ぁ、んっ…私も見ておりませんわ」
二人共クラスメイトを目撃していないところからもうこの森にはいないと判断した。残っていたのは獣に堕ちてこの場所に未練があった篤紀達だけだったのだろう。ということはもしかしたらここではない別の場所で再会するかもしれない。
(まぁ、その時は沙織が殺すだろうが……)
復讐のその身と魂を捧げた復讐姫に出会えば必ず殺されるだろう、と他人事のように思いながら今後のことについて二人に話しておく。
「ここにはもう用はない。予定通り南に向かう。エルザ、その道中で沙織に剣術を教えてやれ」
「かしこまりましたわ……ん」
レベルとステータスが低い沙織を道中で鍛え上げて出来るだけ影士達に近いレベルとステータスに成長させる。そのついでにこの世界の剣術を沙織に身に付けさせて戦力を強化させる。
そして影士は引き続き今の力の制御する訓練を続行させる。強くなり過ぎた今の影士はまさかに宝の持ち腐れ。今の力を完全に使いこなせるようにする為にも訓練しなければいけない。
そうでなければ神殺しなど夢のまた夢だ。
(覇王になる為にも今の俺には何もかもが足りない……)
力の制御も影士にとって重要なことでは間違いないが、それでも影士には足りないモノが多い。だからこそもっと貪欲に力を求める必要がある。
(俺はこの世界の覇王になる)
まだ眠る覇王は力を求める。

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