甘え上手な彼女4 冬編

Joker0808

第35話

「そうは言っても気になるぞ」

「じゃあ、赤西ちょっと聞いて来いよ」

「え!? 俺かよ……まぁ良いけど」

 赤西は高志の元に向かい、何があったのかを尋ねてみることにした。
 
「高志」

「ん? なんだよ赤西」

「いや……宮岡と何かあったのか?」

 赤西と高志の話しに聞き耳を立てていた優一はがっくりと肩を落とす。

(あの馬鹿はもっと遠回しに聞くとか出来ないのか……)

 優一がそんな事を思っていると、高志は赤西から視線を反らして答える。

「いや……別に何も……」

「何もって事ないだろ……最近は宮岡とイチャイチャもしてないし」

「関係無いだろ」

「おまっ! 俺は一応お前の事を心配してだな!!」

「余計なお世話だ」

「なっ! そうかよ!!」

 赤西は高志にそう言われ、怒って優一と泉の元に戻ってきた。

「なんだあいつ! 人が折角心配してやってるってのに!」

「お前……もう少し聞き方とか考えろよ」

「え? なんで?」

「聞き方がストレート過ぎるんだよ……はぁ……これだからアホは……」

「お前もアホだろ……数学の点数俺より下の癖に」

「あぁ? なんか言ったか!」

「ふ、二人とも話しが反れてるから!!」

 今にも喧嘩が始まってしまいそうな二人を泉が止める。
 話しを戻し、優一達は高志の様子の変化について話し始めた。

「でも本当に変だね」

「あぁ……あのバカップルに一体何があったのやら……」

「ほっとけば良いんだあんな奴!」

 ことの始まりは、つい先日のテストが終わった後からだった。
 高志がなんだかぼーっとする事が多くなっていた。
 紗弥ともあまり話しをしなくなり、それどころか何かを考えているような状況も多かった。
 帰り道、優一は高志に何かあったのでは無いかと一緒にバイトをした便利屋の店長の元に向かった。

「え? 八重君に変わったとこ?」

「はいっす、あいつが最後にバイトしたとき、何か変な様子はありませんでしか?」

「いや……無いと思ったけど? それがどうかしたのか?」

「いや、ちょっとなんかあいつ、ぼーっとしてる事が最近多くて……店長に扱き使われて凹んだのかと思っただけっす」

「この野郎~お前言ってくれるじゃねーか」

 笑いながらそう言い、便利屋店長の市川に無理矢理肩を組まされる。

「あ、そう言えば……ここでバイトする前に、変わったバイトをしたって聞いたな……」

「え? それはどんな話しっすか?」

「あぁ……それがよ……」





 高志の様子の変化に一番気がついている人物、それは紛れも無く紗弥だった。
 最近では言葉を交わすのもかなり少なくなっていた。
 
「高志……」

 紗弥が家に行っても高志は具合が悪いと言って会ってくれなくなった。
 それどころか、最近は毎日夜遅くまでどこかに出かけていることが多くなった。

「……もうすぐクリスマスなのに……」

 カレンダーに付けた丸印、そこにはクリスマスと赤い文字で記入してあった。
 密かに用意していたクリスマスプレゼントをクローゼットから取り出し、紗弥は寂しげな表情で呟く。

「……会いたいよ」





 高志はあの日から毎日のように瑞稀の元に顔を出していた。
 そして今日も……。

「今日は終業式でさ、明日からようやく冬休みなんだ」

「そうですか、それは楽しみですね」

「あぁ、年末年始に……それに……」

 クリスマス……その単語を高志はあまり出したく無かった。
 
「どうかいたしましたか?」

「あぁ……いや、なんでも無いよ……それよりも今日は顔色良いな」

「はい、なんだか最近調子が良いんです。お医者様も良い傾向だと」

「そうか……それは良いな」

 高志はそんな瑞稀の笑顔を見て、少し複雑な心境だった。
 伊吹から高志は既に瑞稀の体の事を聞いていた。
 気の合う友人が出来た事により、精神的に気持ちが楽になった瑞稀の体は最近良好らしい。

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