甘え上手な彼女4 冬編

Joker0808

第23話

「人間ってこんな環境でも生きていけるんだな……」

「俺は無理だな」

 高志と優一は話しをしながら後半の作業を開始した。
「しかし……臭いなぁ……」

「マスクでどうにかなるレベルじゃ無いよな?」

「生臭ぇ……ちなみにここの元住人って男と女どっちだと思う?」

「え? うーん……普通に考えて男か?」

「女だよ」

「マジか!?」

「こんな女とは絶対に付き合えねぇな……」

「安心しろって、芹那ちゃんはそんな子じゃない」

「どっちかって言うと、あいつは結構清潔だ、部屋に来る度に俺の部屋を……っとしまった」

 優一はそこまで言って口を閉ざした。
 高志はその言葉の意味に気がつき、優一を質問責めにする。

「は? 部屋!? お前らいつの間にそこまで進んだんだ?」

「うるせぇ、仕事しろ」

「おい、お父さんはそんな事聞いてないぞ! 説明しろ!!」

「あぁ……面倒だな……」

 優一は口を滑らせるのでは無かったと考えながら、高志の言葉を無視して仕事を続ける。
 午後一時半、ようやくすべてのゴミを運び終え、高志と優一は部屋の中から出る。

「あぁ……疲れた……」

「肉体労働はきっついなぁ……

 事務所に戻り、高志と優一は更衣室で着替えを済ませる。

「二人ともお疲れさん、ほらこれ今日の分の給料な」

 市川はそう言うと、高志と優一に今日の分の給料を支払う。
 高志と優一は給料を受け取り、事務所を後にする。
 
「はぁ……しんどかった……」

「給料が良いんだから文句言うな」

「これと似たような仕事が後二回か……結構大変そうだな……」

「今更他のバイトを探すのもだるいだろ?」

「まぁ、それもそうか……じゃあ、俺はこの辺りで」

「おう、またな」

「優一も芹那ちゃんによろしく」

「お前いい加減にしろよ?」

 高志は優一に別れを告げて、今度は別な場所に向かい始める。
 
「いきなり行って大丈夫かな? でも連絡先しらないし……まぁ大丈夫か?」

 高志が向かっていたのは、瑞稀の家だった。
 また来ると言っていたのに、全然行く暇が無かったので、今日のバイトが終わった後に行こうと決めていた。

「相変わらず……デカいなぁ……」

 いつ見ても大きな瑞稀の家に高志は驚きながら、インターホンを鳴らす。

『はい、どちら様でしょうか?』

「あ、えっと……すいません、この間バイトで来させていただいた、八重と言うものですが……」

『八重……八重高志様でしょうか?』

「あぁ、はいそうです。えっと瑞稀さんにちょっと会いに……」

『そうでしたか、旦那様からお話は聞いております、どうぞ中へ』

 脇の門が開き、中に入れるようになった。
 高志二回目だが、少し緊張していた。
 言ってしまえば女の子の家、しかもお金持ちの。  紗弥以外の同年代の女の子の家になんて、高志は言ったことも無い、しかもその家が豪邸とあれば、そう簡単に慣れるものでもない。

「お、お邪魔しま~す」

 高志は玄関の扉を開けて、家の中に入る。

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」

 高志が玄関を開けて中に入ると、メイドさんが待っていた。
 高志はメイドさんに連れられて、部屋に案内される。
「お嬢様はこちらです、お嬢様もお待ちです」

「そうですか、どうもありがとうございます」

 高志はメイドさんにお礼を言い、部屋をノックしてドア開ける。

「お、お邪魔しまぁ……す」

「あ……八重さん、本当に会いに来たんですね」

「約束したからね」

 部屋の中に居た瑞稀はソファーに座って本を読んでいた。
 
「今日は起きてるんだ」

「いつも寝ている訳じゃありませんよ、今日は体調が良いんです」

「そっか、それは良いことだね」

 高志は瑞稀と他愛もない話しをしていた。
 テストが近い事や今日のバイトの話しなど、話しの内容は様々だったが、瑞稀はどんな話しにも興味を示し、一生懸命に話しを聞いていた。

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