甘え上手な彼女4 冬編

Joker0808

第22話

「おい優一!!」

「なんだよ」

「ゴミ屋敷の掃除なんて聞いてないぞ!」

「何でも良いから仕事寄越せって言ったのはお前だ」

 更衣室で着替えをしながら、高志は優一に文句を言う。
 
「確かに……それはそうだが……でも、仕事内容くらい事前に教えてくれよ……」

「割の良い仕事なんだ、我慢しろ」

「まぁ……そうだけどよ……」

「安心しろ、仕事は午後二時までだ。高給だが、拘束時間は短い」

「確かに……5時間で12000円なら……時給2400円だしな……かなり良いよな」

「だから我慢しろ」

「まぁ……背に腹は代えられないか……」

 高志はこれも紗弥の為だと考え、着替えを済ませて仕事に向かう。
 車の中で高志と優一は簡単に仕事内容の説明を受けた。

「まぁ、説明はこんな感じかな、あとは分からないことは気軽に聞いてよ」

「わかりました」

「ゴミ屋敷か……なんか怖いっすね」

「ふふ……優一……大丈夫だ、怖くわないぞ」

「なんすか……その意味深な言い方……」

 市川さんの運転する車で約15分、ようやく作業現場となるアパートに到着した高志達。
 車を降り、現場を確認した高志と優一は愕然とした。
「………」

「………」

「あの、市川さん」

「なんだ?」

「聞いてた話しと大分違うんですけど……」

 優一がそう言うのも無理は無かった。
 玄関を開けた瞬間、高志と優一の目にはゴミで埋め尽くされた玄関が映し出された。
 しかも酷い悪臭がしており、かろうじて見えるフローリングには何か黒い物体が動いていた。

「まぁ……俺も依頼された時はビックリしたさ……だが、大丈夫だ!」

「何を根拠に言ってんすか!!」

「これを……三人で……」

 高志は玄関先で既に絶望感を味わっていた。
 このゴミを今からやってくる二トン車に積み込むらしいのだが、三人で果たして終わるのだろうかと高志は考えていた。

「給料が高い意味……分かったす」

「だろ? さぁ働くぞ! 二人とも!!」

「「は、はい……」」

 高志と優一は肩をがっくりと落とし、作業を開始した。
 ゴミをひたすら袋の中に入れて、トラックに詰めていく。
 一体どんな人が住んでいたのだろうか?
 そんな事を考えながら、高志はひたすらゴミをまとめて行く。

「優一、プラスチック出てきた」

「あぁ、じゃあ貰うわ」

 大雑把ではあるが仕分けをし、高志達は少しづつ部屋のゴミを出していく。
 
「ゆ、優一!!」

「どうした?」

「なんか、床にダークマターが!!」

「ここの住人は良くこんな部屋で生活してたな……」

 床に転がる黒くてねっとりした物を見ながら、高志と優一はそんな話しをする。
 一体どうしたら、こんなに汚くなるまで放置出来るのだろうか?
 高志と優一は絶対にこんな大人にだけはなるまいと思いながら作業を続ける。

「ふぅ……ようやく半分か?」

「あぁ……てかお前、そこのダークマターも拾っておけよ」

「あぁ……いや俺も拾おうとしたんだけど……手袋が……」

「汚れたのか? それなら市川さんに換えを……」

「いや、溶けた……」

「溶けた!?」

「うん、触ろうとしたら……」

「一体こいつの正体は何なんだよ!!」

 ゴミを半分出し終わったところで、市川が飲み物を持って高志達の元にやってきた。

「おーい、休憩しようぜ!」

「あ、了解っす」

「あ、すいませんありうがとうございます」

 高志と優一は、市川から飲み物を受け取り車に戻って休憩時間に入った。

「アパート自体はわりかし新しいのに……」

「どうやったらこんなに汚せるんだか……」

 作業場はアパートの一室。
 意外にも結構新しめのアパートで、そんなに建ってから年数は経過していないように見えた。

「このペースなら、13時には終わりそうだな」

「そうですね」

 作業のペースは速かった。
 作業の内容が単純だからだろうか、作業は概ね予定通りだった。

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