甘え上手な彼女4 冬編
第21話
*
テスト前のとある日の土曜日、高志は朝早くから着替えを済ませ、出かける準備をしていた。
「ん? 高志、今日は早いんだな」
「あ、おはよう親父、ちょっと用事があって……」
「なんだ? クリスマスのデートコースの下見か?」
「ちげーよ! ちょっと用事があるんだよ」
「ふーん……ちなみにホテルに行くなら……」
「うるせぇよ!!」
高志は洗面所で遭遇した父親にそう言うと、自室に戻って持ち物を確認して家を出る。
「行ってきます」
「あら? どこか出かけるの?」
「うん、ちょっと用事で……昼飯は要らないから」
「そう? 紗弥ちゃんには言ってあるの?」
「うん、でもチャコに餌あげにくるかもって言ってたから、お昼辺りに来るかも」
「そう? そう言えばあんた最近、紗弥ちゃんと家に帰って来ないわね」
「まぁ……ちょっと忙しくてさ……」
「アンタ……まさか……浮気なんてしてないでしょうね!」
「しねーよ!!」
「男と!」
「男と!?」
高志はそう言われた瞬間、一瞬ドキッとしてしまった。
その理由は修学旅行の最後の夜のあの事があったからだ。
あのキスについては、紗弥にもちゃんと事情を説明したし、決して浮気では無いと自分に言い聞かせる高志。
そもそも自分は普通に女性が好きなのだから、別にドキッとする必要もないだろうと思う高志。
「俺はホモじゃ無いよ……じゃあ、俺行くから」
「はいはい、じゃあ行ってらっしゃい」
高志は母親に別れを告げて、家を出る。
今日は優一の紹介のアルバイトの日だった。
朝の9時に現地に集合と言う話しで、仕事内容はまだ聞いていない。
「一体何をさせられることか……」
高志はそんな事を考えながら、バスに乗って目的の場所に向かう。
バスと徒歩で約20分、ようやく目的の場所に到着した高志。
指定された場所は貸しビルだった。
このビルの中に入っている会社でバイトをするのだろうかと考えながら高志が優一を待っていると、少しして直ぐに優一がやってきた。
「よう」
「おう、なんだ? なんか眠そうだな」
「あぁ……まぁ、色々あってな……」
「夜遅くまで芹那ちゃんと電話でもしてんのかぁ~? 妬けるねぇ~」
高志がからかうと、優一は疲れたような表情をして高志に小さい声で言う。
「あぁ……まぁ……そんな感じだ……」
「お、おう……どうした? テンション低いな……」
「気にするな……寝不足なだけだ……とにかく行くぞ」
「お、おう」
高志と優一は貸しビルの中に入り、三階に入っている会社のドアを開けて中に入った。
「おう、優一! 助かったぜ! 今日はよろしくな!」
「こっちも高額なバイト見つかって良かったすよ。あ、こっちがもう一人の八重です」
「初めまして、八重高志です」
「そうか! 俺は市川邦治(いちかわ くにはる)だ!」
挨拶をかわす高志と市川と名乗る男。
色黒で筋肉質のその男性は、会社員には見えず、どっちかと言うと遊び人のような風貌だった。
髪は金髪だし、服も作業着を来ている。
なんだか現場の作業員のようで、この人が経営者には見えなかった。
「で、早速なんだが、着替えて現場に行こう!」
「え? えっと……現場って言うのは……」
「あれ? 優一から聞いてないのか? うちはいわゆる便利屋なんだ。それで今日の仕事がゴミ屋敷の掃除なんだが……この前の仕事で他の従業員が体調をくずしちまってなぁ……それで君たちを呼んだって訳だよ」
「あ、あぁ……なるほど……」
ゴミ屋敷の掃除と聞いて、高志は優一の方に視線を向けた。
優一は視線を反らして口笛を吹いている。
大変な仕事とは思っていたが、まさかゴミ屋敷の掃除とは思わなかった高志。
先にこの話を聞いていれば、断ったかもしれないが、ここまで来ては仕方ないし、何より今の高志にはお金が必要だった。
「君たちの作業着は用意してあるから、更衣室で着替えてきてくれ、そしたら直ぐ出発だぞ」
「は、はい……」
高志と優一は市川の言うとおりに更衣室に向かう。
テスト前のとある日の土曜日、高志は朝早くから着替えを済ませ、出かける準備をしていた。
「ん? 高志、今日は早いんだな」
「あ、おはよう親父、ちょっと用事があって……」
「なんだ? クリスマスのデートコースの下見か?」
「ちげーよ! ちょっと用事があるんだよ」
「ふーん……ちなみにホテルに行くなら……」
「うるせぇよ!!」
高志は洗面所で遭遇した父親にそう言うと、自室に戻って持ち物を確認して家を出る。
「行ってきます」
「あら? どこか出かけるの?」
「うん、ちょっと用事で……昼飯は要らないから」
「そう? 紗弥ちゃんには言ってあるの?」
「うん、でもチャコに餌あげにくるかもって言ってたから、お昼辺りに来るかも」
「そう? そう言えばあんた最近、紗弥ちゃんと家に帰って来ないわね」
「まぁ……ちょっと忙しくてさ……」
「アンタ……まさか……浮気なんてしてないでしょうね!」
「しねーよ!!」
「男と!」
「男と!?」
高志はそう言われた瞬間、一瞬ドキッとしてしまった。
その理由は修学旅行の最後の夜のあの事があったからだ。
あのキスについては、紗弥にもちゃんと事情を説明したし、決して浮気では無いと自分に言い聞かせる高志。
そもそも自分は普通に女性が好きなのだから、別にドキッとする必要もないだろうと思う高志。
「俺はホモじゃ無いよ……じゃあ、俺行くから」
「はいはい、じゃあ行ってらっしゃい」
高志は母親に別れを告げて、家を出る。
今日は優一の紹介のアルバイトの日だった。
朝の9時に現地に集合と言う話しで、仕事内容はまだ聞いていない。
「一体何をさせられることか……」
高志はそんな事を考えながら、バスに乗って目的の場所に向かう。
バスと徒歩で約20分、ようやく目的の場所に到着した高志。
指定された場所は貸しビルだった。
このビルの中に入っている会社でバイトをするのだろうかと考えながら高志が優一を待っていると、少しして直ぐに優一がやってきた。
「よう」
「おう、なんだ? なんか眠そうだな」
「あぁ……まぁ、色々あってな……」
「夜遅くまで芹那ちゃんと電話でもしてんのかぁ~? 妬けるねぇ~」
高志がからかうと、優一は疲れたような表情をして高志に小さい声で言う。
「あぁ……まぁ……そんな感じだ……」
「お、おう……どうした? テンション低いな……」
「気にするな……寝不足なだけだ……とにかく行くぞ」
「お、おう」
高志と優一は貸しビルの中に入り、三階に入っている会社のドアを開けて中に入った。
「おう、優一! 助かったぜ! 今日はよろしくな!」
「こっちも高額なバイト見つかって良かったすよ。あ、こっちがもう一人の八重です」
「初めまして、八重高志です」
「そうか! 俺は市川邦治(いちかわ くにはる)だ!」
挨拶をかわす高志と市川と名乗る男。
色黒で筋肉質のその男性は、会社員には見えず、どっちかと言うと遊び人のような風貌だった。
髪は金髪だし、服も作業着を来ている。
なんだか現場の作業員のようで、この人が経営者には見えなかった。
「で、早速なんだが、着替えて現場に行こう!」
「え? えっと……現場って言うのは……」
「あれ? 優一から聞いてないのか? うちはいわゆる便利屋なんだ。それで今日の仕事がゴミ屋敷の掃除なんだが……この前の仕事で他の従業員が体調をくずしちまってなぁ……それで君たちを呼んだって訳だよ」
「あ、あぁ……なるほど……」
ゴミ屋敷の掃除と聞いて、高志は優一の方に視線を向けた。
優一は視線を反らして口笛を吹いている。
大変な仕事とは思っていたが、まさかゴミ屋敷の掃除とは思わなかった高志。
先にこの話を聞いていれば、断ったかもしれないが、ここまで来ては仕方ないし、何より今の高志にはお金が必要だった。
「君たちの作業着は用意してあるから、更衣室で着替えてきてくれ、そしたら直ぐ出発だぞ」
「は、はい……」
高志と優一は市川の言うとおりに更衣室に向かう。
コメント