転生したら愛がいっぱい?!(仮題)

シーチキンたいし

初めてのお仕事


次の日、朝から神殿にやって来た。

もちろん、この間のことがあったので、クマさんも一緒に来てくれている。でも、神々の祝福があるし白銀もいるので、正直過剰防衛すぎる。

昨日作ったものは全て神殿の祭壇に奉納して祈ると、いつの間にか無くなっていた。神様達の所に届いたのかな?

『ありがとう、アリス』

優し気なイナン様の声が届いたので、おそらく神様の所にちゃんと届いたようだ。

仲良く神様どうしで遊んでほしい。

次は、一日ぶりの冒険者ギルドにやって来た。今日は冒険者として初めてのお仕事を受けるつもりだ。

「こんにちは!」

「あら、こんにちはアリスちゃん」

受付にはリサさんがいた。

ギルドのなかも昼間だけど賑わっている。これでも朝より静かなのだそうだ。朝は、新しい依頼も張り出されるため、仕事にいく冒険者達で溢れかえるらしい。

受付嬢も大変なんだなぁ。

「今日はどうしたの?」

「お仕事見にきたの!」

「あ、アリスちゃんが?」

「お嬢ちゃんは構わん」

「マスター!」

後ろからやって来たのは、ギルドマスターのオルグおじ様だ。そう言えば、この間のことで冒険者登録をしていない。

これじゃあ、仕事受けられない?

「お嬢ちゃん、これはお嬢ちゃんのギルドカードだ」

「え?いいの?」

「あぁ、これがあれば身分証としても使える。持っておいて損はない」

「ありがとう!オルグおじ様!」

どうやら、私のギルドカードを作ってくれたようだ。普通試験とかあるんじゃ?と思ったけど、私のステータスをみたオルグおじ様が試験を免除にしたらしい。

確かに、試験だとしても、私を攻撃しただけで神々の祝福さんで弾かれて、相手の方が怪我をしそうだしね。

「で?お嬢ちゃんはなんの仕事を受けるつもりだったんだ?」

「これ!薬草採取なの!クマさんと行くよ」

「……ぶっ、クマさんね…っ」

「じじい!笑ってんじゃねぇ!」

私の「クマさん」呼びに、肩を震わせて吹き出すオルグおじ様。ラクマだからクマさん。かわいいよね?

「薬草か……それは助かるな」

「どうしてなの?これ、常時依頼でしょ?足らないの?」

「あぁ、最近町行商人が盗賊や魔物に襲われる事件が多発するし、今まで薬草の採取スポットが焼失する事件が起きた。今年は不猟でな」

それって、すんごいただ事じゃないよね?だいぶ狙い済ませてやってるよね?

(解答、該当の事件を検索しました。今年の初め頃、行商人を襲う盗賊が出始めました。魔物のせいに見せかける偽装工作がされています。主に物資の滞りを起こすための陰謀です。採取スポットの焼失事件にも糸を引いています。冒険者や領兵の力を削ぐためでしょう。)

わぁ……鑑定さん、仕事が早いね。

陰謀?この街を狙ってってこと?

(解答、肯定します。このバスコの町は辺境伯領ですが、貴族のなかでも公爵家並みの権威があります。それをよく思わない派閥の工作ですね)

か、鑑定さんすごすぎ。

(解答、私はただのスキル:鑑定とは格が違いますから)

鑑定さんの表情が見えたなら、ドヤ顔してそうなくらい自信満々に言い切った。

『(アリス、俺ならどうにか出来るかも)』

「(シロが?)」

『(あぁ、俺は元々大地の神の眷属にあたる神獣だからな。俺の力なら、その土地の豊穣にしたり出来るからな)』

確かこの世界の12神の一人だ。白銀は大地の神の眷属なんだ。

「(凄い!じゃあ、お願いしてもいい?)」

『(任せろ)』

「じゃ、俺達は行くからな」

「いってきますなの!」

「気を付けてな」


クマさんと 北門から街を出て、元々の採取スポットにやって来た。

「見事に焼け野原だな…。こりゃしばらく薬草どころか草も生えねぇな」

「…うん、ひどい」

その辺りは、本当に焼け野原になっていた。所謂森林火災の痕のように。

「じゃあ、シロお願いね!」

『あぁ』

白銀は私の腕の中から地面に降りると、もとの大きさに戻った。

白銀を中心に魔力の波動が広がっていく。すると、焼け野原だった場所が次第に消え地面からポコポコと、緑の芽が生えていく。

どんどんと、再生されていった。

「シロすごーい!」

『当たり前だ』

「まじか…」

数分もたたずに焼け野原は、見事にもとの姿を取り戻していた。

「これ、どう報告したもんかなぁ」

「クマさーん!みてみて!薬草なの!」

「……まぁ、いっか。すごいなアリス。よく見つけたな」

「えっへーん!」

それからしばらくは、その場所で薬草を採取した。

クマさんが、薬草は街に在庫が少ないから、多めに採っていいと言われた。白銀に聞いても、例え採り尽くしたとしてもしばらくは白銀の加護でまた生えてくるらしい。

なので、これでもかというくらい、生えてる薬草を採りまくった。

クマさんが採った薬草が消えていくのをみて、不思議そうにしていたので、「異次元収納倉庫アイテムボックスなの」と教えておいた。

時間経過しないし、ほんと便利チート

「なぁ、アリス」

「なぁに?クマさん」

「…今度九勇士円卓会議エニアグラムがあって、一緒に行くっていってたろ?それで王都に行ったついでに、少し色んな所を一緒に観光しないか?」

「色んな所?」

「あぁ、今は忙しくて国内だけになっちまうが……落ち着いたら色んな国や大陸に観光しにさ……どうだ?」

「うん!行く!面白そう!」

「……よかった。じゃあ、一緒にいこうな」

「はいなの!」

そう言えば、この話をギルドマスターのオルグおじ様としていたのを思い出した。

どうやら、この国の王都で主催されるらしい。本当は開催を促した国が主催場所に選ばれるのに、今回はなぜかこのセリーフ王国。セリーフ王国の人達からみたら、大迷惑だろう。

でも、王都には行ってみたいと思ってたんだよね。観光、楽しみだなぁ!

一人、観光を楽しみにしているなか、ラクマは別のことを考えていた。

本当なら、他国に、しかも、帝国や聖国なんかにアリスを連れていきたくない。しかし、目を放した隙に、アリスに何かにあったら嫌だ。そんな葛藤のなか、開催国がセリーフ王国に決まった。恐らく、なにか裏があるに決まっている。なら、近くにいてもらった方が守りやすい。

アリスには神の加護がある。そうそう害されることはないとわかっていても、やはり心配になる。

嬉しそうに薬草を採るアリスの後ろ姿を眺めながら、ラクマは微笑ましく見ていた。

「クマさーん!あっちにもあるよー!」

「あぁ、今行く」













「で?疲れて寝ちまったのか?」

「あぁ」

ギルドに戻ってきたラクマは、オルグに報告していた。

ラクマの腕に抱かれた小さな存在は、すりすりとラクマの胸元にすり寄り、気持ち良さそうに眠っている。

子供の体力では、限界だったらしい。

「しかし、神獣様の加護か…」

『なんだ?あのまま放っておいた方が良かったのか?』

「いえ、ありがとうございます。しかし、神獣様の加護となると、一度領主様には報告した方がいいな」

「頼む」

「ところで、採取した薬草はあるのか?」

「俺の分は直ぐに出せるが……アリスと神獣が採った薬草は、アリスの異次元収納倉庫アイテムボックスの中だ。明日でもいいか?」

「そう言えば、お嬢ちゃんは倉庫持ちだったな」

異次元収納倉庫アイテムボックスのような見た目に反して、大量の荷物を収納することが出来るような鞄やスキルを持っている者を“倉庫持ち”というのだ。

収納倉庫には、色々ある。一つは、鞄型、袋型の収納倉庫。これは、特別な素材で作られた物に空間魔法を付与して作られたものだ。一般的に大きな商会や、ベテランの冒険者ならそこそこ持っている。

大きいもので、貴族の屋敷一つ買えるくらいの価格で、普通の庶民にはまず、手にすることなど出来ない。さらに、時間停止の収納倉庫だと、国庫の10分の1、価格にして大きな領地2つ分の土地が買えるほどだ。

二つ目に、スキルだ。スキルにも色々あるが最も有名なのが『スキル:収納』だ。これは、1メートル四方の木箱が入るくらいの小さな倉庫だが、スキルスクロールで覚えることができ、鞄や袋型の収納倉庫よりも安価であるため、平民でも持っている者が多い。

ちなみに、スキルスクロールとは、任意のスキルが付与されているスクロールで、開くとスキルを覚えることができるものである。魔法スキルから耐性スキルなど色々と種類が豊富にある。スキルスクロールの付与されているスキルは、一般的に、付与した者のスキルをスキルスクロールに移し換え、相手に継承させるというものである。

空のスキルスクロールは平民の一ヶ月分の収入ほどで買える。

このスキル:収納は行商人や冒険者が旅の必需品などを入れるのに重宝している。とくに迷宮ダンジョンに挑戦する冒険者にとっては、必要不可欠なスキルである。

他の収納倉庫系スキルで言えば、『スキル:倉庫』『スキル:収納倉庫』とある。

『スキル:倉庫』が、6畳のワンルームほどの荷物が入り、『スキル:収納倉庫』になると、平民の一軒家が丸々入るほどだ。収納、倉庫、収納倉庫の順で大きくなっている。下位スキルである収納は、レベルが上がれば上位スキルに進化すると言われているが、未だ誰もそれを証明したものはいない。ほかのスキルでも然りだ。

そして、アリスの持つ『スキル:異次元収納倉庫アイテムボックス』は、ユニークスキルであり、収納倉庫系スキルの最上位スキルである。

何を入れても時間が経過することなく、あらゆる物が収納出来ると言う、破格の性能を持つスキルなのである。

ただでさえ、神の加護があるので狙われやすいのに、アリスの持つどのスキルも全て聞けば誰もが欲しくなるスキルである。

まさにゴキ◯リホイホイならぬ“犯罪者ホイホイ”だと言ったところだろう。

「仕方ねぇ、納品は明日で構わん」

「すまねぇな」

こうして、初めてのお仕事クエストは終了した。



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