転生したら愛がいっぱい?!(仮題)
天使との出会いsideラクマ
初めて見たときは驚いた。
小さな体で大人達の並ぶ列に、堂々と立っていた小さな子供。プラチナブロンドの髪に、透き通るような大きな青い瞳。まさに天使と呼ぶに相応しい容姿だ。
そんな子供が一人きりでいる異様な光景を、遠巻きに見ていた周り連中は、根も葉もない憶測が飛び交う。なので、どこかのバカが手を出す前に保護しようと声をかけたのがきっかけだった。
最初は、俺大きさに驚いていたが、俺が目線を下げると、安心してくれた。
俺はまだ19だが、スキルや肉体の成長も相まって、年齢に似合わない風貌だ。今までそれほど気にしたことはなかったが、何故かこの子に怖がられたことはとても苦しかった。
幼女から話を聞くと、どうやら街に入るために、他の大人と同じように並んでいたらしい。
「親は?」と聞くと、「居ない」と答えた。どうやら、育ての親が居たようだが、「会えなくなってしまった」と幼女アリスは言った。おそらく、もうこの世には居ないのだろう。
こんな天使のような幼女を一人にしていたら、街に入れたとしても、どこかのバカが誘拐してしまうかもしれない。特に今、帝国や聖国がキナ臭くなっているのに。
なので、自ら保証人になることを決めた。
俺は、9人いるSランク冒険者の一人だ。この街では知らないものはいない。俺と関わりがある子供に手を出す馬鹿はいないだろう。
街に入ると、アリスにこれからのことを問うと、何も決まっていなかったようで、探検すると言い出した。俺はアリスの保証人になったのだから、最後まで面倒を見るつもりだ。
この街には教会も孤児院もある。俺といるのが嫌だったら、そこに預けるのも選択の一つだ。
それからは夢のような時間だった。いつもの味気無い、やたら厳つい冒険者ばかりの街が、まるで、新しい街に来たかのように新鮮に感じだ。
俺の横を、小さな足でちょこちょこ歩くアリスが可愛すぎてツライ。(←だんだんキャラが崩壊していっている)
そんなことを思いながらアリスと街を歩いていると、アリスは「冒険者ギルドに行きたい」と言い出した。本当はアリスの純粋な視界に悪そうな所に行ってほしくはないが、アリスが行きたいと言っているのだ。連れていくしかない。
ギルドの中に入ると、さっそく受付嬢のリサに話しかけられた。最初がリサで良かった。
そのあと、ギルドマスターであるオルグが現れた。話があるとリサが言っていたが、悪い予感しかしない。
「さて、まずラクマの話と言うのが、三ヶ月後の『九勇士円卓会議』の開催が発令された。」
「なんだと?どこのバカだ?」
「ゼレストとメルアリスのとこだ」
「くそっ!またあいつ等かよ…」
『九勇士円卓会議』─その名の通り、9人の英雄が集まる円卓会議だ。
9人の英雄とは、冒険者最高ランクのSランクをもつ9人のこと。その力は、一人で1万の軍勢もものともしないような一騎当千の力。それ故に戦争の抑止力となっている。
そんな俺達を一同に集めることが出来るのが、『九勇士円卓会議』なのだ。9人の英雄のうち2人以上の要請により特別に開催される会議で、主に近状報告かSランクでしか対処できないような事態への救援要請などが話し合われる。
しかし、本来国の英雄としてより戦争の抑止力としての方の役割が強い俺たちが一同に会するなど、異例中の異例。
今回賛成したのは、ゼレスト帝国とメルアリス聖国のSランク冒険者だ。またどうせ、魔王を倒そうとか、異種族の排斥とか、そんな下らない話だろう。
「ところでラクマ。この子供はいったい何処から連れてきたんだ?」
「検問の所だぞ。一人で並んでたから、事情を聞いたんだ。そしたらホントに一人みたいでよ…」
「保証人になったわけか…」
「なんか悪ぃのかよ?」
「悪いもなにも、厄介そうな子を連れて入ったもんだ。そういや、お前その辺鈍いからな。この子、加護持ちだぞ」
「なっ?!!!」
「?!!!」
オルグのおっさんが、そう言ったのに驚いた。話を聞いてなかったアリスも「何故バレた?」と顔にかいてありそうなほど驚いていた。
「その顔は嬢ちゃんも自覚があんるだな」
「……うん」
「ハッキリ言うと、俺は先頭はBランク止まりだが、EXTスキル:鑑定を持ってる。」
そう、このおっさん、強さで言えばBランク止まりだが、数少ないEXTスキルの持ち主なのだ。
そのおかげもあって、引退した今でもギルドマスターとして働いているのだ。
「スキルが4つに、ユニークスキルもあり、俺と同じ鑑定スキルもある。そして、『神々の祝福』という加護までついてる。こんな子供見たことないし、もし、他国でこの子が利用されるようなことがあったら恐ろしくてたまらない」
「な、なんだそれ!!?何でそんなにスキルが??!本当かアリス!」
アリスは、どこか迷ったように口を閉ざしたが、意を決したように話し始めた。
「本当だよ」
「アリス……」
「私ね街に来る前は大森林に居たんだよ。そこでねシロと一緒にいたの」
「シロって…そのずいぶん大人しい犬か?」
『グルルルルッ』
犬と言った瞬間、アリスの腕に抱かれ大人しくしていた獣は低い声で威嚇した。それも、凄まじいまでの殺気で。
「ダメなの。シロは狼だから、犬って言うと怒るの」
「あ、頭いいんだな…」
「流石は神獣か?」
「え?!こいつが?!」
「うん。シロには小さくなってもらってるだけなの。シロ、この人たちの前なら喋っていいよ」
『これだから鑑定持ちの奴は嫌なんだ』
「しゃ、喋ってる…本当に神獣なんだな…」
神獣なんて、お伽噺に出てくるような存在だ。この世界にも聖獣はいる。その聖獣よりも高位の存在である神獣は、聖獣から伝わった話に出てくるのみで、存在を確認されたことなんてない。
そんな存在が目の前にいるのだ。驚かない方が無理な話だ。
『おい、人間。アリスになんかしたら天罰下るからな』
「それは…貴方がですか?それともお嬢ちゃんの加護ですか?」
『どっちもだ』
このときは、その言葉の真意を知らなかった。しかし、この意味を知るのは、遠くない未来でだった。
それからアリスは自分のことの経緯を話してくれた。
他の神のせいで死んでしまったこと。神様に魂を救われ転生したこと。そのさい神様に新しい肉体を授かったこと。転生後、しばらく森で生活していたことなど。
とても信じられない話だが、目の前にその存在が居れば、信じる他ない。
「神に与えられた肉体…ですか」
「ちなみにアリスの『神々の祝福』の加護は、アリスを何ものからも守ってくれるの。完全防御つきなの!」
「か、完全防御?」
「うんとね……アリスに悪意もって攻撃しようとしても、バチンッて弾き返されちゃうの!」
オルグは頭を抱えてしまった。俺もそうしたい。完全防御って、そんな加護、Sランク冒険者でも聞いたこともない。
でも、アリスの話を聞いて、俺は確信した。
「ほ、ホントに天使だったんだ…」
「クマさん?」
「アリス!お、俺は、お前を守りたいんだ!きっとそのために出会ったんだ!」
俺はずっと、何かを求めて強さを得てきた。その末にSランク冒険者になったが、求めるものは見つからなかった。
もうどこにもないと思っていた。
 
だが、今日俺はようやく見つけた。
この世界には、稀に種族に関係なく強く惹かれ合う『番』が存在する。本当に稀な現象で、時に人族の王であったり、異種族の平民であったりと、必ずしもどの種族がなどは関係なく、それは突然訪れる。
人々はそれを別名『運命の導き』と呼び、時に祝福され、時に嫌悪される。そんなものだ。
俺は何を求めていたのか。それがようやくわかった。
俺はずっと、彼女が現れるのを待っていたんだ。
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