転生したら愛がいっぱい?!(仮題)

シーチキンたいし

神々との対面




私は何故か意識を取り戻した。


真っ白な空間。見渡す限り真っ白で何もない。でも、どこか神秘的な感じがしていた。

私は自ら命を手放した。あのとき、間違いなく死んだはずだ。なのに、何故か私のからだに傷は一つもない。

「それは貴女が、魂の状態だからですよ」

「……誰?」

誰も居なかったはずの場所に、女の人が現れた。白い服を着た、どこか神聖な雰囲気を放つ女性。

「私は命を司る女神イナン。貴女をここへ呼んだものです」

「女神…様?」

「まずはあなたに謝らせて。本当にごめんなさい」

神様だと言うのに、私みたいな人間に頭を下げたことに狼狽した。

「ま、待ってください!何故、女神様が私なんかに頭を下げるのですか?」

「それは……」

「それはワシが説明しよう」

「創造神様!」

女神様に創造神様と呼ばれた荘厳そうなおじいちゃんがいきなり現れた。

女神様が様をつけて呼ぶくらい、女神様より格上であることが分かる。

「そう畏まることはない」

「は、はい……」

「君がどうしてここに居るのか…だったの。それは、ワシらが君の魂を救い、ここへ召喚したからじゃ」

「救った?」

「こちらの不手際で申し訳ない。全てを説明しよう──」



そうして説明された理由は、到底理解できるものではなかった。

私はもともと、『地球』とは違う世界の人間だったらしい。地球のものからすると、所謂『異世界人』だそうだ。

そんな私が、何故地球にいたかと言うと、私はある一人の神にその魂の純粋さを見初められたらしい。しかし、神が直接人間に手を下すことはない。一部例外を除き、あってはならないことらしい。しかしその神は、神の法をおかしてでも、私を手に入れようとした。

覚えてはいないが、私はそれを拒否したらしい。おそらく、畏れ多いからだと思う。

それに怒ったその神は、私を異界に落とした。それが地球だったらしい。そして神の力の一つ『試練』で私に呪いをかけた。

誰にも認識されることがないという『孤独の試練』だったらしい。

そして、孤独に耐えられず、死したあと、その魂を自分のものにしようとしたらしい。しかし、それを察知した神々がその神を罰し、私を再び、もとの世界に戻そうとしたが、時すでに遅し。私は自ら命を絶った後だった。

なので、輪廻の輪に乗ってしまう前に、その魂を修復して、ここへ呼び戻したそうだ。

「では……私は……その神様のせいでずっと一人きりだったのですか?」

「そうじゃ。……お前さんには悪いことをした。我々がもっと早くに気付いておれば、お前さんを一人死なせずにすんだものを」

「……。」


理由を聞いて、納得も、理解も出来ない。

怒りすら感じる。

でも、目の前の神様達を責める気にはならなかった。

どんな過程があろうと、私を救い出してくれた。久しぶりに会話というものが出来た。それだけでもう、充分な気がしている。

「お前さんは……本当によい魂じゃ」

創造神様はそう言ってくれたが、私はただのお人好しなだけかもしれない。

お話から理由はわかったが、これからどうなるのだろう?わざわざ、神様達が私を呼んだのだ。何か用があったのだろう。お詫びに天国行きとか?

「あの……これから、私はどうなるのですか?」

「うむ、本題なのじゃが……アリスよ、もとの世界で生きてみんか?」

「もとの…世界で?どういうことですか?」

「お前さんの魂を修復したとはいっても上部うわべだけじゃ。まだまだ『試練』の傷はお前さんの魂の内側にまで侵食しておる。それに死ぬ間際、願ったであろう?『次があるならば』と」

「それは……」

本当に次があるとは思ってもいなかった。

本当に、些細な願いだったのに……。

神様はあれやこれやと、私を説得してきた。どうやら、どうしても私に生き直してほしいらしい。私としては願ってもいないことだ。それに神様がこんなに私のために必死になってくれている。これ以上の幸福はないだろう。

私は快く頷いた。

創造神様はさっそく、私の魂を修復するための特別な『器』を用意してくれたらしい。

それはまさしく、『私』だった。

「えっと……私ですか?なんか幼いですけど……」

「うむ、これはお前さんの新しい『身体うつわ』じゃ。幼いのは勘弁してくれ。お前さんの傷付いた魂に合わせて作ったものじゃからな」

「そんな…。ありがとうございます創造神様」

幼くとも、もう一度生まれ直せるのであれば、それだけで嬉しい。

「その『身体うつわ』には、わしらから色々つけておいた。餞別じゃ」

「なにからなにまで……本当に、ありがとうございます」

「なに、わしらなりの償いじゃ。お前さんには、幸せになってもらいたいからの」

「……ッ!はい、今度は…簡単に捨てたりしません!命一杯生きます!」

「アリス、頑張ってね。私達は、世界に直接手を出せないから、下界に行けば手助け出来ないけど…神殿に行けば、声を届けるくらいは出来るから」

「イナン様…はい!本当にありがとうございます!」

あの時、私の声を、願いを、存在を見つけてくれたのは、きっとイナン様なのだろう。

最期に聞いた優しい声が、今でも頭に響いている。私にお母さんが居たならば、こんな人がいいと思えるほど、慈愛に満ちていた。

「では、そろそろ行くかの」

「あの、創造神様……お名前は?」

「ワシか?ワシに名はない。全てを造った神であるからな」

「では……『ゼウス』様とお呼びしてもいいですか?」

「それは……ワシの名か?」

差し出がましいかもしれないが、許されるのであれば、創造神様の名を呼びたかった。

二人とも優しいので、イナン様が母親のようなら、創造神様はおじいちゃんのように思ってしまう。不敬かもしれないが。

「はい。地球の書物で読みました。ゼウス様とはギリシャ神話というものに出てくる主神様で、全知全能の力をもち、人類と神々双方の秩序を守る神様なのだと。優しい創造神様にぴったりかなって……。だめですか?」

「ほう。よいよい!『ゼウス』か。なるほど名とはよいものじゃな。」

「気に入ってくださってよかったです!」

「では、そろそろお前さんを下界に送らねばな。寂しくなるの」

「必ず……神殿にいきます。またお声を聞かせてもらえますか?」

「あぁ、楽しみにまっておる。」

足元から眩い光が溢れ出した。

私の意識は、自然と落ちていった。



──我が子に祝福あれ



二人の優しい声が、耳の奥に聞こえて、私は再び完全に意識を失った。



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