エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

交わらなかった運命 今はまだ

 「そうでしょうね」とノアは緩めていた警戒心を一段階高める。

 向こうも感じているだろう同族嫌悪――――いや同族どころではない。

 ギア・ララド・トップスティンガー

 前世の分身だ。 そして、運命づけられた敵。

 いい話で終わるわけがない。

 ギアは魔術師だ。だが、剣も相当な腕前。

 その戦闘能力は、まさに主人公として相応しい。 何よりも異常に頑丈な肉体に不屈の精神。

 そんな思考を破ってギアが先手を取って動く。

 (―――ッ! 反応が遅れた。まるで敵意がない!)

 反射的に後ろに飛び、間合いを広げるノア。 

 (一撃をやり過ごし、カウンターを……)

 だが、ギアが振るったのは腰に帯びた剣ではなかった。

 それは……固めの紙。

  それは予想外。 その紙が何を意味するのか?  

 (呪札か? だが、しかし……ギアがそんな物を使う話は聞いたことが……)

 「すいません! 実はノア・バッドリッチさんのファンです! サインをください」

 「ん? んんん?」とノアの思考は停止した。

 「昨日、ノバス選手との熱闘を見せていただけました! あっ……できたら握手も!」

 「あっ、はい」と差し出された腕を握り返すしかノアはできなかった。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

「いやぁ 運が良かったです。あれ? 迷子かな? と思って近づいてみるとノアさんでした。 これはチャンスと下心もなかったり……あったり!」

「いえいえ、こちらとしても助けていただいてサインと握手くらいなら……」

「ところでノアさんって、バッドリッチ侯爵のご令嬢ですよね?」

(ん? どうして突然、家の話が?) 

 そう疑問に思ったが、隠す事はないと思い、

「えぇそうです」と肯定した。

「でしたら、進路は魔法学園ですよね? 来年は同級生としてよろしくお願いします」  

「――――ッ そ、そうですね。よろしくお願いします」

「もう暫く、この町に滞在できたらノアさんの試合を見れるのですが、残念ながら滞在は今日までなんです。 次に会う時、いろいろとお話を聞かせてくださいね」

 そう言って、ギアは大げさなくらい手を振りながら去って行った。

 取り残されたノアは――――

「あー そうだな、そうだったよね! 前世の私の分身とは言え、ゲーム上のギアはコミュ強のリア充気質。加えて女好きって性格だ。私と全然性格違うし! 同族嫌悪? 同族どころかリアルで会ったら宇宙人みたいな!」

「もう帰る!」とノアは立ち去る。

 その遥か、後方……1人で歩くギアは、見えない何者かと会話をしていた。

「あぁ、任務は完了だ。この町の暗部、奴隷市場に楔を打ち込んだ。5年以内に崩壊するだろう」

「――――」

「ん? 声が弾んでいるって? あぁ、いい出会いがあったからな」

「――――」

「いやいや、そんなんじゃねぇーよ。うん……愛しているぜ」

「――――」

会話を終わらしたギアは背後を振り向いた。 もう見えないはずのノアの姿を追って……

「これが運命か。やれやれ、面白くなくは……なくなってきたぜ」
      

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