エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

憤怒のノバス

 カポエラ。 生まれたのは5世紀ほどの時代。

 アフリカ大陸からブラジルに贈られた奴隷たちが牙を隠し、踊りと偽り戦う技を磨いた。

 その語源について「森だった場所」や「森に存在したもの」という説もある。

 華麗で多彩な足技が特徴だと思われるが、パンチやチョップといった腕による打撃も存在している。

 だから、手刀クチラーダ。 攻撃にはもちろん、防御でも使われる技。

 ノバスは自身に迫りくる突きを手刀で叩き落す。 だが――――

 (なっ! 抵抗がない。まるで水を切ったかのような感覚!)

 この瞬間、僅かではあるがノバスの重心は前に移動する。

 ノアは、しゃがみ込みと同時にノバスの足首を掴む。

 合気炸裂。

 ノアの行った足を払う動作によってノバスの肉体は空中で一回転。

 そのまま背中から地面に落ちた。

 あまりにも鮮やかな投げにより受け身が遅れ後頭部を強打。

 ゆえに判断力が低下。 慌てて立ち上ろうとするノバスの動きは隙を生んでいた。
 
 だから―――入る!

「さっきの頭突きのお返しだ!」

『裡門頂肘』

 突進、体当たりような勢いで繰り出される肘打ち。

 まるで弾かれたかのように後方へ飛ぶノバス。 そのまま地面に転がり――――

「――――やったのか?」とノアは警戒心を薄める。

だが、やはり……ノバスは立ち上がってくる。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

素早い蹴りの数々。 

それらを弾き、あるいは受けながらも「なるほど」とノアは頷く。

彼の師……カポエラではメストレと言うのか? 

「なぜ、カポエラがエルフに相応しい格闘技と言ったのか? 少しづつわかってきたぜ」

 モデルのように長い手足に軽い体重。 素早くトリッキーともいえるカポエラに合っている。
  
 「加えて――――これ!」

 ノバスは逆立ちのような状態から蹴りを放ってくる。

 かつて格闘漫画の聖書的作品《バイブル》では、カポエラの事を逆立ちになった状態で戦い続ける格闘技と誤って書かれていたが……

 だが事実、逆立ち状態からの蹴り技も存在している。

 「それが強烈! ガードの上からでも効かせに来る!」

 おそらく魔力。 この地下闘技場で魔法が解禁されている。

 しかし、誰も使用しないのは、戦いを終わらせるほどの威力は有する魔法には詠唱が必要不可欠!

 「漆黒の月より深紅へ 見よ! その深みを~」とか

 「金色の光をわが身へ 放て! 断ち切る刃!」とか

 数秒唱える時間があれば、闘技者は接近戦に持ち込み、強打を数発放てる。

 「だが、エルフの精密な魔力コントロール。地面に手を触れた瞬間に魔力を流し、生まれる反発力を利用して蹴りの威力を底上げしている」

 「ご名答! 魔法による肉体強化ドーピングは少なくありませんが、技の理を強化するのに使う人は少ないのによくわかりましたね」

 「俺の師たちに、魔法を武に利用する人はいなかったからね。そこら辺は敏感なのかもな」

 「……ふっふ、興味あるますね。貴方の師たちに」

 「あっ、それ!」

 「?」

 「戦う前に言ったじゃん。俺の師を知っているか、戦いの後に教えるって」

 「あぁ、やっぱりハッタリや駆け引きは苦手です。李書文でしたかね? うっかり知らない事はバラしちゃいました」

 「まぁ良いけどね」

 「そう言ってくれるとありがたい。そろそろ倒しにいくつもりですから最後に話せてよかったです」

 「ふ~ん そう言う事は今まで本気じゃなかったぽい?」

 「はい 私のあだ名アペリードは憤怒。――――本気で行くぞ! ごらぁ!」

 端麗とも言えたノバスの表情は憤怒に染まる。

 いや、表情だけではない。 雰囲気? その立ち姿は、まるで魔人を連想させるほどに禍々しい。

 その姿にノアは――――

「ひぇ~ 帰りたい」と言いながら笑っていた。
 

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