エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

その武術の名前 森に存在した者


 「動揺している。知人にエルフがいるのか?」と問う相手。

 相手はエルフだった。 その姿に師を連想するも――――

 「すぐに穏やかになった。どうやら良い師に恵まれてるようだな」

 「そうだ。私――――いや俺の師はエルフだった。李書文という名前に聞き覚えは?」

 「同族か、知らないが……」

 「知らないが?」

 「もしも、私が負けたら思い出すかもしれない」

 「……あぁ、勝ってから聞けと?」

 「その通りだ」と告げるとエルフは背を向け、上着を脱ぐ。

 傷だらけの肉体。 所々に火傷の後が見える。

 「行くぞ」とエルフは奇妙な構えを見せた。

 「仮面ライダーの変身ポーズ? 昭和版の?」とノア。

 エルフは片手を真っすぐに伸ばし、もう一本の腕は胸の前へ。これも真っすぐ伸ばしている。

 なるほど、ノアの言う通り変身ポーズに見えるかも知れない。

 だが、違う。 エルフは深く膝を曲げると上半身を左右上下に動かす。

 その不規則な動きは、まるでダンスのようで美しさもあった。

 しかし――――

 (この動きは――――ジンガ!)

 それに気づいたノアは弾かれたように後方へ飛ぶ。 その目前、エルフが放った回し蹴りが通過していった。

 そのままエルフの蹴りは止まらない。

 さらに間合いを詰めて二発目の回し蹴り。 

 これも躱すノア。しかし―――三撃目は背中から、真っすぐに伸びてくる蹴り。

 さっきまでの回し蹴りとは違い槍のように伸びてくる蹴りだ。

 両手がガードするも腕ごと破壊されたかと錯覚させられるほどの衝撃だった。
 
 (なんて速さと威力の蹴り。反応が遅れたら秒殺で負けもあり得た)

 下がり間合いを取るノア。すると、

 「どうやら、この技術を知っているようですね」

 「あぁ、その技はカポエラだろ?」

 「その通りです」とエルフ。

 「争いに敗れ、森を燃やされ奴隷に堕ちた我らに戦う術を指南してくださったメストレは、こう言いました。森に存在した者カポエラ。この世界ではエルフに最も相応しい武術だと」

 「なるほど、互いに良い師匠をもったな」

 「左様、ならば――――我が名は憤怒のノバス。自由を勝ち取るため怒れる者」

 「俺の名はノア・バッドリッチ。 運命を掴み取る者」

 「「いざ――――勝負!」」

 前に大きく出るノア。 八極拳の真価は接近戦にある。

 だから、無理にでも間合いを殺さなければならない。 だが――――

 カポエラの不規則な動きジンガに翻弄され、気づけばノバスが真横にいる。

 「しまっ――――」とノアは最後まで言えなかった。

 ノアの両足にノバスの両足が絡みつく。 柔道のカニばさみのような技。

 そのまま倒されると―――― 覆いかぶさってくるようにノバスが接近してくる。

 (寝技勝負? カポエイリストが? 立たないと!)

 しかし、その判断は間違っていた。

 「頭突きカベッサーダ
 
 立ち上がろうとする隙をつかれ、強烈な頭突きと食らいノアが吹っ飛んだ。

 小柄な女性であれ、体が吹っ飛ぶくらい強烈な頭突きに観客たちが盛り上がる。

 だが、ノアは立ち上がる。

 「失敗した。 頭突きの距離なら一撃でも入れれたのに……」

 再び両者の間合いが縮まって行く。

 (接近しても倒したり、近距離の打撃もある。なら――――)

 ノアは戦術を変える。 その動きにノバスも困惑する。

 なぜなら、ノアが普通に歩いて近づいてくるように見えるからだ。

 「だったら、これです――――前蹴りベンサォン」 

 ノバスの放った前蹴りはアッサリと宙を切る。

 ノアの足さばき、それは合気道のもの。いともたやすく間合いを詰め――――突きを繰り出した。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品