エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!
魔剣の返却と書文の思惑
山を下るノアと書文。
時々、付近の住民と挨拶を交わしてすれ違う。
だが、彼らはすぐにギョッとした表情に変わった。
なぜなら、ノアと書文の2人から少しだけ距離を取った兵士たち100人が進んでくる。
住民たちが見えれば、ノアたちが兵士を率いて行進しているように見えるのだ。
精鋭とも言える兵士たちの矜持が限界だが、それでも事が起きないのは、1人で魔剣を調伏せしめた書文への畏怖。
それから代表とも言える百人隊長エルラが無言で堪えているからである。
しかし、その感情は、いつ爆発してもおかしくはない。
それを感じ取ったノアは書文に尋ねる。
「先生、なぜ魔剣を彼らに渡さないのですか?」
「愚問じゃな。渡しても奴らじゃ体を乗っ取られるわ。それに……」
「それに?」
「おそらく、魔を封じるための鞘があったはずじゃが、奴らがそれを持っているように見えるか?」
「いいえ……でも、どうしてでしょうか? 魔剣の奪還が目的なら鞘を持ってくるはずでは?」
「それは、おそらく奪還が目的よりも破壊を優先したのじゃ」
「破壊? 国が保管している貴重な魔剣を?」
「この魔剣と言うのは他世界の英雄の魂を封じて作る物……戦乱の時代ならともかく、平和な世では無用。それどころか、作り方が知れ渡れば、国が傾く危険もあり得る。だから今回のような事件があれば……」
「どさくさに紛れて壊してしまえ……と。それはあまりにも理不尽です」
「そうじゃな。魔剣にも魂が封じられているのならば、それは人だとワシは思う。だから、コイツを渡すとしたら……」
途中で言葉を切り、ニヤリと笑う書文。
「?」と疑問符を浮かべるノアだが、
「そこで話は終わり」と書文はそれ以上は語らなかった。
こうして、屋敷に戻ったノアは、父親から酷く怒られた。
それは良いとしても、辛かったのは怒り心頭のメイドちゃんが3日も口を聞いてくれなかった事だ(それでも甲斐甲斐しくノアの世話をしていたわけだが)。
それから、再三、魔剣の譲渡を要求するエルラだったが、書文は拒否した。
拒否の理由は、
『エルラが本物の百人隊長であるか? 魔剣の譲渡は正式な任務内容か?』
それらの疑問を晴らすため、本国へ正式な証明書の交付を求めたからである。
エルラは反発した。 なんせ、証明書の交付となれば7日以上はバッドリッチ侯爵の領地に滞在しなければならない。
これは正式な任務であると主張し、現状で示せるだけの証拠の数々を提出するも書文は首を縦に振らなかった。
書文の態度は、まるで大貴族のようなでノアのパパはハラハラしながらも様子をみるだけだった。
そして7日後――――
「これで魔剣の所有権と任務の正当性。ついでに私の身分も証明されましたね」
「うむ、持っていくがいい」
今は布ではなく立派な鞘に封じられた魔剣をアッサリと手渡す書文。
「……」
「なんじゃ? その意外そうな顔は?」
「いえ、あんなにも拒んでいたのに、随分と簡単に渡すもので……」
「なぁに、ノアの父親に聞く限り、お前さんはワシの事を知っていて知らぬふりをしているみたいじゃからな。どういう魂胆か探ろうとしていたのじゃ」
「――――ッ!? ……それで、私の企みがわかりましたか?」
「それが全く心当たりがない。……いや、ありすぎでわからぬ」
「――――このッ!」と思ずエルラは剣の柄を握っていた。
しかし、書文は
「すまぬが、コイツばかりは業じゃな」と掌を向けるだけで、エルラの動きを征した。
「前世は、それで毒殺されたのじゃが……
こちらに生れ落ちて200年、文字通りの死闘を繰り返し、日常的に死線を通ってきた。それでも降りれない」
「降りれない……とは?」
「どちらが強いか? ぶつかり合えば、どちらが勝つか? そんな人生を」
「私の先祖も貴方に殺されました」
「なるほど、それはすまない」
「……それ、本心から謝っています?」
「いいや? まさかじゃろ?」
「ふっ……ふふっふ」とエルラは笑った。それから――――
「今一度、武を顧みようと思います。いつか、貴方の首筋に剣を向けれるように……」
「うむ、楽しみにしておく。それから――――」
「?」
「100年ほど前だが、お主と同じような白銀の鎧で向かってきた騎士がいた」
「――――どうでしたか?」
「ワシが覚えている相手じゃ、弱いはずはなかろう」
「ありがとうございます。少しだけ救われました」
そう言うとエルラは魔剣を手に引き払っていった。
だが――――
誰も書文の真の目的に気づかぬままに――――
時々、付近の住民と挨拶を交わしてすれ違う。
だが、彼らはすぐにギョッとした表情に変わった。
なぜなら、ノアと書文の2人から少しだけ距離を取った兵士たち100人が進んでくる。
住民たちが見えれば、ノアたちが兵士を率いて行進しているように見えるのだ。
精鋭とも言える兵士たちの矜持が限界だが、それでも事が起きないのは、1人で魔剣を調伏せしめた書文への畏怖。
それから代表とも言える百人隊長エルラが無言で堪えているからである。
しかし、その感情は、いつ爆発してもおかしくはない。
それを感じ取ったノアは書文に尋ねる。
「先生、なぜ魔剣を彼らに渡さないのですか?」
「愚問じゃな。渡しても奴らじゃ体を乗っ取られるわ。それに……」
「それに?」
「おそらく、魔を封じるための鞘があったはずじゃが、奴らがそれを持っているように見えるか?」
「いいえ……でも、どうしてでしょうか? 魔剣の奪還が目的なら鞘を持ってくるはずでは?」
「それは、おそらく奪還が目的よりも破壊を優先したのじゃ」
「破壊? 国が保管している貴重な魔剣を?」
「この魔剣と言うのは他世界の英雄の魂を封じて作る物……戦乱の時代ならともかく、平和な世では無用。それどころか、作り方が知れ渡れば、国が傾く危険もあり得る。だから今回のような事件があれば……」
「どさくさに紛れて壊してしまえ……と。それはあまりにも理不尽です」
「そうじゃな。魔剣にも魂が封じられているのならば、それは人だとワシは思う。だから、コイツを渡すとしたら……」
途中で言葉を切り、ニヤリと笑う書文。
「?」と疑問符を浮かべるノアだが、
「そこで話は終わり」と書文はそれ以上は語らなかった。
こうして、屋敷に戻ったノアは、父親から酷く怒られた。
それは良いとしても、辛かったのは怒り心頭のメイドちゃんが3日も口を聞いてくれなかった事だ(それでも甲斐甲斐しくノアの世話をしていたわけだが)。
それから、再三、魔剣の譲渡を要求するエルラだったが、書文は拒否した。
拒否の理由は、
『エルラが本物の百人隊長であるか? 魔剣の譲渡は正式な任務内容か?』
それらの疑問を晴らすため、本国へ正式な証明書の交付を求めたからである。
エルラは反発した。 なんせ、証明書の交付となれば7日以上はバッドリッチ侯爵の領地に滞在しなければならない。
これは正式な任務であると主張し、現状で示せるだけの証拠の数々を提出するも書文は首を縦に振らなかった。
書文の態度は、まるで大貴族のようなでノアのパパはハラハラしながらも様子をみるだけだった。
そして7日後――――
「これで魔剣の所有権と任務の正当性。ついでに私の身分も証明されましたね」
「うむ、持っていくがいい」
今は布ではなく立派な鞘に封じられた魔剣をアッサリと手渡す書文。
「……」
「なんじゃ? その意外そうな顔は?」
「いえ、あんなにも拒んでいたのに、随分と簡単に渡すもので……」
「なぁに、ノアの父親に聞く限り、お前さんはワシの事を知っていて知らぬふりをしているみたいじゃからな。どういう魂胆か探ろうとしていたのじゃ」
「――――ッ!? ……それで、私の企みがわかりましたか?」
「それが全く心当たりがない。……いや、ありすぎでわからぬ」
「――――このッ!」と思ずエルラは剣の柄を握っていた。
しかし、書文は
「すまぬが、コイツばかりは業じゃな」と掌を向けるだけで、エルラの動きを征した。
「前世は、それで毒殺されたのじゃが……
こちらに生れ落ちて200年、文字通りの死闘を繰り返し、日常的に死線を通ってきた。それでも降りれない」
「降りれない……とは?」
「どちらが強いか? ぶつかり合えば、どちらが勝つか? そんな人生を」
「私の先祖も貴方に殺されました」
「なるほど、それはすまない」
「……それ、本心から謝っています?」
「いいや? まさかじゃろ?」
「ふっ……ふふっふ」とエルラは笑った。それから――――
「今一度、武を顧みようと思います。いつか、貴方の首筋に剣を向けれるように……」
「うむ、楽しみにしておく。それから――――」
「?」
「100年ほど前だが、お主と同じような白銀の鎧で向かってきた騎士がいた」
「――――どうでしたか?」
「ワシが覚えている相手じゃ、弱いはずはなかろう」
「ありがとうございます。少しだけ救われました」
そう言うとエルラは魔剣を手に引き払っていった。
だが――――
誰も書文の真の目的に気づかぬままに――――
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