廃課金ゲーマーの異世界ライフ〜何処へ行っても課金は追ってくる〜

こう7

新たな配下3



配下同士の殺伐な空気。
お互いに睨みをきかせて俺の両隣を陣取っている。
漫画でこういうシチュエーションはよくあるけど体験してよく分かった。
ドキドキなんかよりも勘弁してくれ、ただそれだけで頭が一杯だ。

『リリー、シルヴィア。旦那が困ってるっすよ。いい加減それくらいで』

「「うるさい!!」」

『わふぅ…。』

宥めようとしたクロコに怒鳴るとは。
スキル『支配者の威圧』発動。
一定レベル以下及び配下に恐怖を与えるスキル。
これをクロコ以外の二人に放つ。

すると、効果はすぐに出るようで大きくビクンと肩を動かしたかと思ったら俺に向かって全力の土下座。

「「も、申し訳ございませんでした。」」

二人共蹲る形に近く全身を震わせて謝罪を述べる。リリーに至っては口調が変わるくらい怯えているようだ。

少しやり過ぎたかも。
でも、言うべき事は言っておこう。

「まず謝るべき相手はクロコだろ。どうして怒られているか分からないまま謝罪されても俺は嬉しくない。」

「「は、はい!!クロコ、申し訳ありませんでした。」」

『いや、あっしは…まぁへい。』

頭を地面にめり込ませながら全力で謝る二人にクロコはしどろもどろ。
女の子相手にこれは酷く見えるけど、今後を考えればこうでもしないと自制を利かしてくれないかもしれない。

「二人共反省した?」

「はい(うん)。」

「仲間同士の争いは止めてくれ。こんな訳の分からない世界でお前達は唯一の俺の大事な仲間達だ。分かるか?」

「「大事な仲間…。」」

「そう家族みたいなもんだ。少々の言い争いは目を瞑るけど限度を弁えろ。いいな?」

「「家族………。」」

返事が無い、ただの屍のようだ。
じゃなくて、ボーっとしてこちらを何故かうるうると目を潤ませ見つめている。

「いいな、返事は?」

「「はい!!」」

ようやく元気な返事が返ってきた。
怒鳴ったせいでどんよりな空気になるかと思ったら怒られた二人はどこか嬉しそう。

ちゃんと反省しているのだろうか?
でも、喧嘩は止めたからいいか街へ戻ろう。
森の茂みから道へ抜け出て帰る。

街の入口まで来ればまだ門番の仕事をしているモルドさんが居る。
徐々に近付けばモルドさんも気付いたようだ。

「モルドさん、お疲れ様です。」

「おー坊主おかえり。それよりそちらの美人さんはどなただい?」

真っ先にシルヴィアが目に入ったようで鼻の下をだらしなく伸ばしている。

「この人はシルヴィアでようやく合流出来た俺の仲間です。こっちの子はリリーで同じく仲間です。」

「シルヴィアさんとリリーちゃんね。じゃあ、身分証の確認と犯罪歴の有無を確認させてもらうね。これが終わったらシルヴィアさん良かったら今晩ご一緒にお食」

「さっさとやりなさい。」

「はい…。」

モルドさんのあわよくばがシルヴィアの冷徹な眼差しと拒絶を感じる口調に為す術なく撃沈。
明らかにしょんぼりしながら確認をしていく。

「はい…確認完了しました。どうぞお入り下さい…。」

いきなりデートに誘うから軽い男性と思えば随分繊細なご様子。
去り際にあまりにも不憫に思ったクロコが肩をポンと叩いて行った。

「ふぐぅ…小犬にまで同情されたぁ…。」

クロコの慰めがトドメとなって地に両手を付けて泣いていました。

「主君、もうすぐ夜になります。早く宿屋に向かいましょう。」

一応、ナンパされた被害者だけどモルドさんを泣かせた元凶は全く気にしていない。

モルドさんに幸あれ。

悲しい出来事から宿屋へ到着。
ここに来るまで二人は目立った。いきなりモルドさんみたいなナンパは無かったけれど、誰もが通り過ぎ去るまで視線を止めなかった。

「マーロさんただいま帰りました!」

「あら、お帰りよ。そちらのお嬢ちゃん達が追加のお仲間さんね。部屋は二部屋で良かったんだったかい?」

「は「駄目(いや)です。」い?」

俺の返事に被さるようにシルヴィア達が食い込む。
どうしてと困惑する間にシルヴィア達が先を進める。

「マーロ殿、3人で寝れる部屋はございますか?」

「3人部屋は無いけど4人部屋ならあるよ。」

「では、そちらでお願い致します。リリーもそれで構わないな。」

「うん、仕方ないけどそれが最善。」

勝手に二人で納得させて行かないで。

「ちょ、ちょっと待った。男女が同じ部屋なんてお母さん許しませんよ。」

「何を言いますか?主君はお母さんではなく主君です。それに私は守護人として護るべき御方の側に控えるのが必然です。」

「主は私達を家族と言った。家族なら問題ない。一緒に寝よ。」

「いや、いやいや駄目だって。君らは女の子なんだから男の俺と寝るなんて…ね?」

理想とも呼べるキャラ達と同じ部屋で寝るなんて理性が保たないよ。
ヘタレをなめるんじゃない。
必死に断るも、みるみるうちに二人の表情が暗く曇っていく。目には涙も浮かべている。

「主ぃ…。」「主君…。」

「うぐっ!」

そんな目で訴えられると辛い。
一連の流れを見ていたマーロさんの視線も厳しくなっている。

うぐぐぐ……。





「はい、じゃあこれが4人部屋の鍵ね。場所は2階の階段近くの左側の部屋。仲良くするんだよ。」

「「はい(うん)!!」」

「はい…。」

負けました。


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