廃課金ゲーマーの異世界ライフ〜何処へ行っても課金は追ってくる〜
感謝よりお礼
どうやらこの先で人がモンスターに襲われているらしい。
これは、異世界あるある上位に入る助けて恩を着せるあれじゃないか。
キャラ性能任せで急げばもう姿が見えてきた。
「影から見た情報ですと人間側は戦闘員4名に非戦闘員が2名っすね。モンスター側はさっきまであっしらが相手したサソリもどきっす。旦那なら余裕過ぎですね、あっしが片付けやしょうか?」
「うーん、念の為に俺が対処するよ。いざという時はフォローよろしく。」
「………へい。」
ちょっと不満そう。
そんなに俺にさせたくないの?
サラッと数分ほどで到着。
戦っている人とサソリもどきの間に割り行ったのにすぐには誰も気付かない。
すなわちこの速さには反応出来ない者達ばかりってことだ。
だったら、いざ助けた後に背後を狙われても問題無い。
戦闘員の方々はようやく動体視力がその場に留まった俺に追い付いたようだ。
「なっ!?」
一番盾となるようにサソリもどきの前で立ち塞がっていたゴリラみたいなオジサンが目を大きく開く。
俺はすかさず動く。
「大変そうだから手伝うね。」
たった一言では多分伝わらない。
案の定、理解が追い付かないのか口をパクパクさせてナしか言わない。
なので失礼してちゃちゃっと済ませます。
お手軽スキル自然操作でまとめて切り刻もう。
ワームと違って切ってもあまり臭くないから安心する。
サソリもどきおおよそ20匹ちょっと、自然操作で生み出した風の刃が通過したらビタっと停止。
もうサソリもどきは死んでいる。
終わりを告げるように鋏尻尾胴体とバラバラに切り崩れていった。その際、自分達で倒した分だけクロコの影に収納するのを忘れない。
助けたオジサン達はまだ呆けて口を大きく開いている。
オジサン達からしたらいきなり目の前に見知らぬ男が現れたと思ったら、次にはサソリもどきがバラバラに崩れたんだから無理もない。
でも、そろそろ現実に戻って来てほしい。ゴリラ風味のオジサンの前で手を振る。
ポーッとしてた顔がようやくハッと我に返ってくれた。
「ぼ、坊主が助けてくれたのか?」
坊主か。
中身が20代でも見た目年齢が少年寄りだから仕方がないか。
「うん、なんかオジサン達大変そうだったから手伝ったけど余計だった?」
「お…おじさん。お、俺これでも25歳なんだけど…。」
「…………ごめん。」
やばいおじ…お兄さんが膝を抱えて落ち込み始めた。
極太の眉毛に彫りの深い顔で角刈り極めつけに強面、そんな見た目に決めつけでオジサン認定した俺の落ち度だ。
いよいよ地面を弄って本格的に落ち込み始めたお兄さんにオロオロしてしまう。
そんな困った状況に次々と現実に帰って来たお兄さんのお仲間さん達が近付いて来た。
一人は茶髪なちょっとチャラそうな真のお兄さんで続いてローブに長帽子っていう魔女スタイルの金髪お姉さん。
その後ろでは、黒バンダナが目を若干覆った目つき鋭めのお兄さんも控えている。
「おい、ジンいつまでも落ち込んでんだ。命の恩人が困ってるぞ。」
「そうよ。怖がらないだけその子はマシでしょう。いつもだったらこの子ぐらいの子供は皆絶叫と号泣で悲惨なんだから。」
お仲間さん達はいじける強面お兄さんに慰めれているか不明な言葉を投げ掛ける。
一番後ろのバンダナお兄さんはただ黙って見守っている、無口系かな。
「そ、そうだな。泣かないだけ良い事だよな。坊主悪かったな改めて礼を言わせてくれ。危ないところを助けてくれてありがとう。」
「いえいえ、無事ならそれで万事解決ですよ。」
立ち直りは思いの外早いらしい。
すくっと立ち上がって感謝の言葉と共に手を差し伸べてくる。
断る理由も無いので素直に握手しよう。
お互いの警戒心がひとまず鳴りを潜めたところで無口お兄さんの後ろからまた新たに誰かがやって来た。
小太りの目尻が垂れ下がったオジサン(仮)。この人まで実は20代って事はないよね。
「ジン殿歓談中失礼致します。私にも恩人へ礼を言わさせて頂けますか?」
「おぉ、コロックの旦那。この坊主が助けてくれた坊主だ。」
「坊主って…これでも成人してるんだけど…(中身は)。」
「「「えっ!?」」」
皆がまた驚いている。
サソリもどきを倒した時と同じくらいに。自分が使用している時はそこまで子供って感じなかったけど客観的には完全なガキンチョなのか。
平然を取り戻す為かコロックと呼ばれるおじさんはコホンと咳を吐く。
「コホン…ひとまず恩人のご年齢は置いときまして改めて私からも感謝を述べさせて頂きたい。私はランパード商会の会長を務めておりますコロック・ランパードと申します。私共を助けて下さりありがとうございます。」
深々と頭を下げるコロックさん。
そこに会長という身分など関係なく真摯な対応が見受けられる。この人がまとめる商会は良さそうな気がする。
「あ、えーと俺の名前はユウって言います。この子はクロコ。俺らは偶々通りがかりに助けただけにすぎません。それよりも皆さんが無事で良かったです。」
クロコと仲良く会釈する。
すると、強面お兄さん達もそれぞれ名前と感謝を告げていく。
強面お兄さんはジン。
チャラいお兄さんはアレク。
魔女なお姉さんはエミル。
無口お兄さんはセリック。
この人達はコロックさんの商会の専属護衛との事。遠出する時には必ずこのメンバーで出発するらしい。
最初警戒したのが馬鹿みたいに人の良さそうな人達だ。
もっと急いで助けにくれば良かった。少し罪悪感が心の窓からこんにちわしているよ。
皆さんに申し訳ない気持ちが蝕むのを他所にコロックさんがにこやかに話し掛けてくる。
「ユウ殿、助けて頂いたお礼をしたいのですが今手持ちのお金は少ししかございません。宜しければこれから私共とご一緒して頂き我が商会のあるシュトールの街まで来て貰えませんか?そこでならしっかりとした謝礼金をお渡し出来ます。ここから2日ほどの距離ですのであまりお手間を煩わせませんので、どうでしょうか?」
うん、そこまでは申し訳無い。いよいよ罪悪感が限界突破する。
クロコが念話で『流石旦那です、根こそぎ頂きやしょう!』って言っているけど、それは無視。というか、クロコって念話なんて出来るんだ。
とりあえずこの世界の情報だけ教えて貰おう。
それ以外貰うと罪悪感で心が折れそう。
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