廃課金ゲーマーの異世界ライフ〜何処へ行っても課金は追ってくる〜

こう7

理不尽だらけ




ログアウトが出来ない。

ただでさえ置かれた状況に焦る気持ちが更に加速していく。
俺は少しでも落ち着かせる為に深く呼吸をする。呼吸と時間の経過のお陰か多少なりとも冷静を取り戻せた気がする。

改めてもう一度メニュー欄からログアウトの表記を探す。アイテムボックスという昔馴染から謎の解放という新システムまである。

けれど、やはりと言うべきかログアウトは何処にも見当たらない。

これは巷で聞く異世界転移って奴だろうか?
実際に体験すると興奮よりも動揺が圧勝する。
まだ現実ではないって思いたいけど肌で感じる気温がセーフティアのゲーム世界では味わえないリアルな感覚。
けれど強制アップデートによる不具合でログアウト出来ない可能性を捨てたくない。

もう一度大きく深呼吸をする。

ひとまず人里を探そう。
あまりにも情報が足らなさすぎる。

冷静さを取り戻してきた俺はメニュー欄の中身を一つずつちゃんと確認する。
アイテムボックスの中身はちゃんと天空城に居た時と変わらない。
建築材や装備品は残っている。
少し異世界転移から不具合寄りになってくれた。
まずは自分のステータスをチェックする。
名前はユウでキャラ名。
種族は自由人とガチャで手に入れたレア種族。
この種族であれば種族によって取得出来ないスキルや武器防具を扱える。その代わり大抵は器用貧乏になりやすい。

そういえば俺の姿ってゲームキャラだよね。
念の為にメニューからアイテムボックスを開いて手鏡を取り出す。

恐る恐る手鏡で自分を写し出す。
二十代の朝倉 夕ではなくゲームキャラのユウでした。厨二感丸出しの白髪に金色の瞳。
始めた当初は格好いいと思っていました。
若気の至りにちょっと悶絶しつつ再度ステータスチェック。
最後まで確認していくつか変化を発見した。
一つ目はレベルの上限が150になっていた。カンストが100からの変化。やっぱりアップデート&不具合だね良かった良かった。




なんてそう思っていた時期もありました。
そんな想いもステータスにある新たな要素で吹き飛ばされました。

新要素は称号。

HPやらMPやら項目がある中最後に追加されていた。
称号には『限界を超えし者』『主の器』そして最後に『異世界からの来訪者』。

せっかくアップデート不具合説が濃厚になっていたのにあんまりだ。
一気に異世界転移寄りへ完全に振り切ってしまった。
地球ではない何処かセーフティアかどうかも不明。
まだ夢って可能性を捨てきれない思いもあるけど今は置いておこう。
ステータスはとりあえず確認終了。

次にメニューでずっと視界でチラついていた解放について。
どんな状況下でもゲーマーはゲーマー、ずっと気になっていた。
解放のウィンドウに吹き出しのように初回一体無料解放って書かれている。

とりあえず解放を開いて見れば2つの項目があった、『配下』と『その他』だ。
配下の方を表示すると今まで俺が細かく細かく手掛けてきた配下一人一人の全体図がずらりと並んでいた。
一体一体の真ん中辺りに『お好きな配下一体解放』と薄っすら表記されている。

次にその他を見てみる。
一番最初に載っているのが俺が長い年月を費やして造っていた天空城。
その後は拠点などに設置出来るポータルという転移装置やモンスターと戦わなくても経験値を取得出来る成長おにぎりといったサポートアイテムにスキルまで載っている。
それとセーフティアの課金要素である建築材。
更にはセーフティアでは無かった地球の食材や調味料も新たに追加されていた。

以上が『その他』にある内容。
しかし、『配下』と違って初回無料って訳ではなくそれぞれの下に値段が書かれている。
値段がありえない。
自分で造っていた天空城がなんと10億zってどんだけ俺から搾取したいんだよ。
他のサポートアイテムや建築材もゲーム時代に比べたら結構な値上がり。
食材に関してもボッタクリの域だ。

ふさげるなって感情をどうにか飲み込んでそこそこに貯まっていたはずの所持金を確認する。
確か最後に見た時は1300万zはあったはず。天空城を再購入するにはまだ足りないけど多少負担を軽く…出来…え?

もしかしてアイテムボックスに紛れ込んでいるかもしれない。
アイテムボックス欄にある物を上から下まで何度も往復して目を通す。
もう一度目を通す。
更に目を通す。


無い。

お金が無い。
何処を探しても無い。

今だけ両膝の力が抜けてへたれこんだのは許して欲しい。
しばらく立ち直れそうにないです。


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